セブン&アイ、米コンビニを2兆円買収、市場の評価は?

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
今回は、セブン&アイ・ホールディングスのM&Aについてです。
なんかドラマがありそうな買収ですね。

 

■セブン&アイ社、アメリカで2兆円規模の買収

コロナ禍で企業活動が縮小している中、セブン&アイ・ホールディングスの積極的な事業戦略展開が話題です。2兆円超の買収額は直近では世界最大規模です。
↓↓↓

<セブン&アイ、米コンビニを2.2兆円で買収>
(2020年8月3日付 日本経済新聞)
『セブン&アイ・ホールディングスは3日、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」を買収すると発表した。買収額は210億ドル(約2兆2000億円)。
今春の独占交渉では価格面で折り合わず断念したが、業績不振に陥ったマラソン側が実施した入札に改めて応じ競り勝った。』

セブン&アイ社は、北米市場でのコンビニエンスストア事業を『グループ全体の重要な成長ドライバー』と位置付けています。今回の買収はその一環ですね。

現在、アメリカのセブンイレブンは全米に約9,000店を展開していて、店舗数で全米1位です。今回買収する「スピードウェイ」は店舗数で3位の約4,000店。単純合計で約13,000店舗となり、2位の「アリメンテーション・カウチタード」(カナダ、約5,900店舗)を大きく引き離すことになります。

セブン&アイ社は、

『本件取引によって、7-Eleven,Inc.は米国の人口の多い50の都心部のうち47の地域に店舗網を保有し、成長ポテンシャルの大きい北米コンビニエンスストア市場において明確に業界リーダーとしての地位を確立することとなります。』(2020年8月3日付 ニュースリリースより)

としています。

 

■念願の買収成功にも関わらず市場の評価は・・・

今回のM&Aは復活案件です。2020年に入った頃に「両社が交渉に入った」という報道がありましたが、その後、どうやら買収価格で折り合わずセブン&アイ社が断念していました。

これが第一報の記事→
<セブン&アイ、米コンビニ買収へ独占交渉 1万3千店規模へ>
(2020年2月20日付 日本経済新聞)

これが破談の記事→
<セブン&アイ買収断念 店舗拡大戦略、高値が阻む>
(2020年3月6日付 日本経済新聞)

それが、新型コロナウイルスの拡大や原油安などの環境変化もあったのだろうと思いますが、最終的に当初提示額の220億ドルから210億ドルと、10億ドルも下がった額で合意できました。
まさに「念願の買収合意」だったのではないかと思います。

しかし、市場の評価はいまひとつです。
ニュースが流れた昨日(8月3日)のセブン&アイ社の株価は、前日比-4.8%も下落。年初来安値を更新しました。日経平均が2.2%も上昇する基調の日でしたので非常に目立ちましたね。

全米トップを実現する大型買収なのに、なぜ評価されないのでしょう?

 

■市場の評価は「割高」?

今回の買収案件を活かしてセブン&アイ社が描いている今後の事業戦略を市場は懐疑的に見ている、要するに、「期待するリターンに見合わない高い買い物だ」と見ている向きが多いということだと思います。

周知のとおり、日本国内のコンビニ市場がすでに飽和状態です。
これまでの出店拡大戦略では今後の成長は見込めません。
だからコンビニチェーンなどの流通大手各社は、EC(デジタル商取引)分野への対応とか、ファミリーマートのような伊藤忠商事による垂直統合とか様々な手を打ち始めています。

そんな中で、セブン&アイ社は、米国大手のライバルの買収という従来型のマーケット規模を追求する戦略に多額の投資をしました。この戦略は、自社の独自資源やノウハウを買収先につぎ込んで効率的に規模を拡大していくという、これまで大手小売事業者がM&Aでやってきたことの延長線上にあります。

既存の事業モデルはすでに終焉を迎えていて、もはや規模を追求する時代ではないと言われている小売事業界で、「日本が飽和したからアメリカ?」という感じです。

しかも、買収先の「スピードウェイ」は、「コンビニ併設型のガソリンスタンドチェーン」です。
どちらかというとガソリンスタンドが「主」でコンビニが「従」です。
これまた周知のとおり、ハイブリッド車による燃費向上やEV(電気自動車)の普及にともなって、すでにガソリンスタンドの店舗網はレガシー(過去の遺物)化すると見られています。

テスラがトヨタの時価総額を超える時代です。そんな時代に、ガソリンスタンドとコンビニ事業のチェーンで全米店舗網トップになるM&Aです、と言われても新味に乏しい、だから評価されていないのだろうと思います。

しかもその買収額が、安くなったと言っても210億ドル。
セブン&アイ社のリリースでは、節税効果や店舗の統廃合や資産の売却などで実質120億ドルくらいの買収だとして割安感を伝えていますが・・・。

さて、市場の評価とセブン&アイの目論見、どちらが正しいのでしょうね。

 

■セブン&アイという気骨ある組織に期待

M&A場合の企業価格の算定の目安のひとつに「利益年倍法」というのがあります。
例えば、「買収価格は、企業が上げている年間収益の10年分程度」といったものです。
「買収先企業の利益で投資額を何年で回収できるか」という考え方ですね。

セブン&アイ社のリリースによると、スピードウェイの2019年のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は9.6億ドル。単純計算で、投資額210億ドルとすると22年、実質の投資額だとしている120億ドルだとしても12年くらいです。「10年分」というひとつの目安に照らしてもちょっと高い印象ですね。

それでもセブン&アイ社は投資しました。世の中がデジタル化していることもガソリンスタンドが時代遅れであることも当然わかっているに決まっています。その上での投資です。

つまりこれは、「セブンイレブンならスピードウェイの拠点網などの経営資源や顧客資産を活かして、新たなリアル小売りビジネスを創造することができる」という自信の表れではないかと思うのです。

「従来型」か「新時代対応」か、という二択ではなく、
「レガシーを活かして」+「新しい社会にチャレンジする」という感じでしょうか。
例えば、ECサイトで注文したものを受け取る拠点として店舗を活用する、とかですね。

なにより、私がこの記事を見て感じたのは「セブンという組織はすごいな」ということでした。
セブン&アイ・ホールディングスは、鈴木敏文さんというカリスマ的リーダーが引っ張ってきた会社ではありますが、鈴木会長はすでにいません。今は「巨大なサラリーマン組織」です。
ソフトバンクの孫さんとか楽天の三木谷さんのような意思決定の速いカリスマオーナーがいるような会社ではありません。
社内で議論や試算を積み上げた上での意思決定だと思います。
おそらく異論もあったことでしょう。だから一度見送りにもなりました。
それでも諦めずに成約までこぎつけた。これはすごいことだと思います。
気骨のある人たちがいる組織なのだろうと感じ入りました。

そんな気骨のある日本の組織がアメリカで展開するであろう「新しいコンビニ事業」に、実は私はひそかに期待しているのです。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年8月4日 火曜日 16:33 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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