マンションの修繕が計画通りに進まない理由とは?

今回はマンションで暮らす上での注意点についてです。

 

■マンションの修繕が計画通りに進まない?

今や日本全国に当たり前にある分譲マンションですが、日本でのその歴史はまだ50年ほどしかありません。かなり老朽化してきているマンションも増えている中、様々な問題が出てきているようです。
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<マンション修繕 目立つ誤算  積立金増額、早めに対策を>
(2018年5月19日付 日本経済新聞)
『マンションで暮らす人が避けて通れないのが修繕工事だ。屋上や外壁などを直す工事は十数年ごとに必要となり大きな出費となる。ここ数年は工事費の相場高騰などから、住民が月々払う修繕積立金だけでは費用を賄えないケースが増えてきた。修繕の計画や積立金の状況を把握し、早めに対策を考える必要がある。』

日本の分譲マンションのストックは633.5万戸(平成28年末時点)です。その内築30年を超えるもの(昭和62年以前に建築)は172.7万戸。およそ3割近くも存在します。
マンションは構造躯体の耐用年数が長く、適切なタイミングで丁寧に修繕を重ねていけば50年を超えても住居として十分機能すると言われています。しかし、その計画的な修繕がなかなか行われていないという記事です。これはマンションで暮らすすべての人たちが注意すべき点と言ってもいいですね。

 

■一番の要因は「修繕積立金の不足」

記事では、マンションの修繕計画が狂う原因として、工事コストの上昇やマンションの駐車場利用者の減少などを上げています。
たしかに今、建設業界は深刻な人手不足ですし、高性能化に伴い建設資材も上昇しています。建設コストは5年前より3割ほどアップしているというデータもあります。
また、多くの分譲マンションでは駐車場利用料の一部が積み立てられて、立体駐車場の維持・修繕費などに充てられています。最近では住民のクルマ離れから駐車場を借りる人が減少して、マンションの駐車場に空きが目立つようになっているようです。

その中でも、マンションの修繕計画が狂う一番の要因は、「修繕積立金の不足」です。
記事では「修繕積立金だけでは修繕の費用を賄えず、融資に頼る例が多くなっている」としています。
住宅金融支援機構によると、マンション管理組合への大規模修繕費用の融資額は年々増加していて、2013年度には全国で60億円程度だったものが、2016年には100億円を超えました。

また、東京カンテイによると、首都圏のマンションで分譲時に設定する修繕積立金の平均は1戸あたり月6,067円(2017年時点)。これは国土交通省が適正な修繕積立金の目安として設定している額の半分です。
修繕積立金の金額設定に問題があるケースは多く見受けられます。分譲当初は金額を低めに設定しておいて、年々引き上げていくケースがしばしばあります。新築分譲の時に、高い修繕積立金を提示すると購入検討者から嫌がられてしまうからですね。

しかし、大規模修繕の段になって積立金が足りなくなったら、融資にせよ一時金にせよ結局居住者全員が負担することには変わりはないわけです。それであれば早めに必要資金を算出して、積立金を適正な額にしておくべきでしょう。

・・・というのが正論なのですが、ただ、これがなかなかうまくまとまらないようなのです。

 

■命に関わる耐震工事すら進まない

共用部分の大規模修繕は、原則、区分所有者および議決権各々の3/4以上の賛成が必要です。つまり、1/4以上の人が反対したら修繕できないわけですね。

例えば「耐震補強工事」。
マンションが大地震で倒壊する、ということは現実的に起きることです。命に関わることですから耐震補強工事はなにより優先されると考えるのが一般的だと思います。

国土交通省の「マンション統計調査」(平成25年)によると、マンションに居住する53%が「耐震性に不安がある」と答えています。

耐震基準が厳格化された1981年以前に建てられた建物のことを「旧耐震」の建物といいますが、現在およそ104万戸のマンションが旧耐震です。
その旧耐震のマンションの「耐震診断実施の有無、およびその結果」を見ると驚きます。

・「耐震診断をしていない」が58.0%。←これも驚きですが、もっと驚くのが、
・「耐震診断をして、耐震性がないと判断された」が全体の10.8%あるのですが、そのうち、耐震補強工事を実施したのは33%です。つまり、耐震性がないと判断されたマンションの2/3は耐震工事を実施していません。
命に関わる耐震工事ですら住民の間で合意形成ができないのです。
おそらく、修繕積立金が不足しているか、不足分の一時金を払いたくないか、もしくは払いたくでもお金がない、という住民が多いのでしょう。

これは、マンション住民が高齢化していることも関係していると思います。
「マンション統計調査」によると分譲マンション居住者の年齢は「60歳代以上」が50.1%です。ましてや旧耐震基準のマンションは築年数37年以上ですから、恐らく住んでいる方のほとんどは60歳以上でしょう。一般的に高齢者は収入が潤沢にはありません。その中で、次第に老朽化していくマンションの修繕費用を捻出し続けることは容易なことではないのでしょう。

これから高齢化がますます進む中、修繕や建て替えが進まず老朽化していくマンションは間違いなく増えていきます。社会問題となるかもしれませんね。

 

■マンションは「共同生活」。その前提とは?

マンションと一戸建の違いは、マンションは「共同生活である」ということです。
共同生活ですから、共用部分、例えば、エントランス、廊下、外壁、エレベーター、上下水配管などの建物躯体全体や立体駐車場などの維持管理や修繕のコストはマンションの入居者みんなで負担しなければなりません。それが毎月支払っている「管理費・共益費」とか「修繕積立金」です。

この維持・管理費や修繕積立金などの支払いは住宅ローンの返済が終わってもそこに住み続ける限り続きます。通常は築年数が経過して共用部分の老朽化が進むにつれて維持管理費や修繕費はかさんでいきますので、こうした費用負担は上昇していくことを想定しておいた方がいいと言われています。

マンションで計画通りに適切な修繕ができないのは修繕費用が足りないからです。修繕費が足りなければ一時金として皆で負担することになりますが、中には払えない人もいます。

マンション統計調査によると、37%の管理組合が「管理費・修繕積立金などの滞納がある」と答えています。この先、住民が高齢化していくともっと増えるかもしれません。
さらにその先に相続が起きた時に、相続した人がそのマンションに住まないと空き家になります。空き家になっても相続人が管理費・修繕積立金や修繕一時金を払ってくれればいいのですが・・・、恐らく不払いのケースは増えるでしょうね。

新しい人が入ってこないとダメになっていくのは一戸建も一緒です。
40~50年前につくられた郊外のニュータウンがゴーストタウン化しつつあるという話はよく耳にします。ニュータウンでは地域住民が一緒に年齢を重ねます。そのうちに相続が起きます。相続人がその家に住まなくて、売りに出しても買い手がつかないとなると空き家になります。そうしていく内に地域コミュニティが維持できなくなります。

マンションでも一戸建ての街でもコミュニティが維持されるには、新しい人が入ってきた方がいいのです。今、古いマンションを購入してリノベーションして住む若い人が増えています。マンションを売りに出した時にちゃんと売れるマンションであるかどうかは大事なことです。まずは立地でしょうね。利便性の高い立地にあるマンションなら新しい購入者が現われる可能性は高いでしょう。
しかし、売れないマンションは入居者が高齢化していってしまい、維持管理に問題を抱えることになります。

若い世帯の家族は維持管理が出来ていないマンションや、ゴーストタウン化した郊外の街に住むことはありません。戸建なら街が、マンションなら共用部や設備がしっかり管理され、維持されていることが大前提なのです。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

2018年5月22日 火曜日 15:20 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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