住宅不動産業界 トップインタビュー〜住宅不動産業における優れた経営品質を追う〜

変革の時代を迎える住宅不動産産業界において、自社の持続的な成長を実現しながら地域社会に貢献する企業となるために、経営者はどのように考えどのような活動方針を持って経営に取り組むべきか。

住宅・不動産業界 ビジョナリー経営

沖縄の木造住宅建築の成長を知識と覚悟を持ってリードする 沖縄県・アースティック那覇

新設着工数において木造シェアがわずか2%の時代に沖縄に進出され、木造シェア20%へと変化した沖縄県の新設住宅着工市場でトップビルダーとして注目される株式会社アースティック那覇。創業以来11年、沖縄の木造市場の量的拡大だけではなく質の向上に大きな貢献をされた石松社長。沖縄は日本で一番木造建築に適した場所だとおっしゃる石松様を訪ねて沖縄に向かいました。

株式会社アースティック那覇
代表取締役社長 石松 完治 様

沖縄で「木造建築」を扱うということ

一言で「木」って言ってもものすごい種類があって、しかもそれぞれ一本一本特長もある。もちろん僕も100%じゃないけど、でも建築に関わることに関しては、他の人よりある程度は知っているつもりです。そして、ただ知っているだけじゃなく、木の知識を実際の現場に活かすという責務が僕にはあると自覚してます。

街を見て実感される通り、もともとRCが主流の建築市場なので現在でも7割8割はRCです。当然、木造の事を知らないビルダー、消費者が多くなるわけですが、そういうのは歴史的にもしょうがない。でも、せっかく建てるなら建て主さんにも木のことをちゃんと分かってもらった上で(木造を)選んでもらいたいと思ってます。だから、「木造建築にはこういうデメリットがあります」、「メリットはこうです」、「建ててから、住み始めてからはどんな点にどう気をつけなければいけないのか」、「建築会社を選ぶならこういう視点で選ぶべき」など、僕は全部言います。その上で「ご期待や質問されたことに答えられなかったら、選択から外してください」という様なことも平気で言います。僕は確かに会社を経営してますけれども、継続できるくらいに頂ければそれでいいと思ってますから。

沖縄で会社を創った目的はもちろん事業として成功するためでした。でも、実際に沖縄で仕事を始めてみると木造建築市場の状況は相当ひどいなということに直面しました。事業を始めて1年目には「沖縄の建て主さんに木のことをちゃんと分かってもらった上で選んでもらいたい」と言い続けることで沖縄の木造建築市場を変える、これは自分の使命じゃないかと気づいたんです。今は「この使命を果たしたい」そういう気持ちが大きいです。

ここにきて沖縄の木造建築市場が伸びて来てるということが言われています。内地からのフランチャイズなどいろんな会社が沖縄に来てますし、市場が伸びているのはそういう人たちの物件であることも事実です。確かに全体としては伸びているわけですが、その実態は「数だけこなしてる」会社も混じりながら伸びているんです。だからプロの目から見て「そういうのはやめてくれ」、「建てりゃいいってもんじゃないよ」、「住めればいいってもんじゃないよ」という程度の住宅もある。少なくとも私から見ればそういう状況なんです。本土で建築をやっている職人さんなら木のことや木造建築のことをある程度は分かるでしょうけど、こっちで事業するときは本土の職人ではなく沖縄の人を使ってやることになる。しかも沖縄の風土や環境を何もわからないまま本土で設計したものをそのまま持ち込む。これでは沖縄の気候風土に適した木造住宅を普及させるのは難しいと思います。
だからうちでは「沖縄で木造建築をする上で木とは何か」、「住まいとは何か」というレベルの話から始めて、お客さんに良い所も悪い所も全部分ってもらった上でご契約頂きますし、私も自分の目が届く範囲で現場に行きます。私は60になりましたけれど未だに棟上げでは“上”にあがりますよ。それぐらいの事をしてでもこの地で職人を育てる。それに対して僕はあらゆるところで責任を取りたい、取るのが当たり前と思っています。

日本で一番木造建築に最適な場所は沖縄。そう思ってます

僕は「日本で一番木造建築に適した場所は間違いなく沖縄」だって思っているんですよ。ここ以外にはない。だって平均気温が23度とちょっとあるんですよ、当たり前だけど凍結しないんです。また蒸暑地というけど、そもそも木造には調湿性能も備わっていて湿気に強いわけです。あるいは白アリのことで言えば沖縄は白アリのメッカなわけです。なのに木がいいというのは、白アリの習性からからすると一見矛盾するようなことを言っていると思われますが樹種を考え沖縄の風土に適した防蟻をすれば一番木造が適してる。例えば桐は虫に強い、桧は長持ちする、杉は白アリに強いとか、樹にはそれぞれ樹種による成分の特徴があるわけです。そういったこともきちんと踏まえて「適している」って思うんです。

そもそもこれまでは極端に言って、沖縄は「木造の設計がない」場所だったわけです。そういう意味では私がやっている木造塾の話もそうだけど、まだやることがいっぱいあるんです。僕はこの業界に「現場」から入って建築ではコンクリート造も鉄骨造も全部経験してきました。その経験を通して言えることは、人の住まいに一番合うのが木なんです。造り方と施工の仕方、間取りもそうだろうし、納まり、色んな所を間違いなければこんないいものはない。造る時の施工単価は安く所有している間の固定資産税も安い。しかもきちんと手入れをすれば長持ちする、三拍子、いや三拍子を通り越して四拍子も五拍子も揃っている。まぁ唯一悪いのは火災が起きた時に燃えやすいことと火災保険が高いことくらいですかね。

「木造塾」の開講でお客様を育てる、市場で求められる「品質レベル」を上げる

私が木造塾でお話しているのは「要するに木造住宅とはね」という話です。沖縄の建て主の皆さんにとっては、そもそも木造の住まいが少ないから“要するに”といったあたりの話から始めて、あわせて沖縄の気候についても改めて教えてあげるんです。意外に思うかもしれないですが、日々生活していると案外と住んでいる場所の地域性はわからないものです。だからそこをまず教えてあげて、「私たちが住んでる沖縄はこういう気候なんですよ」、「内地はこうなのでこれがあるんですよ」っていう具合に。そうしたら「ここには合うけど、デメリットとしてはこういう事にも気をつけないといけないですよ」とお伝えできる。また、建築基準法の元々の概念からある程度教えることもします。「今の法律はこうで、先々はこうなってくるんですよ」ということをお伝えします。例えば強風区域でいうと、じゃあこれは何メートルで算定されているかって事まで教える。こんな感じで基準法の根拠をひも解いてあげて、それを分ったうえで建築する会社がどこにありますかっていう話につなげる。少なくとも僕が知る限りでは、ここ沖縄ではそこまで理解している人はほとんどいないと思いますよ。

この木造塾、前は毎月やってたんです。さっきも言いましたけど、こっちの風土や気候を何も調べもせず本土から持ち込んだ企画を木のことを知らない現地の人で建てる、そういうまずいことが増えたから。それがここにきてようやく自然と生活の中に木造建築が溶け込んできて、お客様も以前ほど興味示さなくなった。だから今は本当に価値観を共有できるお客様だけに2ヶ月に1回位やってます。
お客様の前ではこういう話をするんですが、同業者に対してもします。確かに市場の最前線ではライバル同士かもしれないけれど「考え方が共感できるんだったら」OKです。考えを共感できるっていう人がもし来たらいくらでもお伝えします。でもね、儲けるだけの頭しかない会社を僕は絶対に応援しません。
同業者に話すことは、沖縄の木造住宅建築全体の供給品質レベルを上げることになるわけだからもちろんOKなんだけど、現実には木造塾でやっているみたいにエンドユーザーに直接教えていった方が早い。だって住まいを建てるのはエンドユーザー本人ですから。

同業者とエンドユーザーのどちらに相対するにしても、はじめにも話しましたがこの先はもう使命感です。沖縄には木造が合う。だけど沖縄の気候や風土や環境を踏まえた木造はまだない。だから気候や風土、環境を配慮した沖縄に合う木造建築とはどういうものか、という考え方を繋いでいく様な活動していくつもりです。今回、ここまで話したことはざっくりとしたさわりのような話です。木造は本当に奥が深く、私自身これから先も「日々精進」、もっと勉強して行こうと思っています。

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