住宅不動産業界 トップインタビュー〜住宅不動産業における優れた経営品質を追う〜

変革の時代を迎える住宅不動産産業界において、自社の持続的な成長を実現しながら地域社会に貢献する企業となるために、経営者はどのように考えどのような活動方針を持って経営に取り組むべきか。

住宅・不動産業界 ビジョナリー経営

「住まい」を変えるのではなく「暮らし方」を変える住宅会社を目指す 茨城県・ノーブルホーム

来年2019年には創業25周年を迎える茨城県水戸市のノーブルホーム。茨城県内トップビルダーとしてはもちろん、この先には国内でも有数のビルダーとなりうる注目の企業です。高校教師、高校野球の監督から不動産会社そして住宅会社の経営者に転身されたという異色のキャリアをお持ちの福井社長を訪ね、継続的な事業拡大、人材の成長を実現し続ける背景にある考え方や日々の行動で大切になさっていることをお伺いしてきました。

福井社長株式会社ノーブルホーム
代表取締役社長 福井 英治 様

高校球児、青年監督時代から今に繋がる「環境、相手を見る」目

異色のキャリアですね、というのはやはりよく言われます。そもそも教員になろうと思ったのは高校時代なんです。高校野球をやっている頃、ライバル高校であり全国制覇もしているあの木内監督との出会いがありました。当時、私はキャプテンで4番というチームの中心選手でした。木内監督率いるチームと比べても、個人個人の選手の力量ならうちの方がいいメンバーを揃えていたのに、準決勝や決勝であたるとなかなか勝てなかったんです。高校生ながら「なんで勝てないんだろう」といつも考えたのですが、考えながら相手ベンチの木内監督をよく見ていると、監督の選手の育て方とかゲームのマネジメントとか「何かが違う」というのを肌で感じたんですよね。特に自分のチームはもちろん相手の選手の強み弱みを見極めるという点がすごいなと感じていました。「あっ、やっぱりリーダーによって成果の出方って違うんだ」ということをはっきりと感じたものです。
そんな体験がきっかけになって、自分も高校野球の監督になってそういうリーダーになりたいな、という風に思ったんです。実際に監督になって戦略・選手育成・トータルマネジメントという様なものを体験する中で、自分はそういったことが好きなんだなと自覚できましたし、考え方のベースにもなっていますし、自分でも得意だと思える部分になってきたんです。20歳前、下手したら15、16歳頃の気付きが原点となって未だに脈々と続いている、そういう感じです。

住宅不動産会社の創業
25周年を目前に新たな理念とクレドに込めた「新ステージへの挑戦」

そうやって教員になったわけですが、教員を3年やった頃、家業の仕事に戻ることになり教員を辞めました。家業を1年やった後、今の住宅不動産事業に飛び込みました。2年3カ月修行として勤めた後に独立しました。ちょうど28歳と半年位ですかね。スタートの事業は不動産仲介業でした。まだ私と事務員だけの小さな会社で、自社で買い取るような売買事業の世界観は全くなかったですね。起業して2年経った頃、お客様に住まいを提供するのなら土地と建物はワンストップで提案すべきだ、とかねてから思っていたことを実現しようと今のノーブルホームを立ち上げたんです。それから、おかげ様でもう来年で丸25年を数えることになりました。

25年を前に、100年企業というビジョンを掲げて企業理念やクレドを新しくするなどの取り組みを始めています。それだけではなく人事制度を新しくするなど、様々なチャレンジをしています。企業理念として「日本の暮らし方を変える」というシンプルな言葉ながら壮大なメッセージを発信しているわけですが、会社の世界観というかステージも上がってきた自覚の元に、先々未来を見据えてメッセージを考えた時にこういう理念を打ち出したということです。実は、創業して12,3年目の頃、「日本の暮らし方を変える」を発信する前に掲げていた企業理念があります。それは「ライフイノベーションカンパニー」というメッセージでした。創造・革新をし続けるイノベーションカンパニーとしてベンチャー系企業が新しいものを出していくぞ!という強い意志をストレートに発信したいという理念でした。思い起こせばその頃は社員数も60名前後でまさしくベンチャー企業として伸び盛りで活況な時だったわけです。
うちもある程度成長を続けてきた結果、25年目を目前に茨城県ではNO.1企業とかリーディングカンパニーといわれる世界観で自らを考えられるようになりましたが、基準・ステージを日本全国とか全世界で、というように考えるとまだまだ本当にこれからっていうところにあると自覚しています。そういう意味では自ら基準、目線を上げて、再びスタートアップしていくという心持で掲げたのが新たな理念なんです。
そういう思いで発信した企業理念「日本の暮らし方を変える」では、「住まい」を変えるという言い方ではなくて「暮らし方」を変えるという言葉を敢えて選びました。暮らし方という言葉を選んだポイントは、私たちは建物としての住まいを引き渡して終わりの会社ではなく、住む人の日常、暮らしの実感といったものに関わっていきたい、提案していきたいという決意表明でもあるんです。
もう一つ「日本の暮らし方を変える」には、地域との関係性と言いますかリレーションシップという所を大事にしているというメッセージを伝えたいという思いもあるんです。堅い言葉でいうと「地域貢献」となってしまうんですけども、そういう形にとらわれるのではなく「自分たちが事業でお世話になる地域といい関係性を保ちながら、地域の暮らしの為に何ができるか」をいつも考えるような企業になりたいと思っています。

女性社員の活躍と人材育成を重視する経営

事務所にお越しいただいて女性の社員が多いなと思われたかもしれませんね。今、男女比率は半々位なんです。住宅会社にしては女性活用が進んでいると言われますが、これは実は意図的にこういう構成にしてきた結果なんです。お任せしているのは、例えばインテリアコーディネーター、これに従事してもらっているのが30名位、あとは営業企画系、もう少し分解するとWEB広告・プロモーションにかかわる業務、商品開発にかかわる業務、あとはマーケティングにかかわる業務、この辺りの業務はほぼ90%近くが女性社員です。営業部門でいうと注文住宅営業では女性営業は2人ですが、「スタイルハウス」という規格型住宅ブランドでは女性営業が3名、さらに不動産営業では2人います。しかも営業企画系の女性たちは頼もしくて、「マーケティングの答えは現場にある」っていう考え方で、例えば店舗に出向いて店舗の店長はじめメンバーと現場見学会に何回も参加して、そこで実際に目や耳で得た情報を活かして商品開発の業務に繋げてくれています。若いスタッフが多いという面もあるでしょうが、若いかどうかだけではなく、自ら外に出てお客様の声を自分で聞きたいという積極的な風土ができているからだと、自画自賛ですが、思っています。

こうしてうまくいっている面もあるわけですが、もっともっと良くしたいという面もあります。おかげさまで5年間に人員が倍となっている状況ですので、育成にも力を入れなくてはということで社内研修などを企画して、しっかり実行するということがこれからの課題です。内定者研修など若手にも研修を行うわけですが、今はリーダーや幹部育成のための研修を結構多くしています。特に、先ほどの理念やクレドの考え方の浸透の為の研修であったり、営業や工事、コーディネーター・設計の為の研修を企画してみたりしています。特に離職率を減らせるかどうかは今後の成長にとって重要だと思っています。一度会社に入っていただいた社員には、ずっと活躍してもらいたいということに重きを置いていきたいんです。ですので、キャリアビジョンを聞くなど、会社としても次のステージを目指す、そんな取り組みをようやくスタートできたところです。そういう中で色んな経験をしてもらって可能性を見出していく。ずっと営業をやっていたけど不動産開発にいくとか、或いは営業やっていた人が企画にいくとか、そういった事を今後は当たり前にしていきたいと思っています。

100年企業に向かうための「哲学」

改めて100年企業に込めた想いをお伝えすると、100年企業とは「社員が誇りを持てる」、例えば自分が引退した後に自分が頑張ってきた会社が地域に残っている事が誇りであると感じる。それが人生の自信に繋がっていくということなんです。だからこそ目標を持ち、自分たちの本業を磨き続けこだわり続けることが大事だと思っています。そういう意味で「業界の中でトップ」と言われる会社であり続けたいと思うのです。
もう少し言うと、100年企業となれば、いつかは次世代に引き継いでいくということを考えなくてはいけないと思うんですが、その時に組織やリーダーに会社としての哲学に共感を持ってもらうことが大事で、次世代リーダーによって企業の行く末は大きく変わってくると思っています。その際にリーダーとして大事にしてほしいことは、社員がノーブルホームで働く(働いた)ことに誇りを持てる、そういう会社に導くようなリーダーとなってほしいという事です。そのための小さな第一歩が、25年目を目前に新たに発信した企業理念とかクレドの浸透・共感、ノーブルホームとは何かという哲学的な考え方の浸透・共感なのです。

はじめにも言いましたが、私が野球をやっていた学校は結構最強チームと言われていて、私はそのチームで4番・ショートという重責を頂戴していたんです。でも自分ではそこまで能力があるとは思っていませんでした。ただし、仮に能力が至らなくても考え方とか姿勢といったもので成果が出るんだということを実感していたので、今でも「考え方」ひとつで成果を最大化させるということを大事にしています。例えば、そんなことかと思われるかもしれませんが、「全力でやる」、「120%でやる」、「一球・ワンプレーに集中する」ということや、「相手の動きを良く見る」ということも本当に大切にしている考え方です。ある意味、こだわりであり、思想であり、もはや哲学的なものと言ってもいい。
私を含め私の後に続くノーブルホームのリーダーには、情熱とか執念とか率先垂範とか一貫性とか、そういうものを持ち合わせながら、社員に働きやすく、成果の出やすい環境を提供できるように、コーチのような感性を持ち合わせながら導いていきたいし、今後も続いてほしいと思っています。

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