住宅不動産業界 トップインタビュー〜住宅不動産業における優れた経営品質を追う〜

変革の時代を迎える住宅不動産産業界において、自社の持続的な成長を実現しながら地域社会に貢献する企業となるために、経営者はどのように考えどのような活動方針を持って経営に取り組むべきか。

住宅・不動産業界 ブランド戦略

高性能であることに妥協をしない。「伝える力」を高めることで成長を続ける 宮崎県・アイ・ホーム

全くの異業種から30年前にこの業界に入ったアイ・ホーム株式会社の田村社長。「良いけど高い」と言われていた自社商品の成長速度を、「伝える力」で復活させました。今回は田村社長の自社商品へのこだわりとその発信についてお話を伺いました。

田村 寛治アイ・ホーム株式会社
代表取締役 田村 寛治 様

高性能へのこだわりは、売れるからではなく、自分が信じている「当たり前の性能」をお届けしたいから

今はどこでも人手不足と言われていますよね。おかげさまで今、私の会社では社員数は充実しています。関連会社の2社も含め、パートも入れて、全部合わせると80人ちょっとです。みんな勉強熱心で、一級建築士は15名、2級は18名、インテリアコーディネータが9名、他にもプランナー、土地家屋調査士とか資格を持っているスタッフも充実しています。採用にあたってはほとんど社員や関連業者からの紹介で、結果的に本当に良い人がいい具合に来てくれたと思っています。因みに創業の時は3名でスタートしましたから隔世の感があります。

少し話が変わりますが、元々「健康」というか「高性能」を自社のアピールポイントに踏み切ったのは自分が作りたい、自分が住みたい家をつくりたい、それだけなのです。建築業界では大工さんが全てを担ってきましたが、耐震性能や断熱性能について「科学的な発想」が欠けていました。今では当たり前と考えられている住宅の性能も、従来の技術を踏襲するだけでは進歩が望めません。「高性能」と言われる住宅性能は顧客の立場からすれば当たり前の性能です。決して高性能な家が売れるから造っているわけではないのです。もうそれは最初からです。
だから例えば今でいう「耐震等級3」はうちの商品では当たり前です。創業してしばらくした頃、そんな強い家にこだわる思いが極まって「筋交いは倍入れてみて」と私は言っていました。そうしたら建築士が「社長これでいいんでしょうか」って持ってきた図面にはなんと窓がないのですよ(笑)。それで「じゃぁ、せめて1.5倍ではどうだろうか」、「1.5倍だったらなんとかなります」となって、じゃあ1.5倍でいこうなんていうやり取りがありました。そしたら、ずっとやっているうちに、後から性能評価制度が出てきて「1.5倍」が耐震性能等級3相当の基準と同じでした。これは耐震性能の中でも最高等級で、安心安全を提供する上での到達点とも言える水準です。偶然ですが。そんな感じで、私がそういう性格だからどうせこの仕事をやるのだったらそういうものを作りたい、いいものを使いたい。だから顧客にとって当たり前は家族の命を守れる家でなくてはならない、そういう高い性能が我が社の当たり前なのです。
一本筋を通してきたおかげで、注文住宅の事業は割と順調に、1年目から一度も赤字になることなくここまできました。

「いいけど高い」を超える「伝える力」

お分かりだと思いますが、命を守れない家は造れませんから耐震性能は最高等級で、そして断熱性能は一般的な家の消費エネルギーを半分以下にできる性能を、となるとどうしても値段は高くなります。現実的には宮崎の地でこの方針の商売をするのはなかなか大変なことです。極端な言い方ですけど、宮崎はローコストのメッカです。実感値として宮崎のお客様のご予算は1,600万円~2,200の万円の間の人が多いとは思いますが、一方で最多の販売数を挙げている会社の商品価格帯は1棟で1,200万円台です。1,200万円の家ということは面積を小さくするか、性能を落とさない限り出来ないです。繰り返しですけど、それでは性能はのぞめない、しかも居住性も悪い家になります。
加えて大きな変化は、昔であればその時に組める予算目一杯で建てても将来もっと収入が上がる見込み、いやなんとなく「暮らしは年々豊かになる」といった確信めいたものがあったはずですが、今はそういう事に期待がないのではないでしょうか。だから予算があっても節約してしまいます。そういう時代ですよね。だからある程度は価格帯が下がるのは仕方がないとは思っています。でも当たり前であるべき高性能へのこだわりを諦めない家作りをやりつつ、価格訴求もしていかないといけないと考えます。

実は今から3年ほど前2014年から2015年頃、ちょっと底だったのです。理想追求型の高性能でアイ・ホームの家は「良いけれど高い」って言われていました。正直に申し上げると、当時は段々受注が落ちていく、そんな経験をしました。そこから挽回するためにちょっと色々頑張りまして。それが「伝える力」を大事にする、ということなのです。当時の我が社には「伝える力」が足りない、そんなことを思っていました。そこから陣頭指揮でツールを作ったり、ツールをパネル化して並べたり、色んな手立てをやりました。高性能はなぜいいのか、それは命を守れない家を造ることがいかに愚策であるかをしっかりとお伝えすることで、制震ダンパーは当たり前、耐震等級3以上が当たり前だとご理解いただけることがポイントでした。安心・安全はもとより経済性の面でもいい、ということをしっかりとお伝えすることが大事なのです。こうしたことをちゃんと伝える、それに改めて力を入れました。これをお読みの方からすれば当たり前のような話に映るかもしれませんが、自分たちが提供している価値をどうやってわかりやすく伝えるかは本当に大事だと思います。マッハシステムというブランディング、ネーミングのPRももう7年位になります。マッハシステム自体は元からあった名前なのですけど、この全館空調の価値も改めて伝え直そうと。あと、4年位前からになりますけど、温度とか湿度とかを全部センシングでちゃんとデータを取っています。これも「わかりやすく」開示するのも伝える力のひとつです。見える化をすると家をどう使おうかといった話題に対する関心も高まります。
もちろんブランドやPRだけではなくデザインにも注力しました。高性能は当たり前、初期費用はアップしてもランニングコストは下がりその上デザインが素敵、そう言われる家づくりです。
「ちょうど良い家」というブランドを立ち上げました。設計デザイン・コンセプトで予算的にも丁度良く、広さも丁度良く、しかも作りこみすぎないプラン、まさに「ちょうど良い家」です。もちろんこのネーミングも私が考えましたが、こうした訴求が認められて、自分で言うのも何ですが、平屋ブーム(の火付け役)となったと思います。因みに価格帯はモデルハウスくらいに意匠的なところまでやると高くなりますが、うちの標準的な外壁材を使い、天井も上り勾配でなくて一般的なのでやると30坪ほどの家が1,700万円位で出来ます。しかもUa値0,35以下です。おかげで最近は受注の6割が平屋です。

こういう訴求をきちんとやり直していることで紹介的な商談も増えてきました。しかも人から「評判を聞いてきた」という紹介です。しっかりと伝える事ができる様になるとこういう循環が起こるという事ですね。

「意味のない数字」は嫌いなんです。意味ある数字のカギは「現場生産能力」

だから数字優先でやった結果として仕事をたくさんいただくことになっても、僕はあまり幸せなことだと思わないのです。社員も数字優先になると変な感情を持ちはじめてしまう。数字のための数字、みたいな。その数字に意味のない数字は嫌なんです。
例えば、新しい職人さんにお仕事を依頼するときは、まず弊社の協力業者会に所属している職人さんと仕事をしていただいて、きちんと技術を習得してもらった上で入会してもらいます。そして会に入ってもらったからにはその人たちがきちんと継続的に仕事を発注していくことが会社の責務となり、それがひとつの目標になるのです。おかげさまで年間200棟前後、そういう規模感である意味安定的に供給が続いている訳なのですけれども、それを意味のある数字としてもう少し伸ばせていけるものなのか、それを考えなくてはいけない段階です。その時に重要だと考えていることは、現場の生産能力に着目することです。

伝える力を源に、この先の成長を描く

今うちの営業体制は基本単位として3人1チームです。営業所が2箇所2チームで6人、他に4チームで12人、合計で18人です。先月はその6チームで一ヶ月に18棟契約しました。まぁ全員がとったという感じです。宮崎県内の最近の着工棟数は年間で3,000棟から3,100棟ほどといったところです。その中で100棟を超えて200棟も視野に入ってくる成長スピードを取り戻してきました。もしかすると壁を超える時期に来ているのかなという気はしますね。

この先の成長戦略の一環として2019年には鹿児島に営業所を開設します。実は私は幼少期、小学校4年くらいまでの6年ほど鹿児島の隼人で育ちました。そんな縁で桜島のある鹿児島は心の故郷です。
ご存知のように鹿児島は毎日のように桜島の火山灰が降り注ぎます。ですから洗濯物は外に干せませんし、夏も暑くて窓が開けられません。そのためエアコンの稼働率は全国1位という土地柄です。うちのマッハシステムは全館空調です。窓を開けなくても1年中家の中は快適な室温と快適な湿度が実現できます。さらに快適さを高める新しい技術として「全館空気清浄システム」を開発しました。すでに製品化されている空気清浄機もありますが、機器を設置した周辺の空気は清浄できても少し離れた部屋隅の空気まではなかなか清浄できません。機器周辺の空気がショートサーキットしているだけで部屋全体の空気を清浄する効果が出ていないということです。しかも例えば清浄機を5台も動かせば200w/hとなり経済的でもありません。
開発した全館空気清浄システムは「クリーンエアヘルスシステム」と名付けました。12w/hの消費電力で全室の空気を隅々まで浄化します。2019年、鹿児島県霧島市隼人に店を出しクリーンエアヘルスシステムを広めて、心の故郷・鹿児島の方々に喜んでいただきたいと思っています。

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