住宅不動産業界 トップインタビュー〜住宅不動産業における優れた経営品質を追う〜

変革の時代を迎える住宅不動産産業界において、自社の持続的な成長を実現しながら地域社会に貢献する企業となるために、経営者はどのように考えどのような活動方針を持って経営に取り組むべきか。

住宅・不動産業界 人材戦略

企業は成長が無くなったら存続はなくなる。そして、企業として成長し存続し続けるためには人が大切。熊本県・シアーズホームグループ

2019年には200億、それを目標に成長中のシアーズホーム様。平均単価2,000万円位の所謂注文住宅領域を担うシアーズホーム本体に加え、少し下の価格帯1,500万位の領域を担うジャストホーム、さらに建物は1,300万円位、土地・建物で2,500万円以内の領域を担うサンタ不動産という、「松竹梅戦略」なる領域別のブランドで市場をカバーしてきました。さらにこの先は「エリア」拡大を加え成長を加速させようとする同社。
「会社の規模が大きくなればなるほど細かくなる。上に上がれば上がるほど細かくなる。細かくやれば確実に売上は上がる」とおっしゃる丸本社長に、企業の成長の原動力について伺いました。

丸本 文紀株式会社シアーズホーム
代表取締役 丸本 文紀 様

成長する住宅企業に必要なことは、住宅を「売る技術」と「作る技術」そして「経営力」。

私は住宅を「売る技術」と「作る技術」、それに「経営力」がある企業は大きくなる、と考えています。それをベースにしてシアーズホーム本体だけでやっていたものを、例えばリフォームや不動産などの周辺事業に拡げつつ、営業エリアも拡大しています。住宅で培った「売る技術」と「作る技術」を磨くことが我が社のコアコンピテンシー(業績優秀者の行動の様式や特性)として成長の原動力となっています。
そこでドンドン“松竹梅戦略”で拡げていこうという考えに至ったわけです。もちろん市場には競争相手もいるわけですけど、お客様がこの価格帯で、こういうデザインの商品、住宅が欲しいというマーケットニーズを捉えているかどうか、あるいはそもそもニーズがあるかないかだけなのです。マーケットニーズを捉えそれに合った仕事をちゃんとやっていけば、ちゃんと生き残っていける。要は、マーケットニーズが「どこにあるか」を常に考える事が大切なのです。これならば比較的難しくないのですよ。

企業というのはゴーイングコンサーンでしょ。ゴーイングコンサーンの唯一の手立ては成長するしかない、それだけです。成長が無くなったら存続はなくなるのです。見方を変えれば、常に新しい分野とか新しい地域での展開を考え続けるしか企業の存続する方法はないということです。それとちゃんと税金を払う、つまり地域貢献ですね。こういうことが、私は一番だと思っているのです。
そういう前提で「経営」において一番大切な事は、経営者が「決める」こと、とりわけ「人材育成」について決めることだと思います。企業として成長し存続し続けるためには人が大切なのです。ですから経営者として「事業」をする時に一緒に働く社員の幸せが一番だ、そう決めることなのです。
もちろん目指すものをきちんと見せる、伝えるということも大事です。私がやっている事はまず「目標設定」なのです。うちでは半期に1回「経営計画書」というものを出します。半期に1回、上期・下期に全社員に対して出しています。例えば「九州NO.1」とか「社員満足度NO.1」とか、まず「目標設定」をするわけです。「目標設定」をしたら後は結果からの逆算じゃないですか。因果の通り、原因と結果の法則でいくと結果からの逆算です。そこでどう逆算するかの構想を立て、やり方を考えて示し、やる、実行する。これはまさにPDCAですよね。あとは修正。極端に言ったら今立てる3年間の目標と来年立てる3年間の目標は違いますよ。それは当然です。
ここまでやろうと「旗を立てる」、これを楽しめないと駄目だと思っています。もっというと、経営者は旗を立てる事が生き甲斐である、と言えるくらいがいい。賢明なる成長をするという旗を立てて進まなければ社員の幸せはありませんから。

社員は顧客。だから大切にするし、甘やかさない

私は社員を楽しませるのが社長の仕事だと思っています。それを極端に言えば、社員は社長のお客様であるとも思っています。大切なお客様だと思うからちゃんとした事も言うし、甘やかさないのです。感謝すべきことがあれば、朝礼でも「本当にありがとう」と伝えます。でもそのご恩返しだからといって適当な事はしないです。いい顔をする人がいるじゃないですか、私は一切しないです。小善は大悪なのです。本当にその人の為を思ったら、絶対にいい顔をしない、その場しのぎはしません。大善(たいぜん)は非情に似たる、とも言いますよね。大きな善というのは非情ですよと。非情だけの人は後からわかる。でも、あの人があの時ああ言ってくれたからなぁと後から感謝の気持ちが起こること、結構そういうのはある。あの人は厳しかったな、でも、何年かしたらあの時は頭にきたけど、あの人にあそこで言われたから今がある。だから大善は非情に似たる、なんです。

人材育成を考える際に一番大事な事は「社員満足度」を上げる事

はじめに企業として成長し存続し続けるためには人が大切だと言いましたが、人を大切にする上で「社員満足度」ということを重視しています。社員が活き活きと働くことができれば、自ずとそういう社員はお客様に対して一生懸命対応しますよね。これがベースにないと絶対に企業は成長しないと思うのです。
この「社員満足度」を上げるには4つの要素があると思います。ひとつは「所得」です。うちでは所得については地元企業を見渡してそれより高い水準に設定しています。あとは「いい仲間といい仕事をする」こと。これはいわゆる社内の雰囲気というやつです。いい仲間といい仕事を一緒にすることで「やり甲斐」を持ってもらいたいと思っています。あと、これは難しいですけれど「ワークライフバランス」です。「ワークライフバランス」は色々な観点がありますけど、やはり生産性を上げて少しでも休みを増やすことだと思います。震災のあとこれが出来なくなっていますが、ぜひここはこだわりたいと思っています。最後の一つは「公平な人事制度」です。この4つが社員満足度を上げるための重要なポイントです。

4つ目の「公平な人事制度」についてお話しすると、「“成長”人事制度」という考えのもとで、人事制度を自社で考えて自社でつくりました。これが一番の肝ですから。そしてこの「成長人事制度」は一回つくったものを今でもドンドン磨いています。磨き続けるというのはどういう事かといいますと、社員の成長があるからです。
制度の主な構成として「成長支援制度」と「絶対評価制度」、もう一つ「シアーズアカデミー(これはスキルアップの為の研修制度です)」、があります。詳細に全てはお伝えできませんが、多様な視点から社員の今現在の力を期待成果、勤務態度、人間力、その次に士気、技術、資格などに分解して確認をするためのツールであり基準です。私の中で一番大事なことは、示しているようなことを身につけたうえで、本当に一生懸命頑張ってお客様の為になろうという「人間性」だと思っています。「シアーズアカデミー」では社員の成長をサポートします。「シアーズアカデミー」の講師は、外部講師もおりますけれど社員もいます。一応マニュアルもつくっていますが、社員に「あなた講師をやって」と言って機会を与えます。これ自体も今現在の力を確認、伸ばす機会になります。
こういった制度や取り組みを通じて社員と会社のお互いがwin-winになるような、そんな制度の考え方を「“成長”人事制度」という風な言い方をしているのです。これはもっともっと磨いていこうと思っています。ちなみに、うちには人事部と独立して人材開発部という組織をおいています。採用は人事と一緒にあたりますけれども、育成・教育等、成長人事制度の執行は人材開発部です。我が社の成長目標達成に向け、社員の採用・教育・育成にどれだけの人材を用意して育成するかをはっきりさせているということです。

人間性を大事にする上でしていることは、シアーズホームのDNAというか、こういう考え方で仕事しなさいという理念というか、そう言った私の考え方を「浸透」させることです。先ほども言いましたが、半期に1回全社に「経営計画書」を配布しています。そこにシアーズホームグループのミッション、「私達はお客様の満足を通じて自らの幸福を実現します」、「ユーザーの満足が社員の満足」という私からのメッセージを入れて発信します。「シアーズホームグループは家をつくるまえに人をつくる」、「自行自責」、「他責の排除」、「住宅産業を通じて世の中の役に立つ人間になろう」っていう事を現場で確認しあっています。

先を考えるのが経営者の仕事。それは利益を出して、次の飯の種を探すこと

社員を楽しませる、そのために経営者は利益を出して、次の飯の種を探す、これをしないとダメですよね。儲からないとどうしようもないから。私は、絶対儲からないといけない、何が何でも絶対利益を出さないといけないと強く思っています。

絶対に利益を出さないといけない、それは私の中では「賢明なる成長」、「スマートグロース」という発想です。どこから持ってきたかと言うと、アメリカのポートランドからです。あそこは世界で一番住みやすい街になっていますけれど、それは成長していっているから、賢明なる成長「スマートグロース」が実現しているからだと思います。ですから、ずっとお客様に喜んでいただく、そのお客様を喜ばす社員にも喜んでもらう、それには少しずつでも成長することによってやり甲斐と生き甲斐を持ち続けることが必要なのです。だからうちが成長していく時に「次はどうなっていくのかな」ということを示さなくてはいけないのです。
それで、今、うちでは「ビジネスユニット制」をつくっているのです。これは言い換えると経営者の育成です。話は変わりますが、うちは上場しないのです。経営者の責任として、まずお客様に対する責任と社員に対する責任を優先したいからです。上場したら株主に対する責任がありますが、株主に対する責任まで持てない。それよりも万が一の時でもリストラしたくない、眼の前の利益だけに追われたくない、そちらの思いが強いです。その上で、賢明なる成長をし続けていく為に、あくまでも社員とお客様だけに集中しようという考え方なのです。
それでビジネスユニット制にして今度は経営者の育成をしていって、そして社長をいっぱいつくっていこうと。要は自分でも社長になれるよ、新入社員でうちに入って先々に社長になれるよと。社員の人たちがこの会社にいて将来の夢が描けて、そしてちゃんと給料貰っていって、ちゃんと自分の将来も見据える事が出来る。だから成長していかないと、会社というのは。

一方で、経営者として成長志向がなくなったら、これでいいと思ったらそれは後進に道を譲ったほうが良い。それがなかったら経営者じゃないと言ってもいいくらいです。私自身は、売上50億円の時に売上100億円のビルダーを見て、そして自分が100億円ビルダーになったら300億円のビルダーをベンチマークして貪欲に吸収してきました。それが経営者としては当然だと思っていますから。

次の戦略を考えた時に、社外的には「九州NO.1」と言っています。そして社内には「社員満足度NO.1」と高収益企業の実現が夢と言っています。特に「社員満足度NO.1」というのはエンドレスでやるしかない。新しい社屋つくるとか、社員に本当に喜んでもらえるような事をやっていかないといけないです。
あとは「シアーズブランド」。注文住宅事業を核に、建売事業やファストリフォーム、丸ごとリノベーションと、ひとつのブランドにお客様が集まってきてもらえる、全てのご要望に高い生産性で対応出来る新築住宅の請負、建売、リノベーション、ファストリフォームにまでカバーするブランドをどう展開するか、まだまだやれることはたくさんあります。

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