住宅不動産業界 トップインタビュー〜住宅不動産業における優れた経営品質を追う〜

変革の時代を迎える住宅不動産産業界において、自社の持続的な成長を実現しながら地域社会に貢献する企業となるために、経営者はどのように考えどのような活動方針を持って経営に取り組むべきか。

住宅・不動産業界 ブランド戦略

ブランド構築を起点に人と企業の価値を高める 熊本県・ロジック

ブランド構築を起点とした成長戦略に見る、住宅不動産業の経営品質

株式会社ロジック
代表取締役 吉安 孝幸 様

ロジックさんだから出来るんだよな、とよく言われることがあります。もちろんですが、我々も何もかも初めからうまく出来ていたわけではありません。7年前に家業のゼネコンを継いで十数年社長をしていました。そこで住宅事業部を展開したのですが、土木建築工事主体のゼネコンが住宅を売ろうと思った時に勝負どころは「価格」くらいしかないというのが普通の発想です。でも私は「高くても欲しいと思ってもらえるような住宅」を作りたかった。その意見の違いはなかなか合うことはなく、ついに会社を飛び出して創業したのがロジックです。

経営において絶対にやると決めていること、それは「ブランドを作り上げる」こと

創業期の資本金500万円は、退職金や家、車などの売れるものを全て売りかき集めたお金でした。その500万円を強い商品・売れる商品を持つネットワーク加盟に全て使い、会社設立と同時に残高0からのスタートとなりました。残高0円でしたが、その翌月から毎月40~50万円の広告宣伝費を投下していました。それはなぜか。2期目、3期目に出したい成果が明確だったからです。それを達成するには集客しないと何も始まりません。極端な話に聞こえますが、創業して以来ずっと必死に「ブランド」を作ることに力を注いできました。投下した費用は払える払えないで考えるのではなく、来月までに売ればいい、そうやって支払えばいい、そう決めて走ってきました。

一気に高みまでもていくことをやりたかったのです。そこにいけば顧客はもちろん、自然と優秀な人が集まってくる状態が作れるからです。2010年の創業からわずか7年で、地元熊本において100棟を超えるビルダーになれたのも、「ブランドを作り上げ」てきたからだ、と言い切れます。

自分が考える高い品質の経営とは「高付加価値をもたらす経営」

先日「住宅不動産事業の生産性革新と日本の未来 シンポジウム」で「経営品質賞」を頂きました。その賞では、多様なマーケティングによるブランド構築投資と人材採用・人材教育投資を積極的にスピーディに推進した結果残した高い業績を評価していただきました。

ほぼ同じ時期に、実は、取引先の銀行から「経営品質が最低」と言われていました。複数走らせているプロダクトごとのPLなど金融機関とロジックの現状を詳細に共有できていなかったという点で大いに反省する面もあるのですが、幾つか受けた指摘は「シュリンク市場である住宅市場でなぜ今積極拡大しようとするのか」、「請負は中間金とか先にお金が入ってくるビジネスのはず。支払いより先に資金がいる理由がわからない」、「着実なビジネスがあるにもかかわらず先行投資が多い」といった指摘でした。

自分が信じてやってきたことを考えると、これらの指摘には戸惑いを隠しきれなかったというのが正直なところでした。自分が考える高い経営品質とは「高付加価値をもたらす経営」です。そして高付加価値を生み出すには、強い商品・サービスとそれを実現する魅力的に人材に恵まれることが一つの重要な条件です。ここで単に安売り合戦にしかならないような商売をしては、優良な顧客はもちろん魅力的な人材だって集まらない。だから新たな取り組みを始める際には必ずブランド構築のために先手を打つのです。いつも何かを始めようとする際には「本当にそれでいいのか」「普通のことをやろうしていないか」と常に自問自答をしています。

ブランドがもたらしてくれた成果。人材投資の源

人は自分ではなかなか気づかないし成長しない。「そういえば、あの時ああ言ってくれていたなぁ」という段階で初めて気づきを得る成長プロセスが普通で、場合によっては気づきを得るまでの期間は長いかもしれない。そういう意味では、何年も経って人から言われたことで成長の気づきを得る前に、目の前で自ら経験を積んでもらうことで人材の成長を促すことができる方がいいと思っています。

ブランドが確立して高付加価値の商品サービスの提供が完成した結果、会社として得た成果は、「現場に委ねる」ことができるようになったことかもしれません。現場に任せた結果、多少のお金を失ってもチャレンジした社員が一生ものの気づきを得られるのであれば、それで人材が成長してくれるならば、十分に見あう人材投資だと思っています。

自身のブランドバリューも高め続ける
アジリティ(機動力)を持つためには余裕を持つこと

企業経営、事業推進においてブランド構築を起点にするという考え方と同じように、常に自分のブランドバリューを高めることも常に考えています。

細かい話ですし、むしろ経営的にはどうかと思われるような話ですが、創業2年目くらいまでは例えば屋根の板金が気に入らなければその場で即座にやり直させたりしていました。それはなぜかといえば、そういう行為を見ていた人が「そこまでこだわってくれる社長がいるなら、いつかロジックで建てたい」と思っていただける、そう見えると考えていたからです。お金もないのに創業の頃は自分なりの美意識として小さな文房具ですら国産品は置くなとか言っていました。

実際に周りからどう見えているかわかりませんが、私は常々「自分は暇」と思っています。だからどこでもいつでも動ける。自分の美意識を高めるためや知的刺激を得るためには実際に会いたい、見たい、話したいと思った時にすぐ動ける、そう思っています。

機動力がない状態では物事は前に進まない。未決のものが残り続ける状態があることが一番嫌いです。検証する時間があるなら、まずやってみて痛い目にあっても気づきがある方がいい。こんな機動力の高い行動をとるためにも余裕を持つことを心がけています。

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