住宅不動産業界 トップインタビュー〜住宅不動産業における優れた経営品質を追う〜

変革の時代を迎える住宅不動産産業界において、自社の持続的な成長を実現しながら地域社会に貢献する企業となるために、経営者はどのように考えどのような活動方針を持って経営に取り組むべきか。

住宅・不動産業界 成長戦略

住宅市場の既存の流れを断ち切り、日本人の暮らしを幸せにしたい! 東京都・桧家ホールディングス

業界経験なしの「ど素人」から始まった
「日本人の暮らしを少しでもよくしたい、そのための住宅業界革新」の道のり

株式会社桧家ホールディングス
代表取締役 近藤 昭 様

子会社11社、関連会社2社を有する大企業、桧家ホールディングスの近藤社長はもともと生命保険業界に身をおいていた住宅業界では全くの門外漢でした。しかも業界キャリアをスタートは、当時埼玉県の売上6-70億円ほどの工務店で、当初は経営者と言う立場ではないところからのスタートでした。なぜそのようなキャリアチェンジを、とお尋ねすると、現会長(当時社長)が「うちは上場を目指したいんだ」、「拡大して行くんだ」と言っていて埼玉の一工務店で終わることなく将来上場を目指したいというならそれもいいかなと。なんとも単純な話ですが、その言葉があったから業界に飛び込んだのだそうです。

未知の世界ゆえのカルチャーショック。しかし、「だからこそ面白い住宅業界」

元々仕事をしていた金融業界は非常に規制が強くて、自分たちで勝手にいろんなことを創ったり新しいこと始めたりできない。だけど、この業界はある意味自由で、当たり前の話だけれど値決めから、何を創って、何をしないとか、新しいことこんなことやろうか何でも自分たちが考えたことができる。そういう世界はある意味カルチャーショックだったけど楽しいことだなと感じています。
最初は何もわからなかったわけですが、何をするとどうなるとか、商品としてどんなことが必要なのかとかだんだんわかってくると、もっとこうした方がいいんじゃないかというアイデアが出てくるようになってきます。自分たちの知恵とかやり方とか仕組みとか、そういうものをしっかり作ることによって絶えず勝ってゆける、そこも自由と自己責任でできればうまくいくし、ダメだったらダメではっきりする。そこはすごくやりがいを感じましたし、今でもそう思っています。

近藤社長の世代になり、先代からの考えを守っていること、大きく変えたことは?

創業者でありオーナー社長であった現会長が強力なリーダーシップで引っ張ってきた会社だったから、上場に向けて当時はガバナンスなんてものはないと言ってもいいほどでした。でも上場を目指すならそれではダメだと当時から言い続けていました。金融機関にいたから余計ですけど、法律とか世の中のいろんな目とかに対して、おかしな風に見られないようにフェアにやらなきゃいけないなど当然のことと染み付いていたので、上場を目指すにあたってそういうことを整備していかなくてはいけない。
この過程で規定や組織をどうしたかと言えば、実は組織はそんなに変えていない。規定とか整備をしながら進めただけ。ただ、組織で変えたことといえば、桧家住宅というのを分社化していったことですね。分社化したことで社長、子会社の社長がいて組織をつくるわけです。小さな塊にしてきちっとやっていこう、という発想を会長は持っていた。で、それを実際にやっていったわけです。やっぱり大きな組織となると本当に目が行き届かなくなっていくし、ルールも定着していないのに人ばかりが増えあふれちゃうと、どこで何やっているのかもわからなくなっちゃうリスクもあるんだけど、それを小さな塊で社長を立てて組織の末端までしっかり見ろよ、ということでした。ルール整備と同時進行でしっかりできていないうちからそういう風にやっていったのは今思えば良かったかなと思っています。

事業を考える上で守っていることは少しでもいいものをより安く、を起点に商売をすることです。大手から下請けをポーンと投げられて下請けが見積もった金額にポーンと利益を乗っけられて(大手は)受注してくるという業界構造に疑問を持ち、自分たちが作ったらもっと安くいいものができるんじゃないか、これが当社の創業の原点なんです。今でこそ我々も元請けでやっているわけですけれど、その原点の思いは創業当時から変わってないんです。
変わったところはですね、やっぱり商品ですね。僕が変えたのは、完全に商品を規格化したということです。昔はそんなに規模も大きくなかったし、その中で大手と戦っていくには自由さ、自由度を武器にしたわけです。自由な割には比較的リーズナブルにやりますよっていうのがうちのパターンでした。しかし、当時でもすでに7-800棟請け負っていたんですが、もうこのやり方でこれ以上伸ばすのは無理だと思っていました。自由さと引き換えに現場も営業も本当に混乱していたんです。お客さんも、出来上がってきたら「えーっ、打ち合わせと違う」となるし。自由設計ですよ、と言って最後の最後にお客様に喜んでもらえないなんて、何のためにやっているのかわからないです。そこで2008年にガラッと変えたんです。この先さらに拡大して1000棟2000棟を目指そうと思ったら規格化するしかない。それ以降、今の商品は当時(10年前)のままですが、変えてよかったなと思っています。

会社のホームページなどで用いられている企画という言葉。
商品の規格化という言葉との使い分けや意味は?

2008年に規定の規の規格化を進めたわけですが、ホームページ上の紹介では企てるの企画にしています。それは規格だけじゃダメだと思っているからです。自由度は比較的低いかもしれないけれど、楽しみは負けていないよ、ということです。家づくりの楽しさとかいろんなアイデアとかは他の会社に比べて負けていませんよ、ということを打ち出しているんです。お客様には「企画」をしっかり見せるということです。

M&Aによる成長戦略についてお伺いしたいです

経営が自分の代に変わってすぐ、それ以降に結構な頻度でM&Aをしてきました。しかしそれは意図的というわけではなかったのです。最初のM&A案件は分譲事業をする不動産会社でした。10年前に名古屋で上場した後に、証券会社からどうですかと持ち込まれた案件でした。上場するとこんな話がくるものなんだ、と思ったくらいです。当時ははっきり言って見る目もなかったし、初めての経験でしたし、半ば冒険みたいなことだったんですけど、やってみてダメだったらその時考えればいいよ、という感覚でした。結果としては、分譲事業には興味があったので買収して、自ら兼務で社長に入って分譲のやり方とかを初めて体験しました。これは非常にいい機会でした。そこからです。うちがM&Aしているということが知られる頃から、話がバンバンバンとくるようになった。そこから今のランデックスとか日本アクアとかの話もきました。
繰り返しみたいな話ですが、M&Aを用いたグランドデザインというかエリア展開、あるいは事業ポートフォリオとか、セカンドライン、ブランディングとかそういう大きな絵があったわけじゃないんですよ。たまたま案件が持ち込まれたのちに、そこで考えるんです。どう使うか、使えるか。そこで考えているんです。その時その時で持ち込み案件をどう活用するかを考えて、活用できないのであればお断りする。お断りした案件も相当あるんです。ただ、今はさすがにもうちょっと絵は考えています。もっとこういうのがあればいいなぁとか、こういうことがやりたいなぁとか。
例えば住宅ビジネスではパワービルダーほどの規模でやることは無理なんだけど、ただ、今回うちがZ空調というのを出したでしょ、あれは本当にいいものができた、と思っています。あれはもともと日本アクアがグループ会社にいたことと、住宅の性能というものにこだわっていた会社だから、ある意味その一つのゴールみたいなものとしてできたわけです。僕はZ空調を持って大手を負かしにいこうと思っているんです。で、それにはスケールが必要なんですね。だから1年くらい先にはZ空調を外販しようと思ってるんです。それは日本アクアの断熱がベースにあることが前提ですが、日本アクアの施工先というのは今、5万棟くらいあるんです。新築だけで。そこに売っていこうと思っているんです。もしよければ売りますよ、と。日本の住宅をここから変えていこうと思っているんです。それにはスケールは絶対必要なんで、うちの会社だけでは無理で、そこをひっくるめてやっていきたいと思っています。住宅ビジネスではそれが一つの目標です。

日本人の暮らしを幸せにしたい!

住宅業界にも不動産業界にも名だたる企業がたくさんあるわけです。一般の人から見れば、そういう会社は「一番いいもの」を作っているとか「一番正しいこと」をやっていると思っているとおみます。でも実はそうではないという不思議な業界です。普通だったら一番大手の会社がスケールメリットでいいものを一番安く作れるはずじゃないですか。でもそうなっていない。だから我々が何とかしなきゃという、これが我々のモチベーションです。
まぁもう長くなりましたけどもともと僕は業界素人だから、Z空調なんかを考えたのは、世界の住宅と日本の住宅を見たときに、あんなに寒い国なのに中でTシャツを着て走り回ったいる、それが僕にはショックだったんです。
例えば省エネ性能にしてもスペックはもちろん一つの目安だし、比較する基準にもなるわけで、全く無意味だとは言わないけれども、じゃぁスペックが良ければ本当に快適な暮らしができるかといえば、断熱材がどうかとか外皮性能がどうかということしか基準になっていない日本で、それだけじゃ本当に冬暖かい家は出来ない、それをわかっているので我々はそうじゃないことを一所懸命やっているわけなんです。

ページトップに戻る