住宅不動産業界 トップインタビュー〜住宅不動産業における優れた経営品質を追う〜

変革の時代を迎える住宅不動産産業界において、自社の持続的な成長を実現しながら地域社会に貢献する企業となるために、経営者はどのように考えどのような活動方針を持って経営に取り組むべきか。

住宅・不動産業界 成長戦略

地域密着+顧客密着で「住まいと暮らしのファーストコールカンパニー」を目指す 栃木県・マルワホールディングス

マルワホールディングス株式会社
代表取締役 兼 CEO 大森 克則 様

10年連続、栃木商圏でナンバーワン着工数を続けるマルワホールディングス。栃木市内の着工数シェアは一時期では20%、現在でも16%となっています。大森社長が27歳で社長に就いて初めに決めたことは、「栃木市に根付いて栃木市の住まいと暮らしという事を全てワンストップでできる」企業となることでした。エリアを拡げて棟数を増やすのではなくて、シェアを20%にしよう15%にしようと15年前から考えてやってきた同社。さらに「住まいと暮らしのファーストコールカンパニー」になることを目指し、家づくりといったらまず一番に選ばれる企業、まず一番に電話してもらえる企業、まず一番に来てもらえる企業であり続けるために日々活動をされています。
その活動の原動力や実践についてマルワホールディングス・大森社長にお話を伺いました。

地元でトップランカーになる、密着する、そこでシェアを取る。その方針の原点は?

地元を元気にしたいなんて言っていますが、実は私は根っからの地元民じゃないんです。中学校3年生の時に周辺の町から引っ越してきたんですよ。で、この地で住宅屋は3代目なんです。うちのおじいちゃんというのは元々不動産開発、分譲とかをやってたんです。で、そのおじちゃんは人一杯集めて人を喜ばせるのが好きだったんです。そういうのは結構似ているのかもしれないですね。
なので、経営的に市場シェアをどうこうしたいと言う前に、まず地元の人を喜ばせて元気にしたい、まず地元で有名になりたい、この場所だけでどれだけの多くの人と付き合いたい、動機は単純にそれだけです。その思いで色々やってきました。丸和住宅のキャッチコピー「全てお客様に喜んでもらえる、それが私たちのプライドです」というのは、実は当時の社員全員で考えたんです。なぜ人を多く集めてイベントをやるのか、それはお客様に喜んでもらうためにやるんだよ、喜んでもらいたいからこういう事をやろう。このキャッチコピーを社員全員で頭に入れてこれまでやってきました。

今は働き方改革とか何とかいろいろあってイベント開催自体は少なくしていますけど、これまでは本当に徹底してやってきました。初めはOB顧客向けに、そのうちその友人にもとなりだんだん開催規模も大きくして餅つきやC級グルメ大会をしたり、サッカー大会への協賛もしたりしました。本当に地元の色んな所でやってきました。サッカーは、今はもうやめましたけど、当時J3のチームのスポンサーとして公式戦を公共施設の総合運動公園でしたいって市役所に談判してOKもらったんですよ。J3時代に300人位しか観客を呼べないチームの試合に、うちは1,500人くらい集めちゃいました。我ながら自社のパワーは凄いと思いました。この話もそうですけど、地域を経済的に活性化させようとか、雇用を生み出すことに自分の本業を通じてなんかもっと貢献したいという思いがあるんです。

1年に一つの経営テーマ。コツコツと着実に多角化を進める

27歳で社長になってから必ず1年にひとつ会社の活動テーマを創ってきました。「ひとつ」としているのは正直いくつもできないから。例えば社長になった当初、丸和住宅のデザイン性はあまりお褒めいただけなかったんですね。で、シンプルに「それを脱却したい」、「そのためにはデザインを」ということを考える。そんな発想で今年はこの街並みを創ろうとか、来年は性能に特化しようとかを掲げるわけです。

その中のひとつに「脱・分譲」というテーマがありました。引き継いだ当時、分譲地とそこでの「建売」と「売り建て」販売でほぼ100%だったんですよ。一般の住宅の請負は年間に1棟くらい、規模でいうと60棟くらいでした。そうすると土地の仕入れが失敗すれば数字がほぼわかるし、当然借り入れの返済リスクもあるじゃないですか。で、「脱・分譲」をテーマにして50%:50%にしようということにしたんです。やっと今50%が見えつつあります。まぁ、実は50%:50%に近づいてもおかげさまで全体の棟数も伸びてきているので脱・分譲が完了したとは言えませんけど。
「脱・分譲」を掲げた別の問題として栃木市全体で持ち家の住宅供給が過剰気味ということもあります。栃木市で「地の利」ができたのでどんどん土地の情報も来る訳ですよ、買ってくれって。やっぱりいい土地は買いたい、となるわけですけど、当たり前ですが買えば市場全体が過剰気味の中で在庫を持つことになります。そこで「戸建賃貸」という事業を1年前から導入して、その土地を投資家の人に売って戸建賃貸を建てるとか、またはそもそも地主さんに建ててもらう、という新しい選択を提案できる。それが「脱・分譲」の一つとして戸建賃貸の武器を持った理由なんですね。

新展開。地元密着だからこそできた連携と拡大

先ほども言いましたが、栃木市全体で持ち家の住宅供給が過剰気味であるので、これまでのやり方とは別のやり方をするか、もしくは栃木市外の市場出て行くことを考えなくてはいけません。
当初考えていたのはわざと田舎の方に出すという戦略でした。栃木以外でさらに人口が集中する場所に出すのは結局競争が激しいと思っていました。でも、大きな壁がありました。人が集まらないんです。結局働く人も「地元」に勤めたい、もっと言えば地元の大手に勤めたい。そういうことで宇都宮への自社展開を着手していますが、それとは別な展開もしています。宇都宮でトップクラスの地場企業との業務提携です。脱・分譲とは言いましたが、一方で土地情報の獲得は重要です。でも土地勘もないし中々仕入れられない。これは偶然でしたが、同じ事業を別の地域でやっていても違うこともあるんです。例えば決算期の違いからくる閑散期繁忙期の違いや、現場の進め方、市場の大きいのは地元での用地情報ルートなどは違います。それをお互いに活かしあって丸和住宅と先方の土地建物を共同販売しようということになったんです。やってみると閑散繁忙期の違いで、お互いにパワーを融通できるとか、工事ノウハウなどを実際の現場で交換することで双方ともスキルが上がっていくなどメリットも現れ始めています。

もう一つ、地元で「別の市場」を獲得するという点でも地元密着、さらに自分の得意市場で徹底してきたからこそチャンスをもらえました。それが第一住宅の事業です。3年前に第一住宅という会社を買収したんですが、栃木市でいうと高級住宅の第一住宅、ローコストの丸和住宅と言われていたくらい、全く別の顧客を相手にしていた会社でした。地元で別市場を対象に「棲みわけ」をしていたわけですが、ある時期、第一さんの状況が変わった際に、本来であれば地元の住宅会社には売りたくなかったんでしょうけど、この小さい町の協会活動などで一緒になっている中で相談を受け、買収させていただきました。
買った際には丸和住宅で新たに高級ブランドを創って従来の丸和とは別ブランドでやっていこうという考えもあったんですけど、一つ屋根の下で新しいブランドを立ち上げても無理があるかなと思って第一住宅の屋号はそのままで高価格路線を担ってもらっています。

新展開をさらに進めるための新たな取組。人材育成と組織強化

地域展開とか新市場・新領域への事業拡大を進めている中で、経営者として一番時間を使っているのが「考えてる時間」ですね。考えていることは「人」、「人のこと」です。従業員の配置とか組織、だいたい毎日これはこのほうがいいのかなとか、仕事が流れやすいのかなとかを考えています。でも成績を上げるための組織じゃないですよ。もちろんそれも一つありますけれども、仕事が効率的に進むための組織を結構考えてますね。
もう一つ最近考えてることが「いい教えをできるか」ということです。結局この業界にいる人はほとんどパワーが強い人たちが多いんです、自分は出来るっていう自信家が。でも、自信がありすぎて、例えば部下や業者さんに仕事を押し付けるような振る舞いが出ることもある。もちろんその人たちは力があって仕事も結果を出せるわけだけど、でもそればかりじゃ下がついていかない。こんなことって、人の数がいなきゃ全然考えなくていいことなんですけど、現実には人数が多くいるわけで、ああした方がいいとかこうした方がいいって考えちゃう。これは組織を大きくしていく時のリーダーとしては必ず考えないといけないっていうか、皆考えることだと思います。

組織をどうしたいか、という他にもう一つ考えるのは社員の力です。色んな人と話してるけど「あー出来ないよな、ああじゃないよな」って社員に対して愚痴もこぼす社長がいるけど、それは社長が悪いんだよ、って思う。実は自分も業績を伸ばさなきゃいけないってことで結局全部やってきてしまった訳ですよ。中でも本当はやってもらわなきゃいけなかったのに自分がやっちゃってきたことは考える事というか企画する事。その結果、業績は出せるパワーをつけたけど、自ら創意工夫するのが得意でない人材にしてしまった。
だから「この先」のことを考えてます。皆、外に出して一から色んな事を「考える」ように仕向けています。各部の会社の専門性を高めて、責任感を高める、その成長が狙いです。もう極端な話、今度は別の会社を一つ自分たちで創れというくらいの話です。これはグループ会社も多くなり規模が大きくなったからできること。更なる成長も求めない、更なる変化も求めないという雰囲気を変え、これじゃちょっとやばいなという雰囲気を当たり前にする。マルワの更なる成長をする為の取り組みです。

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