コラム:贈与税 /創刊号 2009/7

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~住宅資金贈与500万円非課税枠は使われるか?~

ハイアス・アンド・カンパニー(株)取締役常務執行役員 川瀬 太志

今回は、新しく500万円の非課税枠が出来た「贈与税」についてです。
住宅購入の頭金をご両親に出してもらうにはとてもよい制度だと思うのですが…。
いつも参考にしている新聞の日曜版の「マネー生活」で「贈与税」についての特集記事がありました。

『贈与税、住宅購入で新非課税枠』『景気対策の一環として、贈与税に新たな非課税枠が創設された。住宅の新築・購入や増改築に充てる場合に限って親や祖父母などからもらったお金について年間500万円まで、贈与税が時限的(2010年12月末まで)にゼロとなる。20歳以上の人が家を買ったり建てたり、増改築するためのお金を親や祖父母からもらったときに使える。既存の非課税枠(年間110万円まで)との併用もできるので、年間610万円まで贈与税はかからない。』

今回の500万円の贈与非課税枠の狙いは、比較的資産を持っている親世代から資産がない子世代への資産移転を円滑に進めて、かつ住宅需要を刺激して景気対策にもしよう、というものです。「過去最大の住宅ローン減税」とともに住宅取得促進の目玉的制度として位置づけているようです。
さて、効果はあるんでしょうか?

「500万円非課税枠」、効果がないと言われる2つの理由とは?

この500万円贈与非課税枠、専門家の方などに話を聞きましても、「それほど効果はないのではないか」という声が多いようです。
その理由は大きく2つ。まずひとつは、そもそも住宅購入ニーズは冷え込んでおり、こんな経済環境では何をやってもダメだろうという声。もうひとつは、「相続時精算課税制度だってあまり使われていないではないか」
という声です。
これには説明が要りますね。贈与税には、「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2つの方式があります。
まず、「暦年課税制度」は、一年間でもらったお金の110万円を超える部分に税金がかかる制度。つまり基礎控除額の110万円までの贈与なら非課税になります。
もうひとつの「相続時精算課税制度」は、贈与財産にかかる贈与税の支払いを繰り延べて、相続が発生した時に合算して相続税で課税する制度。この制度には「住宅資金の特例」がありまして、住宅取得資金の場合には3,500万円までは贈与税がかかりません(2009年末まで)。親の死亡時にその贈与分を相続財産に加えて相続税額を計算します。
つまり、財産が少なくてそもそも相続税がかからない人にとっては、実質的に非課税で贈与ができることになるわけです。
この相続時精算課税制度も住宅需要の刺激策として平成15年に導入されました。でも、実はそれほど利用されていないんです。だから、この実質贈与非課税に近い制度があまり使われていないのだから、今回の500万円非課税枠も効果がないのではないかという話です。

とにかくわかりにくかった相続時精算課税制度

私は、今回の500万円の非課税枠は結構いいんじゃないかなと思っています。
私、よく住宅購入セミナーや住宅ローン相談をやっているんですが、住宅を買いたいと思っている人たちは決して少なくないと感じています。ただ、その中でも将来が不安で、ローンが不安で、頭金がなくて…、今は時期じゃない、どうも踏み切れない、と思っている方たちが非常に多くいらっしゃいます。そういう方たちがこの非課税枠を使うんじゃないかな、というのがひとつ。
じゃ、なんで「相続時精算課税制度を使わないの?」という話ですね。その理由はいろいろあるんですが…一番は「わかりにくいから」じゃないかと思います。
この相続時精算課税制度、とても制度がややこしい。それに本質的には、課税の繰り延べだから「非課税」というイメージがしないので、得するのかどうなのかよくわからない。住宅促進のための制度なのに、わかりにくいものだから相続時精算課税制度のことを正しく説明できない住宅営業マンも少なくないと思います。
その点、今回の500万円非課税はわかりやすい。暦年課税制度や相続時精算課税制度との併用もできるので使い勝手もいいですね。
「親に頭金を出してもらっても500万円までなら非課税!」
これなら私でも説明できます。わかりやすさって大切ですね。

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