コンサルティングの現場から「住宅不動産売買仲介業の事例」 /2号 2009/9

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「お客様は良い物件がないから買わない」のではなかった

売買仲介部門の生産性を1.5倍にしたい!

「この結果には大満足です。今まで決め手がなくて中長期案件になっていた案件が決まったり、まだ先と言っていた案件が動き出したりしました。スキル不足で契約が取れなかった若手メンバーが3件も決めました。成果が出始めたことで皆の意識が前向きになっています。組織の雰囲気がとてもよくなってきましたよ。」
売買仲介営業担当向けの決定力強化のための集中コンサルティングプログラムが終了した後の社長の言葉です。
4か月前、首都圏某市にて住宅売買仲介をメインとして不動産事業を営む社員60名の中堅不動産会社の社長は悩んでいました。
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社長の関心事は売買部門(3店舗、営業担当15名)のテコ入れ。
首都圏でも人気のエリアに位置しているため、この不況下でもある程度の新規来店はあるもののお客様は慎重になっており、市況の軟化もあって検討期間は長期化、契約数は停滞していました。
この会社の売買部門の現状の月次の仲介報酬は平均で2,000万円前後。この水準では月次損益はトントンです。社長の最終目標は仲介報酬を月次3,000万円レベルにすることでした。生産性でいうと1.5倍。営業担当一人あたりに換算すると月平均200万円です。このエリアの平均的な仲介物件の金額は4,000万円~5,000万円ですから、件数にすると1人あたり月2件の契約が目標になります。
リーダークラスのメンバーが毎月4~5件を上げて部門売り上げを引っ張っていましたが、約半数を占める若いメンバーは契約なしの月が続くこともあり、数字が安定しません。社長は営業担当社員全員の見込み客対応スキルを早急に向上させなければならないという強い危機感がありました。

「現状把握」営業効率が大きく低下していた

社長と相談を重ね、「決定力の強化」をテーマに売買部門15名に向けてコンサルティングを開始。
まず、今の手持ち案件の現状をざっと確認すると、初回接触から3カ月以上経過している中期案件が非常に多くありました。契約案件で見ても平均リードタイムは3カ月ほど。以前は約1.5カ月だったので倍の時間がかかるようになっていました。物件情報量に勝る大手仲介会社に負けることも多く、エリア全体で供給物件数が減ってきている中、決定率の低下とリードタイムの長期化で当社の営業効率は著しく低下していました。
「案件レビュープログラム」(=顧客状況と接触履歴から契約までのシナリオを設計すること)で追客中の案件について確認すると、メンバーは口をそろえてこう言いました。「いくつか物件を案内するが、その都度いろいろなご要望を頂きなかなか決まらない。」
つまり「よい物件が出れば買う」という、いわゆる「物件待ち」の状態にある案件がほとんどでした。人気のあるエリアであり確かに良い物件は動きが早い。お客様が決められないまま何ヶ月も時間が経過してしまう。
こういう場合の多くが、その内に他社で決まるか連絡が取れなくなってしまい、結果として「没案件」になっていました。

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