米国不動産エージェントの役割

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はじめに

平成24年11月9日(金)~12日(月) に、NAR(全米リアルター協会)の全国大会であるREALTORS CONFERENCE & EXPO が米国フロリダ州オーランドのコンベンションセンターで開催されました。

弊社では圧倒的な流通量を誇る米国の不動産流通市場について調査・研究していますが、今回の視察の中で、カリフォルニア州トーランスで活躍する日系の不動産購入・売却専門エージェントDEAI K. Jay 氏と出会い、各種情報交換させていただく中で、日本の不動産業界・エージェントとして参考になるポイントを伺いましたので、その内容についてレポートします。

カリフォルニア州ロサンゼルス近郊の不動産市況米国の不動産価格は、1996年に底を打った後上昇を続け、ほとんどの物件が2006年にピークを迎え約2倍の価格になりました。その後、サブプライムローン問題に端を発するリーマンショック等の影響を受け、現在では平均価格が半分まで下がっているそうです。DEAI氏が活動するサウスベイエリアでは比較的影響が小さく、価格が下落したものの、平均すると25%の下落で推移しています。その理由は、ロサンゼルス国際空港やポートオブLA など有数の貿易港があるため、絶えずこのエリアが活性化し、不動産需要が継続しているからとのことです。これは不動産価格が下落幅を抑制できている事例ではありますが、ロケーションや雇用の創出・人口の流入が住宅価格に与える影響を確認できます。

米国不動産流通のトレンド(ショートセール)

最近は、ショートセールという方法で住宅ローン債務者が銀行に債権放棄を要請して不動産を手放す方が増えています。このショートセールとは、現在の市場価格で売却しても、物件に付いている債務(住宅ローン、固定資産税など)や売却諸費用(クロージングコスト、仲介手数料等)を完済できない状態(債務超過)で売却を行うことを指します。

例えば、3 年前に50 万ドルの物件を45万ドルのローンで購入し、現在の価格相場が40 万ドルに下がってしまったとします。この場合、売却益でローン残高の返済と売却諸費用を払うことが出来ません。売却価格が購入価格より低くても、ローン残高を完済できる純資産(エクイティー)を持っていればショートセールにはなりませんが、売却価格が40万ドルで債務が39万ドルのように差額がギリギリの場合などで、ローン返済が滞ってしまうような方は、売却諸費用を準備できなければショートセールを検討せざるを得なくなります。

ショートセールの決定権はすべて債権者の銀行が持ちますので、オファーを入れてから返答まで半年以上待たされるのは当たり前でした。しかし、近年の規制緩和により、2〜3ヶ月で結果が出るようになり、銀行も差押えなどにより被害が拡大する前に決済する流れが主流となり、現在では活用が進んでいるそうです。この背景には住宅バブルの当時、モーゲージブローカーの斡旋により、銀行の甘い審査基準(頭金とクレジットスコアの確認のみで収入証明不要)を逆手に取った住宅ローン貸し付けが横行していたことがあり、その負の遺産を清算しているといえます。

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