ハイアス総研report

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一向にストック化しない住宅投資

「住宅資産の価値の劣化・毀損をいかにして防ぐか」

これは、当社が設立時から追求し続けているテーマです。住宅資産が、現金や債権といった金融資産に比べ、流動性(換金性)の面で劣るのは、どの国でも当たり前のこと。しかし、取得・建設後に、急速にその資産価値が劣化するのは日本特有の現象です。

モノを大切にするといわれる我々日本人ですが、家・住宅については、「やはり家を買うなら新築じゃなくっちゃ」「古くなったところをあちこち直すくらいならいっそのこと建て直した方が良いな」といった考え方をされる方が多くいらっしゃいます。いわば新築神話のようなものが脈々と受け継がれ、30年も経たずに建て替えに至るケースが多い……皆さんご承知の通りです。

現在、日本の国富の中で、住宅資産は約1,000兆円あり、その内訳は、土地3(750兆円)に対して建物1(250兆円)といわれます。「居住したり事業を営んだりするなど、利用価値があって、初めて不動産には資産価値が生じる」と考えるのが一般的で、概ね「土地:建物=1:3」ぐらいの比率を示す欧米とは対照的です。

そして国民経済計算によれば、250兆円という国内の住宅建物の資産水準は、10年以上にわたってほぼ横ばいの状態が続いています。1990年代後半の30兆円近い金額に比べ、その水準は大きく低下しているものの、今なお10兆円を超えるお金が、住宅に毎年継続的に投資されています。にも拘わらず、ストックが全く増えないのは、それと同額の価値が毀損・減失しているからに他なりません。

転勤・転職や家庭の事情などによって、持家を手放さざるを得なくなった人にとっては、実に深刻です。日本においては、ローン支払いによる残債(元金)の減少スピードより、取得した住宅資産価値の劣化スピードの方が遙かに速く、家を手放しても、結果的に大きな借金が残ってしまうケース(いわゆる債務超過)が珍しくありません。固有の土地や家にこだわり過ぎることなく、ライフスタイルやライフステージ、家族の規模や形に応じて住み替えたいと考える層にとっても不都合この上ありません。

住宅のように誰もが必要とする実物資産を、投機の対象にすべきではありませんが、それぞれの物件が本来有している価値に見合った価格がつくことは、今後の経済活性化を考える上でも、重要な要件の一つといえるでしょう。

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