週刊住宅新聞-平成24年8月27日(月)

工期短縮、差別化に成功

新築住宅における省エネ対策は、もはや地域密着型の住宅会社にとっても必須のテーマとなった。ハイアス・アンド・カンパニー(東京都港区、濵村聖一社長)と司コーポレーション(群馬県沼田市、松井健司社長)が共同で全国展開する基礎断熱工法「タイト・モールド工法」が注目を浴びている。岩手県全域で注文住宅を手掛けるサトコンホーム(岩手県岩手郡滝沢村、佐藤重幸社長)は、3年前にタイト・モールドを導入。高気密・高断熱の躯体と、自社オリジナルの炭を使った壁体内通気構造と併せた差別化対策が奏功。受注棟数増加、受注棟単価もアップするなど、効果が顕著に現れた。佐藤社長に、タイト・モールド工法導入の効果について聞いた。

-タイト・モールド導入のきっかけは

「東北はどうしても多くの工事が長くなってしまうため、短期化できる方法がないかと探していたところ、司コーポレーションからのDMが目に留まった。工期短縮、他社との差別化、提案力強化の視点から、導入を決めた。それから3年ほど経つが、導入理由に挙げた3点についても効果を実感している」

-実感している効果を教えてください

「当社のベタ基礎構造は通常のものでも配筋を多くしており、普通のものでも工期が長くなっている。それが、タイト・モールドを導入したことによって工期は1~2週間ぐらい短くなった。基礎を内と外から断熱材で挟むダブル断熱と、150ミリ厚のコンクリート打設により結露やシロアリといった住宅への悪影響も避けられる。工期短縮と性能向上を両立できた。導入してから3年間で約30棟を手掛けた。点検などで施主を訪問しても、快適さはまったく損なわれずに継続しており、大変喜ばれている。光熱費についても年間1万円ほど安くなっているようだ」

受注棟数が1.5倍に 1棟単価も大きく上昇


-受注への影響はありましたか

「他社との競合もほとんどなくなった。一般的には基礎打設で見学会をすることなどないが、タイト・モールドは構造も説明しやすいため、基礎打設の時点で顧客を集めて見学会を実施することが多い。こうすると、お客さまへの説得力が違う。中には他社に手付金を払っていたのに、当社に切り替えてくれたお客さまもいる」

「導入前までは、年間の受注棟数は13~15棟だったが、この2年ほど受注棟数が20棟前後にまで増えた。お客さまも価格だけではなく、『重要なところにはきちんとお金をかけて長期に住み継ぐ』という考え方を持って総合的に住宅を検討する人が増えた。そのため、1棟当たりの受注単価も1500万円~1800万円程度だったのが、2000万円前後から3000万円まで上昇した。営業マン2人で年間20棟を販売し、年商もそれまで難しかった4億円を超えた」

-御社はFP工法(FPコーポレーションが展開する高気密・高断熱工法)と、独自の炭を使った壁体内通気システムを採用していますね

「FP工法に取り組んで20年、これまでコンスタントに受注できていたかというと、決してそうではないが、タイト・モールドを導入してからコンスタントに売れるようになってきた。当社オリジナルの炭を使った壁体内通気システムも、タイト・モールドと同時期に導入した。これは、床下や壁の中に岩手産のナラ炭を詰めた袋をいれることで調湿・消臭など、室内の空気清浄効果を狙ったもの。1棟当たり25万円程度でできる。基礎断熱自体は他社でも導入しており、差別化にはならない。基礎内外のダブル断熱であるタイト・モールドと、高断熱のFP工法、空気をきれいにする炭の通気システムが上手にかみ合って、相乗効果を生んでいる」

「タイト・モールド」とは?

一度の打設で起訴工事完了 防蟻と断熱処理も解決

住宅の省エネを考えた場合、基礎断熱は効果的な手法として考えられている。ただ、基礎断熱はシロアリ対策や耐震性などの面で課題もある。そうした課題を解決するために司コーポレーション(群馬県)が開発したのが、基礎断熱工法「タイト・モールド」だ。

型枠そのものを断熱材でつくり、そこにコンクリートを打設する。従来の鋼製型枠を使った基礎工法では打設後に型枠を取り外す作業が必要だったが、それを省く。また、浮かし型枠を簡単に設置できるため、立ち上がりコンクリートと耐圧盤を一度に打設できる。そのため、一般的なベタ基礎できるコンクリートの継ぎ目もなくなり、耐震性を耐久性が向上、雨水やシロアリの侵入も防ぐ。

■群馬県外から問い合わせが殺到、ハイアスのネットワークで全国展開

群馬県内を中心に展開していたが、県外からも問い合わせが殺到。1棟分を群馬から現場に搬入する体制だったため、運搬コストがかかってしまい、県外からの注文には応えられない悩みもあった。そうしたなか、注文住宅ネットワーク「R+House(アールプラスハウス)」で採用する基礎断熱工法を探していたハイアス・アンド・カンパニーが着目。ハイアスが持つ工務店や不動産業者のネットワークを通じて全国展開を図ることになった。

■基礎打設と基礎断熱を同時に施工

一般的な基礎工事は、鋼製型枠を設置してコンクリートを打設し、その後型枠を取り外す。一方、タイト・モールド工法の場合は、50ミリ厚のESP(発泡スチロール)でできた型枠を使う。コンクリートを打設したあとはそのまま断熱材として使用できる。つまり、基礎打ちと基礎断熱を同時に終えることができる。断熱材でコンクリートを挟む構造になるため、断熱性能も高まる。

ハイアスによると、型枠の解体が必要でないため一般的な構成型枠を使った基礎打ちに比べて工期が約12日短縮できる。

型枠は基礎伏せ図に合わせて工場でユニットを組み立て、施工代理店の納品、現場に搬入する。断熱材にホウ酸を混ぜることで工場生産の時点ですでに防蟻処理も済んでいる。さらに、断熱材の上部にアルミ製の防蟻笠木を取り付けて万全を期す。

ユニット式のため、現場での作業効率も向上。作業員が4~5人いれば型枠設置からコンクリート打設までわずか2日で完了する。「天候に左右されることもないので、住宅会社は工程管理もしやすい」(ハイアス)

基礎工事と断熱性向上、防蟻という「一石三鳥」の新工法だ。「基礎打ち、断熱、防蟻をそれぞれ別に行う場合に比べてもコストメリットがある」(ハイアス)。型枠の素材も発泡スチロールなので軽量で搬入しやすく、大きなトラックが入り込めない狭小道路に面した敷地でも楽に搬入できる。

■基礎打設の見学会で工務店の差別化に

実際に導入した工務店からは、「仕組みが分かりやすいため、通常は行わない基礎打設の見学会を行って顧客に説明すると、とても関心を持ってくれる。受注のための差別化として効果を発揮してくれている」と高い評価を得ている。

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