コンサルティングの現場から「住宅不動産売買仲介業の事例」 /2号 2009/9

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課題は「会社の仕入れ力?」

営業担当に聞くと「課題は会社の物件仕入れ力」と言います。
「良い売り物件がないから決まらないのだ。」と。
例えば、典型的な事例はこういった案件です。お客様とヒアリング。たしかに年収も頭金も十分にあって、ローンも問題なさそうな水準。そこに「4,500万円」の良い物件が出たのでご案内。

営業担当は、すぐ売れそうな良い物件だったので購入をプッシュするが、お客様にとっては想定している予算をオーバーしているのですぐに決めることができない。
人気のあるエリアであり良い物件は動きが早い。迷っている内に他から「買い」が入ってしまい買えなくなる。
お客様は残念がるが「ゆっくり探しますから。」となり、「物件待ち」状態の中長期案件になる。

こういう案件の場合、確かに良質な売り物件がなければ決まらないという側面はあります。しかし、より掘り下げて現状分析を行っていく内に、私たちは本質的な課題は明らかに別のところにあることを確信しました。こういう「物件待ち」になってしまうのは決して物件がないからだけではないことに気づいたのです。

本当の課題は「お客様とのコンセンサス不足」

決まらない案件は、「物件価格」と「お客様の想定予算」のミスマッチが起きています。実は営業担当は、「そのお客様の予算ではお客様が希望するグレードの物件は厳しい」ということはわかっています。そこで営業担当は、予算にあったグレードの低い物件を案内し、これ上以だと予算を超える旨を説得し、妥協して購入することを迫るか、予算を超えてもお客様の希望するグレードの高い物件を案内し、予算の引き上げを狙います。
今、お客様は慎重になっているので本当はもっと予算を上げられたとしても簡単には予算を上げません。自分の予算のレンジまで「値引きして欲しい」と譲りません。
つまり、お客様と「正しい予算」の共有ができていないのです。「この価格帯でこのグレードの物件が出たら買い」という固いコンセンサスを得ていないままに物件を見せ続けているのです。

案件レビューで「このお客様にとっての『譲れないニーズ』と『本当の予算』がどこにあるのか?」と営業担当に聞いても曖昧な答えしか返ってきません。見込み案件の「案件カード」のお客様情報の記入が少ないので聞くと、「お客様がアンケートを書いてくれないから…」と言うのです。

お客様から聞いた希望予算しか書いていない。
年収は書いてあるが勤務先は書いていない。
家族構成は書いてあるが年齢が書いていない。
などなど…。

最初の面談時間は30分もかけず、希望条件をざっと聞いてすぐに物件案内をしている様子がうかがえます。お客様の客観情報がなければ私たちも案件レビューはできません。
私たちは対策を講じました。
これが3カ月後、営業現場が劇的に変わるはじまりだったのです。

※その劇的な成果については、次号ご紹介いたします。(川瀬)
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