コラム:ホントの不景気はこれから? /2号 2009/9

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~2009年6月景況感調査より~

ハイアス・アンド・カンパニー(株)取締役常務執行役員 川瀬 太志

「いよいよ本格的な不景気に突入するのでは?」と感じるような調査が先月発表されました。
日本銀行が四半期ごとに出している「生活意識に関するアンケート調査」という景況感に関する調査があります。以下はその最新版である2009年6月調査の結果です。
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「今は景気が悪い」((4)+(5))という回答が「89.5%」です。およそ9割の人が不景気を実感していることになります。
実は、1年半前の2006年12月調査から「景気が悪い」と答えている人はずっと約9割程度います。この不況感はもう皆が感じていることですよね。

「なぜ不景気だと思うのですか?」

興味深いのは、「景気判断の根拠」について尋ねたデータです。
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1位と2位が僅差ですね。自分の収入が減ったり、会社の経営状況を見たりして、今は景気が悪いと感じている人が多いことがわかります。
この調査を見て、いよいよ本格的に不景気が加速するのではないか、と感じました。消費はしばらく相当冷え込むかもしれません。

不況感は「イメージ」から「実感」へ

というのは、この「景気判断の根拠」の調査結果の推移を見ますと…実は「マスコミの報道を通じて」が前回(2009年3月調査)までずっとトップだったのです。
さかのぼりますと、昨年、2008年6月調査で、「マスコミ報道」が35%でトップに立ちます。ちょうど、原油高騰のニュースが毎日毎日報道されていた頃ですよね。その次の、2008年9月調査でも、12月調査でも「マスコミ報道」がトップ。そして前回の2009年3月調査では、「マスコミ報道」がなんと「49.9%」で過去最高のダントツでした。
もともと景況感が変化し始める段階では、マスコミ報道がその判断の根拠となりがちです。2008年6月の「原油高騰」から、秋には「リーマンショック」、冬には「派遣村」から「雇用問題」…。この1年というもの常に景気悪化を伝えるマスコミの報道がなされていました。それらの報道を見て皆が「不景気なんだろうな~」と感じていたのです。
ただ実態は、「景気が悪い」という報道が流れ始めても多くの人は収入がすぐに減っているわけではありません。だから心理的には不景気を感じたとしてもそれはまだ「イメージ」の世界であって、「実感」はまだなかったのではないでしょうか。
でも、今回の6月調査ではついに、自分の収入を見て、多くの人が「ゲゲッ!こりゃホントに不景気だな~」と感じ始めたという結果になりました。おそらくその主な要因は、この夏の「ボーナスの減少」だと思います。この「収入が減った…」という実感は家計の引き締めに大きな影響を与えるのではないかと心配になります。
ここはひとつ、影響力のあるマスコミに心理面で消費者が委縮しないように「先行きが明るくなってきたよ!」というニュースを積極的に取り上げてもらいたいものですね。ウソでもいいから…。

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