第1回リライフクラブ全国大会(特別講演より抜粋)

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特別講演(1) ドイツの環境先進住宅モデル

環境ジャーナリスト 村上敦氏

 講師の村上氏はドイツで環境首都と呼ばれ、環境分野で先行した取り組みを行っている都市フライブルクに在住される環境ジャーナリストです。日本でのゼネコン勤務で環境問題を意識し、1997年フライブルクへ留学。フライブルク地方市役所・建設局に勤務の後、フリーライターとしてドイツの環境施策を日本に情報発信されています。
 今回の特別講演では、ストックとして価値のある住宅とはどのようなものなのか、ドイツの事例を参考にしながら、今後目指す方向性を伺いました。

 省エネ時代に重要なことは、まず環境性能です。ドイツでは国が計画的に性能基準を設定しています。
 具体的にはそれぞれの住宅において、暖房などにかかるエネルギーの燃費量を省エネ政令という形で排出量を規定し、使用されるエネルギー量に制限をかけています。

 1984年に施行された時点の基準義務値は1軒あたり燃費20~30㍑という値でしたが、数年ごとに段階を踏みながら、2012年の政令改正ではその約10分の1、わずか3㍑にまで厳格化されます。これは化石・原子力エネルギーをほぼ必要としないで快適な居住空間の冷暖房費が賄えるレベルであり、この基準を満たせない新築住宅を建てることは法的に許されない、ということです。イギリスやデンマークなど他のEU加盟国でも、2012~2015年頃を目処にこのレベルが義務化される予定です。

 日本ではまだここまで厳格な規定はありませんが、近い将来導入される方向にあることは間違いありません。EU加盟国ほど厳格ではなくても、例えば現在の長期優良住宅に近い性能基準が義務化される時期は遠くないのではないでしょうか。

特別講演(2) アメリカにおける住宅供給の仕組み ~価値の下がらない家~

特定非営利活動法人住宅生産性研究会 戸谷英世氏

 戸谷先生は1962年に建設省に入省され、建築基準法や建築士法の施行、ツーバイフォーの導入に尽力されました。
 1995年に住宅生産性研究会を設立し、全米ホームビルダー協会(NAHB)と相互協力協定を締結。国民が家計支出の範囲で資産形成できる住宅が取得できるよう、欧米の先進住宅産業技術の技術移転により、工務店の体質改善に取り組んでおられます。

 今回はその取組みの中で、米国における住宅資産価値を維持向上させる方策について講演頂きました。
米国の住宅資産価値は、住宅バブル期間の乱高下を除くと毎年6~7%ずつ上昇しています。ここでいう住宅資産価値は住宅市場の需給関係で決まり、最終的にはその住宅を中古流通市場で売却する際の価格と一致します。つまり、住宅取得希望者が将来高い金額を払ってでも欲しくなる住宅を建築し、維持し続けることが重要なのです。

 そのポイントを整理しますと、まず建築時においては、家の価値(性能・耐久性)とコストのバランスが適正なレベルで取れていることです。米国の建築価格は日本と比較して安価であり、これはコンストラクションマネジメント(現場生産性の向上や部材流通ロスの低減等)の徹底によるものです。

 次に、リモデリングによる機能回復と価値の向上が継続して行われることです。米国ではリモデリングされた住宅はその度合いに応じて資産価値に反映されるため、住宅への追加投資が積極的に行われています。
最後に、住宅資産価値を決定するもう一つの要因はロケーションです。
 すなわち住宅地として経営され、適切な管理(住宅地経営管理)がなされていることです。一定のルールの下で経営された住宅地は、街の成熟に伴い交通機関や店舗が充実され、売却時には+αの評価として高額で取引されています。

 今後の住宅不動産業界は、米国の事例に倣い、高性能・高耐久・低コストの住宅を適正な仕組みで流通させることが重要になります。そしてこれこそが住宅産業の次世代のビジネスモデルにつながるでしょう。

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