縮小するマーケットでの経営戦略とは?

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住宅と不動産の「業際化」に取り組む企業の事例

住宅市場の減少は約4割、業者サイドの戦略は?

持家マーケットは長い落ち込みの時期を経てようやく持ち直しつつあるようです。
2010月3月30日発表の「建築着工統計報告」(国土交通省) によると、2010年2月は「持ち家」が20,867戸(前年同期比2.9%増)で4カ月連続の増加、「分譲戸建」も8,328戸(同23.5%増)で2カ月連続の増加となりました。ただ、この持ち直しも2008年9月のリーマンショック以降の急激な市場の冷え込みに対する反動である側面が強く、少子化時代を迎えた今、中期的には住宅マーケットの縮小は不可避と言えます。

近年の住宅着工100万戸時代を支えた団塊ジュニア世代は一年齢平均200万人だったのに対し、10年後の住宅マーケットを担う今の20代前半の世代は一年齢120万人ほどしかいません。単純に考えると一次取得者の市場は4割ほど縮小することになります。

一般的に縮小マーケットにおいては当然業者の淘汰が起きます。廃業、倒産だけではなく、規模を縮小して下請け化やM&Aなどが頻繁に行われることになるでしょう。そんな環境下での住宅会社や不動産会社の今後の戦略はどうなっていくのでしょうか。

ひとつの方向性は「業態の垣根がなくなる(業際化)」ということが予測されます。エンドユーザーからの目線で言えば、「住宅会社」、「分譲会社」、「不動産仲介会社」といった業態が細分化されている状態はわかりにくく、利便性に欠けます。今や各業界でおきている「ワンストップサービス化」(一カ所であらゆるサービスが受けられること)が住宅・不動産業界でも起きてくるでしょう。実際、将来を見据えたそのような動きが活発化してきています。

「業際化」、不動産会社A社と住宅会社B社の場合

私どもの会社がご支援させていただいている2社の事例です。
賃貸住宅仲介から賃貸管理までを手掛ける「不動産管理会社:A社」は中古住宅や土地の売買仲介部門を設立。賃貸入居者を「自社の将来的な顧客資産」と捉え住宅仲介事業を伸ばしています。A社社長は「来年には注文建築ができる住宅会社を買収し、新築市場にも進出する予定です。」と語っています。

また、公共土木事業から民間建築まで手掛ける「総合建設業:B社」は10年前から展開している「注文住宅事業部門」を拡大する狙いで不動産仲介事業のFCに加盟。土地の無い一次取得者への対応を強化しています。B社社長はその効果をこう語っています。

「不動産事業を始めたことで一次取得者の受注が増えただけでなく、OB施主の不動産売却ニーズが取り込めるようになりました。それを自社で買い取って分譲住宅事業も始めました。」

A社は「不動産→建築」への展開。B社は「建築→不動産」への展開です。いずれも自社の強みを活かして周辺事業へ進出しています。従来のような「土地は不動産会社」「建物は建築会社」というような分け方ではなく、「お客様の住宅に関するニーズに全て対応できるようにすること(ワンストップサービス)」で、住宅・不動産市場において「地域ナンバーワン」を目指す戦略です。

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