太陽電池(太陽光発電)で賄えるエネルギー量

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ハイアス・アンド・カンパニー(株) 代表取締役社長 濵村 聖一

今から考えておくべき事

2010年の全世界の1次エネルギー消費量(原油換算で14億kl/年)を変換効率10%の市販太陽電池で賄おうとすると必要な面積は全世界の砂漠の4%程度(日本の国土面積の3倍強)」となります。

これをエネルギー統計でよく使われる「ジュール:J」という単位で言いますと、2008年の全世界のエネルギー消費量は474EJ(E:エクサ=10の18乗)で、1990年対比で13.7倍、そのエネルギー量は、1954年3月1日ビキニ環礁で行われた米国の水爆実験「ブラボ-」(TNT火薬15メガトン)7個分、地球に降り注ぐ太陽エネルギー52分(1時間弱)の量に相当します。日本国内で消費されるエネルギー量は2007年で23EJで全世界のエネルギー消費量の約5%を占めます。

家庭部門の電力は山手線の内側面積3.5個分の太陽光発電で賄える!

一方、国内の家庭部門における年間消費エネルギー総量は2004年で約2093PJ(P:ペタ=10の15乗)で、1世帯当たり年間消費エネルギー量は42.9GJ(G:ギガ=10の9乗)であり、この数年間は省エネ家電の普及もあり双方とも伸びはほぼ止まっています。更に、家庭部門の年間消費エネルギーの半分は灯油・LPG等の化石エネルギーが占め(53%)、残りは電力といった構成になっています。(資源エネルギー庁より)

家庭部門の年間消費エネルギー量である2093PJを市販太陽電池で賄うには、1辺22㎞、面積484㎢の太陽電池パネルが必要となります。内、電力分47%は1辺15㎞、面積228㎢の太陽電池パネルとなります。これは、山手線の内側65㎢、琵琶湖670㎢ということを考えると、山手線の内側3.5個分、琵琶湖の3分の1の大きさになります。とは言え、日本の総面積が380000㎢ですので0.06%程度という規模で賄えるわけです。この電力分の228㎢を4500万世帯で単純に割ると、1世帯5㎡の太陽電池パネルとなります。

この数年の太陽電池パネルの進化は早く、ドイツFraunhofer研究所が昨年発表した太陽電池の変換効率は41%に至っており、日本や米国でも量子ドット型など変換効率を60%まで高める研究が急ピッチに行なわれており、必要電力量を賄う太陽電池の面積は年々小さくなっていくものと考えられます。

フィードインタリフ(固定価格買取制度)強化の必要性

また、太陽電池の経済性については、太陽電池による発電システムを作るのに要したエネルギーを、太陽電池が発電するエネルギー量で割ったEPT(エネルギー回収年数)は、年間100MW生産の場合で1.5~2.0年、薄膜Si系で約1年。原理的には1枚の太陽電池から得られるエネルギーで複数の太陽電池が生産できることになり、3kWhの太陽光発電システム価格を200万円と仮定し、システム寿命20年とすれば電力価格は33円/kHhですが、寿命を30年にできれば22円/kWhとグリッドパリティ※に到達できるようです。

※グリッドバリティ(Grid paroty):風力発電や太陽光発電といった新たなエネルギー源による発電コストが既存の系統電力の価格(電力料金)と同等になること

日本政府は太陽電池の導入促進政策で “2020年に太陽光発電産業で雇用110千人を創出” し “日本の太陽電池の世界シェアを現在の20%弱から33%へ高める” ことを目標としているようですが、世界競争の中では、フィードインタリフ(固定価格買取制度)において現在の2倍の価格差でなく欧米や韓国のように3~4倍の買取価格にするなどの支援策を講じる必要があります。

断熱性能と遮熱性能、再生可能エネルギー利用はこれからは必須

今、住宅関連業界で考慮せねばならない事項は、消費エネルギー量の26%を占める冷暖房において、ドイツの2012年政令(日本の次世代基準の10倍)並の断熱性能と日本独特の気候風土に合わせた遮熱性能を実現し、2割程度の消費エネルギー量の削減を可能とすることでしょう。今後、石油価格など化石燃料価格が上がってくるのは必定で、太陽光や風力、バイオマスなど再生可能エネルギーの比率向上や、コージェネ等の高効率エネルギー利用策の幅を広げる姿勢や具体策を業界として問われてくるものと思われます。この1年で円高はかなり進行しましたが2年半前のガソリン高騰騒ぎが昨日のことのように思い起こされます。既に、欧州ではガソリン価格が1ℓあたり200円や300円に上がることを想定した政策が進められています。

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