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日本の事例も一つ紹介したいと思います。福岡県糸島市の「荻浦ガーデンサバーブ」です。総敷地面積2,700㎡に計画された、地上2階地下1階の住宅18戸で構成される住宅地です(2012年竣工予定)。
住宅資産価値の維持向上という基本コンセプトのもと、数多くの工夫が盛り込まれているわけですが、その中でも今回は、省エネルギーに関わる取組みについて紹介します。
建物の省エネルギー性能を高めることは言うまでもありませんが、住宅地全体の施策として、微小地形気候の安定化による、夏涼しく冬暖かい省エネの住環境を作り出す様々な工夫を施しています。例えばコモンと呼ばれる共有の庭づくりです。クリ、ザクロ、シダレザクラなど地域の植栽を活かすことにこだわり、線路沿いには遮音性を、西日が差すブロックには遮光性を考慮したプランとしています。次に、水資源再利用システムの採用とこれを利用したビオトープの形成です。
高炉スラグとセメント等でできた透水ブロックによる舗装を行い、敷地内の雨水を地下まで透過させ、貯水する仕組みを内蔵しています。地下の貯水タンクには約105tの容量があり、植栽を潤しトイレでの再利用が可能です。ビオトープの水源にもなり、夏には周辺温度よりも2 ~ 3℃涼しい環境を提供できることが見込まれています。このような事例は、住宅地デザインが省エネルギーに貢献している事例のひとつとして、注目に値することでしょう。
荻浦ガーデンサバーブでは、このような工夫の一つ一つがマスタープラン・アーキテクチュラルガイドラインとして定められ、この共有財産を守って行くために、住宅地を管理するルール(CC&Rs)を作り、それを遵守するための協会(HOA)を組織して、この住宅地が将来にわたり資産価値を維持・向上できるようにすることを目的としています。
ここまで、住宅単体としての省エネルギー性についてエネルギーパスの例から、持続可能な街づくりについては国内外2つの事例を紹介しました。
弊社の取り組みに話を移しますと、3年目を迎えたR+houseシステムのネットワークでは、高気密・高断熱の住宅を営業段階から徹底的に合理化することにより、環境負荷の低い住宅作りの普及に力を入れています。また、新たな取り組みとして、更に高い断熱性能を追求したR+zeroの第1棟目が今春竣工しました。高い遮熱性も兼ね備えているため、夏はほとんど冷房をつける必要がなかったとの報告を受けています。今年の冬にはどれほどの快適性と省エネルギー性を発揮してくれるのか、大きな期待をしています。
街づくりに関しては、「日本版HOA」の構築に向けて日々取り組んでいます。アメリカで生まれたHOAは、文化的社会的背景も異なる日本で、そのままの形で適用することは難しいため、長い目でみて日本に合った仕組みをつくる必要があります。この住宅と街づくりのノウハウの両方が揃って初めて、本当の意味での住宅資産価値が維持・向上されると考えています。多くの人が「住みたい」と思えるような住宅地の形成がとても大切だという考えに基づき、今後は産官学との連携を深めて、モデルケースでの研究開発を進めてまいりますので、どうぞご期待ください。