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このような前提条件のもとで、日本の不動産流通の活性化を阻害する問題を整理しますと、
1.流通市場の問題
2.流通市場に流れる住宅資産価値の問題
3.不動産取引の仕組みの問題
の3つに集約されると考えられます。
まず1.の「流通市場の問題」とは、売主買主双方の代理である不動産仲介会社が、顧客の利益を守るべき姿勢(代理)を十分発揮しえていないことです。また、不動産開発会社が、安く仕入れ高く売ることを良しとし、付加価値理論に基づくことなく、時には業者間取引を挟んで利益の極大化を図ることに注力してしまう風潮も同様です。株式市場同様に監視機能を含む流通市場の形成策を官民一体となり、消費者利益を優先する仕組みに変えていく必要があることは明白です。米国のMLS(Multiple Listing Service)のように消費者にダイレクトで情報が流通され、取引は専門性を持つ代理人が代行する状態を目指すべきではと考えています。
次に2.の「住宅資産価値の問題」です。20年前以前に建設された住宅の多くは、結果的に耐久性に重点が置かれておらず、既存流通市場に流れる頃には十分な品質を確保できませんでした。また米国の不動産売買時に最も重要視されるロケーション価値(利便性、生活、治安、街並み等)の向上に配慮する指向が大変弱かったため、住宅の資産価値が維持・向上されてきませんでした。
最後に3.の「取引の仕組みの問題」です。米国ではエージェントやエスクロー、インスペクター等の専門家が分業制で全ての物件情報や権利情報を精査・牽制しています。これにより公正な不動産取引が担保され、契約成立後に情報の不整合によるトラブルを抑えられる仕組みが構築されています。
これらの問題は全体から見ると一部の課題に過ぎませんが、ひとつひとつ改善していくことによって、流通活性化に結びつくものと考えています。
ここで米国の事例を紹介します。先日、不動産視察のためカリフォルニア州に訪問した際、ロサンゼルスの南方にシールビーチという海辺に面した開発から40年経過した6500世帯の住宅街を訪れました。この住宅地は日本で社会問題となっている30〜40年前に開発された団地をイメージしていただくと分かりやすいかと思います。但し、日本のそれの多くと状況は全く違い、10年前に約$45万で販売された住宅が2007年に最高で$120万の価格を付けた後に、現在は$75万で中古流通市場に出ているとのことでした。
日本では不動産価値が上がることはあまり考えにくいことですが、米国の不動産価値は住宅残存価値と土地価格の合計で評価されるのではなく、あくまでも買い手と売り手の需要と供給によって決まり、個別の住宅価格はそのエリアに居住するという生活環境に対するロケーション(立地)価値で評価されます。つまり、住宅単体ではなく将来的に価値が下がらないロケーション(人口増、教育・商業・交通施設の充実、災害対策、治安等)とそれを担保する住宅地経営力が重要視されているのです。このような住宅資産を背景に子育て世代は子供の教育環境を求めて新しいエリアに住み替える方もいれば、多くのシニアは利便性や治安のよいエリアに住み替える方もいます。そのようなライフステージに合ったロケーションを基本にした住宅地の資産化が不動産流通の一つの誘因になっています。