イギリス、ドイツ住宅不動産視察の報告

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はじめに

日本の不動産流通の活性化に向けて、国土交通省主導のもと、多方面の有識者で構成される「不動産流通市場活性化フォーラム(2011年10月~2012年6月)」や、全国を12の地域・プロジェクトに分けて、事業者が連携して新たなビジネスモデルの調査・検討業務を行う「中古不動産流通市場の活性化に関する調査検討業務(2012年7月~)」がスタートするなど、優良なストック住宅の活用に向けた動きが官民が連携する形で加速してまいりました。

これらの取り組みを考える上で、不動産流通の仕組みが発達している欧米の理論や実践企業の情報は非常に参考になります。

今回、イギリス、ドイツの住宅不動産視察を行い、イギリスでは不動産流通の仕組みと住宅地経営の取り組みを、ドイツでは都市・地区計画と持続可能な林業について、様々な知見を得てまいりましたので、その最新情報をレポートします。

イギリスの不動産流通の仕組み

ロンドンの西10kmほどの位置に、ロンドン唯一の日本人学校(The Japanese School in London)があります。今回の視察では、その日本人学校周辺に駐在する多くの日本人向けに不動産売買・賃貸のサービスを提供するTPS社を訪問し、英国の不動産流通についてレクチャーを受けました。現地で得られた情報とその後の調査により、イギリスの不動産流通の仕組みは次のようにまとめられます。

取引のカギを握るソリシター(Solicitor)の役割

次の図は、イギリスの不動産取引モデルです。

まず、イギリスの不動産会社(エージェント)は免許制や登録制ではありません。売り手から売却したい物件の委託を受け、その情報をもとに買い手とのマッチングを行います。売買金額や諸条件の交渉はこのタイミングで行われ、条件が合意した段階でソリシターにその後の業務を移管します。エージェントのその他の業務としては、日本と同様に売買の相談窓口やインスペクション・リモデルの紹介など安心して売買が行われるサポートを行います。

仲介手数料は売り手から2.0~2.5%受け取るのみで、原則として買い手からは受け取らないことも日本とは異なる事項でしょう。

次に、契約業務以降を担当するソリシターとは、買主・売主それぞれが個別に契約を行う事務弁護士(法律相談や書類の作成・管理をする弁護士で法廷には立たない)のことです。契約書の作成・交付や譲渡証書の交換、登記手続きなどを行う有資格者です。

不動産売買にソリシターを入れることは法律で規定されているわけでありませんが、イギリスでソリシターが活躍する背景には、次のコラムで解説する「chain」と呼ばれるイギリス特有の複雑な法関係の調整のため、現在の取引では必要不可欠とされています。

ソリシターへの業務委託費用は物件の規模に応じて変わりますが、平均的には売り手側・買い手側のそれぞれが1,500~2,500ポンドくらいといわれています。

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