なぜ住宅会社はアフター業務ができないのか?

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「アフターフォローやっている」と言えますか?

工務店にとって引き渡した後のお客様の対応、いわゆる「アフター」は非常に重要であるというのは業界内の共通認識です。しかし、アフターを戦略的かつ組織的に継続して行っているという工務店は極めて少ないのが現実です。

「いや、当社では施主満足度を重視しています」という会社であっても、例えば満足度を測る「引き渡し後の満足度アンケート」の類の回収率はせいぜい60~70%程度です。施主満足度を重視しているなら、なぜアンケートの100%回収にこだわってやりきらないのでしょうか? 引き渡した後のお客様の本当の声が30%以上も補足できていないことに対して、なぜ経営者は危機感を持たないのでしょうか?

アフター業務に関して、「満足度アンケートの3ヶ月以内の回収率を○○%まで上げよう!」とか「○年以内に回収率を100%にしよう!」といった具体的な指標を持って臨んでいる会社は大手ハウスメーカーでも、地元密着の工務店でもほぼ皆無です。アフターフォローは重要と言いつつ、なぜこういったことを行わないのでしょうか?

住宅会社にとってのアフターの現状は?

より実態に即して言えば、「やらない」というより「できない」のです。住宅会社は家を建てて売るのが仕事です。売上高のほとんどは完工した新築住宅です。だから経営における重要な先行指標は「受注数」になります。会社全体が「受注」や「見込み客の対応」により関心が高いのは当然です。前述のとおり、「アフター」に関して目標指標を持たない会社は多いですが、「受注数」に関しては、「○月までに何棟の受注!」「1棟あたりの粗利を○%確保!」といった具体的な経営目標を持って臨んでいない会社はありません。

営業担当者は契約を取ったら次の契約を取りに行くために、いかに早く既契約客の対応から手を引くかを重要視している会社もあります。そういう会社では営業担当者は契約済のお客様にいつまでも関わっていると怒られます。インテリアや外構、詳細仕様の打ち合わせなどをいかにスムーズに社内の設計士やインテリアコーディネーターに引き継いでいくかが大事だったりします。

一方、アフター業務としてはせいぜい機械的に季節の挨拶を送る程度。定期訪問をやっている会社はまだいい方ですが、それでもモチベーションの高くないアフター部門の担当者が数年に1回程度まわっている程度です。

アフター部門の担当者のモチベーションが低いのは「コストセンター」とみられているからです。コストセンターとは会社に収益をもたらすことが少なく、活動量を増やすほどコストがかさむポジションです。アフター業務で見込める売上と言えば、数年後に発生するかもしれない小さなリフォームか補修、あわよくば新築のお客様を紹介してもらえるかどうかといったところです。売上がほとんど見込めないからアフターの担当者が収益目標を持つことはありません。逆に動けば動くほどクレームや修繕依頼をもらい無償のメンテナンスが発生することも少なくありません。

合理的に会社経営を考えた時、アフター部門がコストセンターである以上、力を入れて伸ばす部門にはなりえません。だから「当社のお客様には責任を持って長いお付き合いをさせていただきます」とは言うものの、「アフター業務は重要だけど、収益を考えた時にどうしても力が入らない」と言う経営者を責めることはできないのです。

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