中古住宅流通+リノベーションにより 新たな顧客層を手に入れる

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消費者の中古住宅に対するイメージ

次に、中古住宅流通を考える上で消費者(特に日本人)が中古住宅に持つ印象・抵抗感を理解しておく必要があります。欧米では、不動産流通総数に対する中古住宅の流通比率が概ね60~ 80%であり、新築住宅よりも中古住宅のほうが、物件の状況や周辺環境をより正確に把握してから購入することが出来るので、むしろ好まれる傾向があります。

我が国では、国土交通省等が実施した意識調査によると中古住宅に抵抗がある理由(図1)ならびに中古住宅購入時に受けたいサービス(図2)は次のような結果が出ています。

新築を好むという日本人特有の志向性が表れていますが、続く項目を見ると中古住宅に対する情報・知識不足や品質、保証、価格に対する不安が高く、この不安を解消するサービスを提供することがこれからの不動産会社には必要となってくるでしょう。

もうひとつ面白いデータとして、図3は不動産購入時に不動産会社からのリフォーム提案の有無により、中古住宅が選択される確率がどのように変化するかを調査した結果です。リフォームの正しい情報を消費者に伝えることで、消費者が中古住宅を選択する割合が大きく増加するという事実は意識しておく必要があるでしょう。

中古住宅流通+リノベーションという選択

ここまで中古住宅流通を活性化する上での課題をいくつか列挙させていただきましたが、弊社では、これらの課題を包括的に解決するソリューションとして、中古住宅流通+リノベーションのビジネスモデルに注目しています。ここで、同手法により、近年飛躍的に成果を創出している会社の事例を紹介します。

A 社は東京に本部があり、地元の不動産会社と連携したリノベーションビジネスを展開されています。

まず、中古物件に対する情報不足からくる不安に対しては、売買のプロフェッショナルである不動産会社を窓口として「不動産物件情報の収集と正しい判断材料の提供」を徹底し、初期段階で中古住宅に対する負のイメージを払拭します。

次に、耐用年数・間取り・維持管理など中古住宅特有の品質に対する不安に対しては、自社のショールームを活用した「定額制かつセミオーダー」式のリノベーションパッケージにより、性能・品質とも安心して納得性のあるリノベーションプランを提示して、新築同様の機能性を持つ住宅を提供します。

さらに、資金面の不安に対しては、これまで物件ローンとリフォームローンの2 本立てが常識だった住宅ローンについて、「金融機関との提携により一体型ローン」の仕組みをいち早く構築し、金利メリットを最大限享受したリフォーム予算の捻出が可能になりました。

最後に重要なポイントとして、これまでターゲット外にせざるを得ない顧客層だった立地・建物・資金のバランスでミスマッチを起こしていた消費者に対し、交通利便性が高く、かつ将来にわたる資産価値の目減りが少ない築20~30年クラスの中古物件情報を戦略的に収集し、市場性にマッチしたリノベーションプランを組み合わせることで、利便性が高く新築住宅とほぼ同等の性能の住宅を格安で提供できる仕組みを構築しました。この顧客層を手に入れることが、A社の最大の成功要因であると分析しています。

今後、弊社では本ビジネスの研究を行い、ショールーム視察やイベント企画、勉強会を開催する中で、地元の住宅会社の皆様と共に、日本の中古住宅流通市場の活性化の一翼を担っていきたいと考えています。(鵜飼)

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