不動産流通市場を活性化するための方法

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エージェントマスターサービスリリースに込めた思い

6月1日よりハイアス・アンド・カンパニーは新サービスとしてエージェントマスターサービス(以下、AMS)をリリースしました。本書ではAMS開発の背景とAMSの展開に込める思いをお伝えできればと思っています。

残念ながら現在の日本の不動産流通市場は本来のあるべき形とはほど遠い状態と言わざるを得ません。不動産会社にとっても情報取得に手間と時間が掛かりすぎるのが現状だと思いますし、忌々しきことは、それによって不利益を被っているのがエンドユーザーだということです。

例えば、これから家を買おうというお客さんがいて、すぐにでも新しい家に住替えたいと思っていても、何社も何社もまわっているうちに気付いたら1年かかってしまったとか、物件を売りたいなと思っている方にとっても会社によって査定金額が違ってどこに頼むのがいいのかよく分からないというのが、過去から現在に至るまでエンドユーザーが抱えざるをえない悩みとなっています。

目的や意図は別として、一元化され公開されるべき不動産情報がコントロールされ制約されていること自体が、エンドユーザーにとっても、結果的に不動産会社にとっても不便かつ非効率な環境を作ってしまっている原因ではないかと考えています。

我々が先行してAMSを全国に普及していくことで、売主と買主の機会損失を同時に減らしたい、今回のリリースにはそういう思いが込められています。

日本の不動産流通市場の現状

ここで1つのデータを見て頂きたいと思います。(表1)は大手不動産会社各社の2012年度の売買仲介実績ですが、上位5社の平均受領手数料は5.2%となっています。この数字から考えられることとして、1つは大手不動産会社の受託数がいかに多いかということ。もう1つは、いかに両手取引率が高いかということです。

両手取引が多いということは、経営面からみれば効率的でいいということになるかもしれませんが、エンドユーザーサイドからすると、

・本当に希望する条件にマッチする物件が他にあるにも関わらず、専任預かり物件しか案内してもらえない。

・売主にすればすぐにでも売却したいという要望があるにも関わらず、他社の買い客は受け付けてもらえない。

などと言った不利益を招いていることが推察されます。

実際に東日本不動産流通機構に寄せられた会員や消費者の声として下記のようなものがございます。

・契約前のレインズ登録、登録せず、登録証明書交付せず、抜き行為

・登録情報のホームページ無断掲載

・個人情報が特定可能な内容で成約情報の広告流用

・「商談中」、「売り止め」、「売主都合」等実際には正当な理由なく紹介を拒否

会社によって扱っている情報が異なるため買い客は何社も何社も回って自分の条件に合う物件を探さないといけない、そうなると買うまでに時間がかかる、買うまでの時間がかかるということは、売主にとっても売却までの時間がかかるということであり、ムダな時間経過が機会損失を拡大させていると言わざるを得ません。

また、ある元大手不動産会社のトップセールスマンと話した際こんなことを聞きました。「(本来の相場よりも)安く仕入れを行う際に大変心が痛む。本当はもっと高い値でも売れるのに…」と。

ただ、不動産会社サイドとしてはそうした行為が悪意をもってなされているということではなく、これまで当たり前のようになされてきた習慣だと思います。しかし、エンドユーザーサイドに立つと、やはりこうした事態は決して望ましい状況とは言えず、では何が問題なのかと言えば、根底にある真の問題は、日本の不動産業界に情報インフラの整備がなされて無いから、その運用ルールがあって無いからというところにあるように思われます。

国土交通省「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会『レインズ機能の充実の必要性について』より」

現状、不動産業界のインフラとしてレインズがありながら、レインズに掲載されている物件の捕捉率は十分なものとは言えません。(図2)は2005~2009年に東京都内においてレインズ、主要ポータルサイトに掲載された物件、そして国交省の売買取引調査によって取引がなされたという報告があがった物件の比率を表したものですが、なんと東京都内においてもレインズに登録されている物件は実に34.0%程度だということです。

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