フライブルク(ドイツ)・ウィーン(オーストリア)視察

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今回、オーストリアの首都ウィーンとドイツにおける環境先進都市フライブルクに視察訪問し、各都市の環境・省エネルギー政策と街づくりについて知見を得て参りましたので、その内容をご報告いたします。

オーストリアのエネルギー政策

『エネルギーシフト』とは、原発・化石燃料から脱し、再生可能エネルギーにシフトしていくことを指しますが、オーストリアは脱原発の国であり、国を挙げて、エネルギーシフト・気候・環境保護に取り組んでいます。2001年のEU再生可能エネルギー指令を受けて2006年に制定された『オーストリアグリーンエナジー法』は、電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合を2010年までに78.1%に引き上げることを目標としました(結果:約69%)。また、2009年6月のEU指令により、オーストリアは2020年までに天然ガス等化石エネルギー源を含めた最終エネルギー消費量のうち、再生可能エネルギーの割合を34%まで高める事を目標としています(2008年時点:約28%)。これらの数値はEU内でも最高レベルであり、オーストリアの先進性がうかがえます。今回訪問した『シメリングバイオマス発電所』は、2003年の『グリーン電力法』施行と2006年の『バイオマス行動計画』策定等を機に、2006年から運転されています。木質系バイオマス発電所としてはEU最大規模で(最大熱容量66MW、夏場の最大出力24MW)、48,000世帯に電力と12,000世帯に熱供給を行っています。原料となる木チップは製紙会社や製材会社がオーストリア連邦森林公社の保有する森で伐採した廃材を利用しています。

森林豊富な国土では全消費量よりも多い量の木々が成長しているそうで、増え続ける木々をうまく利用していると言えます。また搬送エネルギーやコストを考慮して、ウィーンから半径100km以内からの調達が全体の80%を占めるようにしていることからは、トータル的な環境配慮への姿勢が伺えます。一方で、原料・運搬・運営コストはとても大きく、売電価格の3倍のコストがかかると言います。『グリーン電力法』で規定された電力の固定買取制度(FIT)を利用して補っているのですが(10~16cent/kwh)、これも13年間の期限付きとのことで、再生可能資源を燃料とする発電所も、経営的には運搬コストなどいくつもの課題を抱えているというのが現実のようです。

再生可能エネルギーの使用割合(ウィーン)

同発電所に併設されている火力発電所はその熱源を利用した(コージェネレーションシステム)大規模温水貯蔵タンクを有しており、ウィーン市100万世帯のうち約23万世帯に熱を供給しています。ウィーン市は、市内のごみ焼却所熱源と合わせて現在35万世帯に地域暖房を普及しているのですが、10年後までにこれを50万世帯まで引き上げようとしているそうです。

国とは別に、ウィーン市では2030年までに再生可能エネルギーの使用割合を50%にすることを目標としています(図1)。この目標達成のために行われているウィーン市での取り組みを1つご紹介します。市民向けに太陽光発電パネルを販売し、ウィーン市がこれをまとめて借りることで、パネルの所有者は年3.1%のリターンを受けるというものです(図2)。パネル1枚は950セント。

現在、8,000枚のパネルが市民によって所有されています。音楽や美術・建築など観光イメージの強いウィーンですが、街全体での省エネルギーへの取り組みは注目に値すると言えるでしょう。

ウィーンの街全体での省エネルギーへの取り組み

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