フライブルク(ドイツ)・ウィーン(オーストリア)視察

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ドイツにおける地方都市再生の事例

フライブルク駅からトラムで10分程のところにあるヴァインガルテン地区を訪問し、街単位での省エネ改修の様子を見てきました。この地区には高度経済成長期に建てられたかつての住宅供給公社の集合住宅が並び、断熱改修により、主に高齢者向けの賃貸住宅として再開発されています。もとは同じデザインの建物だったところを改修により異なるコンセプトのデザインとするなど、街の彩り向上にも貢献している様子がうかがえました。市営の賃貸住宅で、もとの家賃が?5~6/㎡だったところが、改修後は?7~8/㎡と高くなるそうですが、改修後15年のランニングコストの低減分を想定して、必ず住み手に不利益にならないよう、家賃は決定されるとのことです。この他ヴァインガルテン地区の特徴としてあるのは、コージェネレーションシステムによる地域暖房なのですが、フライブルク市内にある166ヶ所の施設の中で最大の規模を誇ります。施設コスト3~5億円。規模が大きいことのメリットは、熱回収や再生可能エネルギーの利用など、柔軟に地域に適した方法を取れる事と、ピーク時・ミドルピーク時・平時それぞれに応じた熱源の最適配分が出来る事が挙げられます。ここでは、ヴァインガルテン地区1 万人+ 近隣住宅地や工業団地を含めた3~3.5万人、1.5万世帯の熱供給を行っています。

90度のお湯が、熱のみを建物に移してそのまま戻ってくるという仕組みで、熱交換時の熱損失は5%程度と高効率を誇っています。

歩行者の街

更に街づくりについて話を深めていきたいと思いますが、本誌20号にもフライブルクについては詳しく書かれていますので、いま一度そちらもご参照いただければと思います。20号では都市計画における人口密度のコントロール(高い数値で維持)とトラムを活用した街づくりについてご紹介しましたが、車通行を制限し徒歩圏の街づくりをすることは、住民の街への親しみと美化意識の向上につながり、街を活性化させる重要なファクターとなります。この他、街の賑わいを創出する仕組みの一つに、商店の販売品目規定があり、非日常品は商業中心地区でのみ販売が許可され、住宅街の商店では日常品の販売のみが許可されています。そうする事で、人々が買い物のために中心地区に集まり、街に賑わいが生まれます。

またその為にトラムによる移動というアクションが生まれたり、販売品目すみ分けのおかげで商売も守られたりするので、更に街が活性化するという具合です。エネルギー計画からはじまりこのように全てが計画的に造られた街は非常に魅力的に映りました。

フライブルク市の人口ピラミッド

フライブルクは、人口22万人のうち学生2.5万人、教職員8,000人の大学都市であるので、若い人の割合が多いのですが、その魅力的な街に一度住み始めると出ていく人が少ないので、人口が微増しています。人口ピラミッドの形も、ドイツの平均値とも少し違っていて若い世代が多く持続性のある理想的な形となっています。

このようにドイツでは環境・交通・住宅・購買・雇用などあらゆる要素を連動させて都市計画が策定されることで、人々の生活が、当然の権利としてより良い方向に導かれていく好循環の仕組みがあると言えそうです。

世界的観光都市から学ぶ日本の街づくり

写真は、ウィーン市リンク内歴史地区の中心にあるグラーベン通りです。歴史ある建物で通りが形づくられ、観光客や市民が闊歩している様子がうかがえます。

ウィーンは、歴史的地区やシェーンブルン宮殿などの世界遺産も多く、歴史的建築物を残すことや、公園緑地・並木の整備、電線の地中埋設など、景観を重視した都市計画により街の価値が創出され、優れた観光都市として成立しています。建築・美術の観光資源化の典型ともいえ、計画的な社会資本投資により街を活性化しGDPを大きくする取り組みが行われていると言えるでしょう。

加えて、地域暖冷房・コージェネレーションシステム等によりエネルギーコストを抑えることで更に街全体の利益を増やす仕組みも成立しています。財政再建に必要な思想である『入るを量って、出ずるを制する』を実践しているとも言えるでしょう。

日本においても、観光資源化が進んだ都市は京都、高山等ありますが、更に広い視野を持ち、世界の先進的な知見を日本に導入する事によって、その地域地域に合うよう、日本全国で国や県と連動して市町村単位でも取り組むことが望まれます。(高地)

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