ハイアス総研report No.4
-日本再興戦略と不動産鑑定評価基準の見直しにおける新たな動向

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はじめに

赤井 厚雄その経済政策の軸足は、大胆な金融政策という第一の矢、機動的な財政政策という第二の矢から、第三の矢である成長戦略に本格的に移りつつあります。昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」はその成長戦略のバイブルともいえるものです。ところが、文字通り国民生活のあらゆる部分を網羅するこの文書は、本文部分だけで90 ページを超え、その全文を通読したという人は意外に少ないのではないでしょうか。

言うまでもなく、成長戦略は無数の個別分野における具体的なアクションプランの集合体であるべきであり、三本目の矢は「千本の矢」ともいわれる無数の小さな矢から成り立っています。もちろん住宅・不動産分野もその例外ではありません。

本稿では、読者の関心分野であると思われる「住宅・不動産」分野に関する記述を紹介すると共に、その内容をふまえてアベノミクスの経済政策の下で進む、特に中古住宅の流通・活用を促す政策の枠組み整備の動向の代表的なものとして、不動産鑑定評価基準の見直しについてその最新の動向を解説し、今後の課題を提示したいと思います。

日本再興戦略と住宅不動産市場

安倍政権の「日本再興戦略」の中には、住宅・不動産に関する取り組みとして「都市・住環境の向上」という項目があり、次のような記述がなされています。

「透明性・客観性の高い不動産市場を実現するため、各種の不動産情報やその提供体制の整備、国際基準を踏まえた不動産の評価基準の整備(来年度中)等を行うとともに、フロー拡大からストック充実に向けて質の高い多様な住宅ストックの形成を図るため、既存住宅のインスペクション(検査)や長期優良住宅化のための基準等の整備(今年度中)、既存住宅の建物評価に係る指針策定(今年度中)等を行うことにより、居住面の環境整備を促進する」(「日本再興戦略」50 頁)

また、「エネルギーを賢く消費する社会」という項目では、住宅・建築物の省エネ基準の段階的適合義務化に関し次のような記述があります。

「規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020 年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネ基準への適合を義務化する。これに向けて、中小工務店・大工の施工技術向上や伝統的木造住宅の位置付け等に十分配慮しつつ、円滑な実施のための環境整備に取り組む」(同74 頁)

このように、不動産・住宅分野は、これまでに積み上げたストックを生かすことのできる社会への移行を積極的に後押しできる産業が生まれるフィールドとして位置づけられており、その重要な基盤としての不動産鑑定評価基準の見直しが進められているのです。

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