ハイアス総研report No.4
-日本再興戦略と不動産鑑定評価基準の見直しにおける新たな動向

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不動産鑑定評価基準の見直し動向

わが国の不動産資産の総額は約2,500 兆円※1 といわれています。ただし、その内訳である住宅についてみると、その額は344 兆円と、1969 年以来行われてきた国内での住宅投資額の累積(862 兆円)を約500 兆円も下回ります。
※1. 国民経済計算(平成22年度確報)

これは、そのストック額(約14.0 兆ドル)が、住宅投資額累計(約13.7 兆ドル)を上回る米国の例とは大きな対比をなしています。(図表1)

図表1 日米の住宅投資額累計と住宅資産額の関係

その背景として、米国と比較して日本の住宅市場における住宅の市場価値の低さ(それを前提にした固定資本減耗の速さ)や住宅価値の滅失率の高さなどが挙げられてきましたが、そういった固有事情は、必ずしも個々の住宅の経済価値の実体を正しく反映したものではないことが長らく指摘されてきました。そのために中古住宅の流通市場の拡大が阻害されたり、中古住宅のメンテナンスやリフォームを行うインセンティブが低く抑えられたりしてきた、とも言われています。

特に我が国における中古住宅流通量は全住宅の流通量の13.5%(平成20 年度)と、欧米の6 ~ 9 割に比べて著しく低水準です(図表2&図表3)。住宅市場における新築偏重、中高年層の持つ住宅の老朽化、進まない若年層による住宅取得といった傾向が続く中、全国で空き家が増えるなど、マクロ経済における負のスパイラルを生み出してきました。

このスパイラルを断ち切る方策の一つとして、新たに不動産鑑定評価基準の見直しを行うことが、国土審議会土地政策分科会不動産鑑定評価部会において検討され、2013 年末に「新基準」の案がまとまり、パブリックコメントに付されています(本稿執筆時点)。

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