ハイアス総研report No.4
-日本再興戦略と不動産鑑定評価基準の見直しにおける新たな動向

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新基準では、

(1)建物用途に応じた価格形成要因の明確化
(2)原価法による既存建物評価の精緻化
(3)既存建物の更新等に対応できる柔軟な評価

といった方針が掲げられています。

(1)については、鑑定評価のニーズが増加している大規模な商業施設や物流施設をはじめとして、建物用途に応じて留意すべき価格形成要因が異なることや、耐震性等の防災意識の高まりや省エネルギーに対応した機能・設備等を重視する動きを踏まえて、建物の用途に共通する特徴を検討・抽出し、用途に応じて留意すべき価格形成要因を整備することとしています。

(2)では、機械的に耐用年数を設定するのではなく、建物の増改築や修繕等の状況を適切に反映した評価を徹底し、増改築等のバリューアップの評価への反映や、対象建物の現況及び市場の実態の十分な調査・確認を求めています。

また(3)においては、既存建物の更新やリニューアルが行われることを前提とした評価とすべく、新たに「未竣工建物等鑑定評価」を導入することなどが盛り込まれています※2

※2「. 新基準」の施行時期については、パブリックコメント、それを踏まえた国土審議会不動産鑑定評価部会等の審議等を経て平成26年秋頃となる見込み。

今後の展望と課題

「新基準」の導入により、住宅の建物部分の経済価値が不動産鑑定評価の枠組みのもとで正しく反映されるようになれば、中古住宅のメンテナンスやリニューアルの需要が顕在化し、それに基づく中古住宅流通市場の活性化、それに連なる幅広い関連事業の「新たな住宅産業クラスタ」が生まれるといった期待が持てます。

また、厚みのある中古住宅流通市場の成立により、住宅の資産価値を生かしたリバースモーゲージなどの周辺金融ビジネスの拡大や、それを背景とした国内投資市場の活性化など、資産価値の具現化が進むでしょう。そしてこれは、滞留する中高年層の金融資産の実体経済への還流を後押しすることに直接間接につながり、結果として国内経済に大きなプラスの資産効果をもたらすことになります。

そこには、課題もあります。まず「新基準」の施行までには、日本不動産鑑定士協会連合会における実務指針の策定等が必要です。この実務指針の内容と幅広い浸透に向けての取り組みは、個々のプロフェッショナルとしての鑑定士が十分に腕を振るうことが出来るものとなるべきで、そこに今回の新たなゲームのルール導入の成否の鍵があります。また、これらを踏まえた新たな現実への金融機関の対応能力が「新基準」導入の経済効果を大きく左右することになり、そうした課題を乗り越える官民の連携が求められることになるでしょう。

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