ハイアス総研report

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中古住宅市場を支える効率的な不動産仲介システムとは?

~日米比較に見る不動産仲介制度の相違~

中古住宅の取引システム

中古住宅の取引においては、高い取引コストが存在するために、金融市場に比較して効率性が著しく阻害されているという指摘がしばしばなされます。

確かに、住宅を投資の対象としてみたときには、金融資産などと比較することで、その費用の大小を議論することに意味があるかもしれません。しかし本来、住宅とはサービスを発生させるものであり、そのサービスの程度を適切に評価していくことが求められる――そのような資産であると言えるでしょう。つまり、投資財としての単なる評価だけでなく、住まうことから得られるサービス水準を適切に評価するといった意味で、その取引段階で一定の費用が発生するのは、自然なことでもあります。

また、従来の住宅取引に伴う費用に関する議論には、厳密な調査に基づかず、単なる印象や伝聞によるものも少なくありません。ストックの時代に入り、不動産流通の重要度が増してきている昨今、この点についての事実を精査することは、今後の政策立案の適正化に向けた有意義な取組みだと考えます。

とりわけ、投資としての取引ではなく、住まうことを前提とした住宅を取引しようとする場合に、どのようなシステムが好ましいのかを議論・模索することは、極めて重要なことです。

本稿では、日米の不動産流通システムの相違と共通点を明らかにしたうえで、効率的な不動産流通を実現する仕組み・制度のあり方に関して私見を整理してみたいと思います。

日本の取引業務は劣っているのか?

近年、わが国の不動産流通システムが非効率であるといった論をよく耳にします。また、そのサービス水準が諸外国に比べ劣っているといった指摘も聞かれます。

そこでまず、日本と米国の不動産流通システムを比較してみましょう。

不動産仲介業務は、売り手側からの依頼に基づく業務と、買い手の立場に立って行う業務に大別され、当然ながらその両者の業務内容・機能には差異があります。日本では、売り手とだけ媒介契約を結びます。一方、米国では、エージェントとして売り手・買い手の双方において、日本における宅地建物取引主任者にあたる宅建業者(Realtor)が代理契約を結び、業務を遂行します。

※ 具体的な日本の媒介契約制度等の詳細については、Shimizu et al,(2004)を、日米の比較については、清水ほか(2004) をご参照下さい。

不動産仲介業務としては、売り手または買い手の集客に始まり、税金や資金などを中心とする売却相談・購入相談などを行います。売り手側から依頼を受けた場合には、物件調査を実施し、募集価格に関する価格査定を行い、媒介契約を締結します。ここで、専属専任媒介契約か、専任媒介契約か、あるいは一般媒介契約のいずれかの形式を選択することになります。

適切な物件または買い手がみつかった場合には、売り手と買い手の交渉を仲立ちすることになります。

売り側仲介の業務工程
買い側仲介の業務工程 日米比較(図表2)

そして、交渉が成立した場合には、詳細な物件調査(インスペクション)、契約締結・引渡へと進みます。また、ローンが必要な場合にはローン斡旋業務、業務終了後には、アフターフォローが求められます。

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