平成25年住宅市場動向調査 (国土交通省 住宅局)

(ページ:2/2)

経年変化比較表による市場動向

調査の結果は総ページ数にして348 ページにもなる報告書が公開されていまして、そこにある単年度調査結果ももちろん大変参考になる情報です。詳細についてはそれぞれHP で公開されている内容をご一読頂くとして、本稿では、「付録」として公開されている経年変化比較表という情報をもとに基礎的な情報を読み解いてみます。

この経年変化比較表を使った住宅局によるトピックスとして「住宅取得時に経済的要因が与えた影響度」という情報が公開されています。

32-1-1

これによれば、H25年度の住宅取得時において各種経済的要因が与えた影響度として、前年度までマイナスに影響していた「景気の先行き感」、「家計収入の見通し」が改善し、他の項目を含め全ての項目でプラスになった。そのふたつの項目を含めて、全項目において前年度よりも改善しているとして、経済状況の好転が住宅取得にプラス要因として働いている傾向であると言う見解を示しています(図表1)。

今号からHyAS Viewでも掲載しているデータ集(p.8)で「景気動向」を示す情報があります。それを見ると個人の所得増の生活実感は薄いと言われながらも、消費意向調査では『景況感』が上がっている事が分かり、その結果と時期はリンクしている事も分かります。このような関連性をみても、景気動向を見ておく必要性は十分認識をして頂けると思います。

経年変化比較表を用いた考察

では同じ経年変化比較表を通じて、他に気づく変化はないでしょうか? 大変多数の項目があるので、もちろん、これだけという訳ではありませんが、一つ気づいた変化を取り上げてみます。

デザインの意味の変化

実は、デザインで選ぶ、という回答率が年々低下しているという事実が発見できます(図表3)。では、この結果を受けて、即デザイン住宅という訴求の効果が小さくなると判断されてしまうのでしょうか?

デザインで選ぶという回答率の低下について、ポジティブ見解をするとすれば、デザインという概念が、単なる意匠としての「デザイン」ではなく、「生活上の機能」などを含む、住宅としての「トータルデザイン」が求められているという見解ができそうです。その根拠としては、

根拠(1)デザインが良い、という回答率の低下
根拠(2)間取り部屋数が適当だからという回答率の上昇
根拠(3)耐震耐火など安全性と高機密高断熱の性能は回答率が大きく低下しない

つまり、本質的な価値を消費者が求めた結果という見方ができそうだということです。

32-1-2

一方で、結果についてネガティブな見解をとるとすれば、住宅の「商品化」の進行が、性能や機能重視に偏重する消費者選考を生み出した結果であり、競争する市場が「分譲住宅」と同じフィールドに引き込まれているという傾向とも言えます。言い換えれば、注文事業者だけとの競争という概念を突破し、分譲事業者が提供できている事をきちんとふまえることが必要になっているという見方をすべきではないでしょうか。

何れにしても、デザインという意味を考え直し、単なる意匠の問題ではなく「したい暮らしの実現のためのアイデア」というように広範に捉え消費者に訴えかける事が必要になってきたと言えるかもしれません。

商品となった住宅という観点

分譲住宅と注文住宅への期待の違い

前章では、注文住宅建築を建てた消費者の回答率の変化から見たデザインの意味が変わっているのでは?と言う切り口で分析をしてみましたが、その分析で仮説的に考えた、分譲住宅と注文住宅の差を改めて考えてみます。

具体的かつ端的な差として言えるのは、消費者の期待がどこに集まるかの差であり、注文は「企業」つまり仕事への期待であり、分譲は「デザイン、広さ、設備」という商品への期待という差がある、ということです。

それぞれ「建築した住宅に決めた理由」という回答率を比較しながら考察してみます。

32-1-3
32-1-4

分譲では、商品としての期待ゆえに、「性能は当たり前」で広さや間取りという回答率が極端に高い結果として出現していると考えられます。すこし余談ですが、ここで問題なのは、消費者は供給サイドが当然安全や環境性能に考慮した商品である前提で市場に参加しているということです。住宅性能表示はここを明らかにすることを義務的にしましたが、それは「最低限クリア」する条件を示したにすぎず、実は取引上のブラックボックスになりかねず、解決は不動産事業領域の課題となっています。消費者の安心、安全を高める意味でもこの解決は不可避なものと言えます。

一方で、注文住宅は仕事への期待であることを反映し、性能や安全性を実現する力に加えて、デザインのよさを具現化することを売り物にしてきたが、「商品化」された広さや間取り構成に慣れ、それが標準化した消費者に対しては、性能と安全性が高い建築施工力と、意匠としてのデザインに応えるだけではなく、デザインの意味を置き換え、生活や暮らしの満足度、つまりは要望の顕在化とその要望の情報化といった力を高められるか、が問われる時代になってきていると考えられます。

【あとがき】

今回のデザインの意味を置き換える、という読み解き。

R+house では、気密・断熱など次世代基準に対応した高性能住宅をデザイナーと呼ばれる建築家と一緒に建てて頂いていますが、ともするとデザイン住宅、すなわち意匠の工夫という側面だけが強く伝わってしまいますが、実は従来から「3つのデザイン」としてその価値をお伝えしていますデザインとは「意匠」「性能」そして「生活」の3 つを指しています。

住宅単体として見た目の良いことは悪くないことですが、そこで機能や導線、もちろんお金のことも含めて「生活」を大切にできる住宅を「デザイン」することこそ最も大事なことだと考えています。

↓ハウスINハウスのサービスページはこちら↓
ハウスINハウスサービスページへ

page: p1 p2

ページトップに戻る