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宅地建物取引士個人への賠償請求は増加するのか?
「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」への名称変更の持つ意味

今国会で、「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」への名称変更に伴う「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」が、昨年6月18日成立し、同月25日公布されました。

「主任者」から「取引士」へ地位が向上したという見方もできると思いますが、「士業」(さむらい業)というのは、専門家としての責任を負う立場であり、消費者から個人的な責任を追求される可能性がある点で、「宅地建物取引士」のコンプライアンスの向上に向けた取り組みの必要性は今まで以上に高まったものと言えると思います。

業界全般的に、意識しなければならないのは、土地や建物の売買契約や賃貸借契約にあたり、重要事項説明義務違反が発生した場合の宅地建物取引士に対する個人的な責任追求の可能性です。

これまで、宅地建物取引主任者において、重要事項説明に関し、ミスをしたとしても当該不動産取引に関与した仲介業者または売主である宅建業者が賠償責任を負い、宅地建物取引主任者個人としては、賠償責任を負わないというケースが大半であったのではないか、と思うのです。

しかし、例えば、欠陥住宅裁判では、消費者は欠陥住宅をつくった住宅会社も訴えるし、当該建物の設計者、監理者である建築士個人に対しても賠償請求をするケースがあります。

「士業」(さむらい業)というのは、専門家としての責任を負う立場であり、消費者から個人的な責任を追求される可能性がある事から、「宅地建物取引士」になる者は、今以上に、慎重に重要事項説明をしなければならない立場になる、という点を意識していただきたいと思います。

ただ、何が重要事項説明の対象となるか、という判断は一義的には難しく、また、時代の流れにより変わっていきます。

今回の宅建業法改正にあたっては、宅建業法改正法案要項の第4で宅建士の知識の維持と能力の向上に関する努力義務の規定を置き、要綱第2では、宅建士が消費者利益と取引安全の両面に渡って果たすべき責任が及ぶことを明らかにしました。

また、要項の第5には宅建士が従業員に対して必要な教育に努めることも規定されています。専門家として職場を預かる地位に置かれることで、対内的にもその地位に応じた責任を自覚する機会が増えていくことが想定されるのです。

宅建業法改正の経緯をみても、今後、宅地建物取引士が専門家個人としてなすべき注意義務として、(1)高度な専門的知識 (2)公益の実現へ配慮すること (3)消費者の利益保護を図ることの3点への配慮が要請されてくると思います。

逆に、今までの不動産業界に見られたような「建物についての知識不足により、本来説明すべき事を説明せず、消費者に欠陥住宅被害を与えてしまう」「見ざる聞かざるといった態度により事前に調査して説明すべき事を説明せず消費者被害を与えてしまう」という対応は、宅地建物取引士の個人的責任が発生する可能性が高いと言うべきであろうと思います。

弁護士法人匠総合法律事務所 弁護士 秋野 卓生

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