シリーズ 眼を養う#005
R+house住宅のデザインを探る

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熊本県を横断する幹線道路から一本入った住宅地に計画した住宅。築30年を超える家々が立ち並ぶ一昔前の平均的な住宅地が今回の敷地である。敷地は塀で囲まれた住宅群と碁盤目に区画された南・東に道路を有する角地。採光・通風のメリットは感じるものの、敷地前面道路の違法駐車や抜け道へ続く南側道路を利用する歩行者の多いことがプライバシーの確保に配慮しなくてはならないことを思わせた。

そこで「開くこと」と「閉じること」、この相反する事象を同時に満足できる形態を模索することから設計は始まった。開くこと即ち開口であり、閉じること即ち壁である。この両者を敷地や環境をガイドに極限までブラッシュアップし単純化させていった。ロッジアのような半外部空間を緩衝帯する方式を採用することでより開口と壁の単純化は鋭さを加速させ、ようやく立ち上がった形態はフォトジェニックな幾何学の紋様、または抽象画のような美しさをもって存在することとなった。これを私は一種の地域との調和と考える。見た目に囚われた表層的な調和ではない、違う階層での調和としてみている。

完成後写真を撮らせてもらった。あいかわらず地域の人が生活道路として使う光景が見られた。「綺麗なお宅ね。塀がなくて道も明るくなるわ」撮影中の私に近所の方が声を掛ける。早速地域の仲間入りを果たした建築をとても微笑ましく思った。

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外部との緩衝帯になる半外部空間は人の目線を防ぐようなデザインとしながらも光や風、緑を住宅に取り込む。

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敷地との関係により間接的に光を導入させるためのアルコーブ。

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畳スペースと家族収納をまとめたコアを中心に様々な機能が回廊を介してつながるプラン。なんとなくお互いを感じられるような適度な距離感を実現

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