ハイアス総研レポートNo.7
住宅不動産市場を取り巻く環境変化の行方と これからの対応を考える

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1_ 最近のトピックス

「建築建物に省エネ義務化」
   -2014年9月19日、日経新聞、一面

「中古住宅の診断義務化 空き家流通促す」
   -2015年4月27日、日経新聞、一面

「不動産業界の不正疑惑について」
   -2015年5月26日、ワールドビジネスサテライト

「新たな宅地造成を抑制 国交省素案」
   -2015年5月29日、朝日新聞デジタル

これらは、業界関係者にとって当たり前、あるいは問題意識はあっても自らの手で慣習を変えるまでにはいたらなかった従来からある諸課題が、これらの報道によって「一般生活者も知る問題」となった事例の一部です。

政治も、これらの課題に対する動きを活発にしています。自民党は、これからの住宅市場について、2008年に党の住宅土地・都市政策調査会で、既存住宅流通市場の活性化を促進することなどを決議していましたが、その後の市場では構造改革のペースはゆっくりとしたものでした。しかし、2015年5月14日、すでにおこりつつある人口減少と高齢化、あるいは若年層の所得が伸び悩みといった社会構造の変化に対応すべく、中古住宅市場を活性化させることで高齢者をはじめとする住宅・宅地資産を適切に稼働させ、ライフステージに応じた住み替えを可能にし、新たな経済の好循環を実現するため、同調査会に「中古住宅市場活性化小委員会」を設置して本格的に政策検討とその具体化を推進する段階に入りました。大げさに言えば、市場の構造改革は理念の形成期は過ぎ、実行の時代に入ったといえます。

ところで、冒頭で示したような報道による課題の指摘は、例えば、省エネ法の改正は性能的に優良なストックの形成を通じて将来の資産化につなげる、宅地造成の規制は土地市場における需給バランスに対する適正なコントロールを通じて住宅市場における住宅資産の低下を防ぐ、といった具体的なテーマを明らかにしています。また、建物検査の義務化の問いかけは住宅取引の透明性向上によって住宅消費者の安心を醸成し、囲い込みの不正疑惑は取引プロセスの透明性向上は勿論、業者の都合に左右されず住宅不動産の資産価値を市場価値に反映する機会を拡大します。これらのテーマは、いずれも中古住宅取引市場への信頼を高めることで取引の活性化につながります。

これらの切り口は、一見入り口は違いそうですが、その目的は「住宅不動産の資産化」のための施策の切り口といえます。ここまで示されたような課題への対応が進めば住宅取引における競争のルールは大きく変わり、住宅不動産の性能や取引サービスの品質で競争をするための備えが必要な事はもちろん、対応が遅れ従前までの事業プロセスや取引の進め方では、競争のスタートラインにも立たせてもらえない時代が訪れると考えられます。

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