シリーズ調査を読む#008
持ち家長期継続居住者の住宅需要に関する意識調査

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平成27年3月 株式会社長谷工総研、一般財団法人ハウジングアンドコミュニティ財団より
~50歳以上の20年以上継続居住者へのアンケート調査~

世の中には様々な団体や組織によって市場動向の調査リリースが行われています。この企画は溢れる様々な市場調査から「HyAS View」読者の皆様にとって関心の高い、あるいは有益と思われる調査結果から参考となるトピックの紹介・解説、事業運営の参考となる情報提供ができればと考えています。

はじめに

この調査の目的には、少子化や高齢化の進展による人口・世帯減少から生じる空き家増加といった事態に対する数量的バランスをとる必要性に加え、同じく少子化や高齢化の進展により需要が高まる介護支援や子育て支援を組み込んだ住まいの提案が求められるなど、住まいの質的な充足という二つのベクトルが同時に作用しています。このように、ある意味で、複雑な課題を抱える住宅市場において、例えば住宅ローンを完済(あるいはそのめどが立った)した世帯や、居住中の住まいの経年劣化や老朽化問題を抱える世帯など、住宅への期待や必要性における過渡期を迎える世帯の意識を調べることで、今後の複雑な住宅市場における需要を探ること、とあります。

長谷工総研さまでは、本調査をホームページ等でダイジェスト版のみ公開していますが、今回、ご厚意により調査結果をいただくことができました。長谷工総研さまには感謝いたします。今回は、HyAS Viewの読者にむけ、今後の市場動向の参考になると思われる部分を戸建ての結果を中心ピックアップしてお届けいたします。どうぞお読みください。

なお、調査の概略は、手法はインターネット調査、対象は1都3県の50歳から79歳男女、条件として持ち家(マンション、戸建て)に20年以上居住する者、となっています。

1.戸建て住宅に住むことの満足は広さと間取りから

まず始めに、現在居住している住宅の満足度について聞いた結果を取り上げます。

戸建てとマンションで「満足度評価の差が大きい項目」に着目して、戸建ての方が高い満足度評価を得ている項目をみると、「住宅の広さ・規模」、「デザイン・間取り」の二つとなっています。一方で、戸建て居住者の満足度評価が劣る項目は、「気密性、断熱性」、「立地条件・利便性」、「住環境」となっており、特に「気密性・断熱性」の評価はマンションの結果とかい離が大きい結果となっています。また全ての中で相対的に満足度評価の低い項目として「バリアフリー対応」が目立っています。

これらが示しているのは、時間経過とともに住宅に関わる(性能を高める)技術や(備えるべき機能に対する)考え方が変わるのに対し、いったん建ててしまった住宅の性能や機能は、住み始めて生じる必要性に応じて更新されていないことを示すと考えられます。

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2.居住者の年齢帯で満足度評価は変わる

満足度評価について、居住者の年齢帯別に評価差があるのかを確認したものが図表2の結果です。この調査は大きく分けて50代、60代、70代に聞いていますが、明らかなことは、年齢帯があがるほど満足度評価が高くなっているということです。

常識的には築後年数からみて、後に建てられた建物のほうが高い性能を持つはずと考えられます。中古で取得する場合もあり得るので、一概に言い切ることはできませんが、可能性としては、70代の居住者が住む住宅より50代の方々が取得した住宅のほうが築後年数は短く、つまり性能的には優位であると考えられます。しかし、図表2で示されている結果からは50代の満足度評価より70代の満足度評価が高くなっています。なかでも特に差が大きい項目は住宅設備です。今回の調査対象は50代とはいえ継続居住を20年以上している方々への調査ですから、ここでも一度手にした住宅には最新の設備を追加する、更新するといった費用投下がなされていないと考えられます。とともに、高齢な居住者ほど、この先に現在の住宅を使い続ける年数が短いと考えるであろうことから、現状維持で十分というあきらめや不満を我慢する傾向があるのでは、ということも指摘できそうです。

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