シリーズ調査を読む#012
不動産取引において求められる「情報」について
「平成28年版土地白書(国土交通省)」より

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世の中には様々な団体や組織によって市場動向の調査リリースが行われています。この企画は溢れる様々な市場調査から「HyAS View」読者の皆様にとって関心の高い、あるいは有益と思われる調査結果から参考となるトピックの紹介・解説、事業運営の参考となる情報提供ができればと考えています。

「土地白書」は、国土交通省から毎年発表されており、各種データを用いた土地に関する動向分析や次年度の土地に関する基本施策等をまとめた報告書です。今回は「平成28年版土地白書」の中で大きく取り上げられたテーマの一つである「不動産情報の多様化に向けた課題や取組」について、注目すべき調査結果をご紹介します。

1.不動産取引に対する消費者の不安

国土交通省が実施した「平成27年度土地問題に関する国民の意識調査」によると、現在不動産取引を考えている層の7割以上が、不動産取引を「難しくてわかりにくい」又は「なんとなく不安」と感じているという結果が出ています。また、そのように感じる理由を尋ねた設問では、「不動産の価格の妥当性を判断しづらいから」、「不動産の品質の良否を見極めづらいから」などが多く選択されています(図表1)。この結果から、品質の良否を含む不動産の「価値」とそれに対する「妥当な価格」が判断できないことが、不動産取引に対する消費者の不安感を醸成する大きな要因になっていると考えられます。

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2.消費者が求める情報

ところで、消費者にとっての不動産の「価値」とは、どのような要素で形成されているのでしょうか。それを考えるヒントとして、同調査による「不動産取引時に価格以外に参考にする情報」という回答結果に着目しました。(図表2)その回答において、物件の周辺環境・土地条件に関する情報である「周辺の公共施設等の立地状況・学区情報」「ハザードマップ等の災害に関する情報」、物件単体の状態に関する情報である「住宅の維持保全に関する情報」「過去の取引履歴」など対象物件そのものだけではなく物件の周辺的な情報も重視されていることが分かります。つまり、消費者にとっての物件の「価値」判断は、物件単体の状態のみならず、周辺環境や土地条件も大きな要素になっていると考えられます。

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3.まとめ

ここまで見てきたように、消費者は物件単体の状態及び周辺環境や土地条件を基に、物件の「価値」を判断していると言えそうです。不動産取引に関わる仲介業者は、そうした消費者の判断基準を理解して「価値」判断するために必要な情報を適切に提供できているでしょうか。消費者が安心して不動産取引に臨めるように、物件選びの「素材」としてこれらの情報を提供できる環境の整備が、今後の不動産取引市場においてますます重要になってくると考えます。

(ハイアス総研 俣野)

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