歴史的建造物の活用と持続可能な街の設計が街や市民に富をもたらす
~経営研究会特別補講2016ドイツ・スペイン~

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訪問地レポート3 ドイツ・フライブルク編
都市計画(Fプラン、Bプラン)で
「普通」の住宅地の持続可能性を高める

続いて、環境首都フライブルクの持続可能な街づくりの事例です。一つ目はヴァインガルテン地区の断熱改修プロジェクトです(画像4)。ドイツの計画では、2022年に脱原子力、2050年に脱化石と定められています。省エネルギーの観点では、2008年を起点として毎年2.1%ずつ減らしていくことで、50年後には半減させる計画です。それを実現するための対策として、(1)発電所の効率改善(再生可能エネルギー含む)、(2)自動車社会の見直し、(3)建物の断熱、が3つの柱となっています。

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画像4
フライブルク/ヴァインガルテン地区断熱改修

ドイツには現在4,050万戸のストック住宅がありますが、そのうち3,050万戸には未だ断熱材が入っていない状態とのことです。この状況下において全戸の省エネルギー化を実現するためには、まず新規に建てる住宅はゼロエネを必須(UA値は0.2前後)とする。その上で、断熱改修を毎年100万戸実施することで、30年後にはストック住宅全体が省エネルギー化される方針とのことです。

ここヴァインガルテン地区では、都市計画で「断熱改修」「バリアフリー」「面積を減らして戸数を増やす」を規定して、性能向上とともに高齢者や家族構成に合わせた居住環境の充実化を実現しています。

二つ目の視察地はヴォーバン地区です。フライブルクの中心から約3kmの距離に位置し、公共交通機関のトラムによりアクセス良好な住宅エリアです。ここでの都市計画ならびに省エネルギーの取り組みは過去の紙面で紹介しておりますので割愛しますが、Fプラン(都市計画)とBプラン(地区詳細計画)により自治体が街づくりを先導し、結果として人口密度を高め、空き家率が2%以下となり、地域内で消費するエネルギーを管理する状態まで、都市としての成熟度が高まっています。

訪問地レポート4 スペイン編
地域の歴史的資源を観光産業に有効活用した街づくり

スペインは、観光産業がGDPの約12%を占めるほど重要な産業となっており、2014年の国際観光客到着数は、フランス(8,370万人)、アメリカ(7,475万人)に次いで、第3位(6,500万人)に位置する観光大国です。観光産業が発展すると、直接的な入場収入に加えて、そこでもたらされる消費、宿泊・運輸、維持管理・メンテナンスに関わる事業など、地域の経済発展と雇用問題(特に若年層)の解決に大きな貢献をしています。

今回視察したバルセロナのサグラダファミリア(画像5)、トレドの城砦都市、マドリードの歴史的建築物は、地域の観光産業の拠点として、その土地固有の歴史・文化を承継しながら現代もなお存在感を発揮しています。当時の面影を残すため、都市計画において、例えば通りに面した建造物の高さや色使いを一定に制限したり、バルコニーで洗濯物を干すなどの行為を禁止したりするなど、街の景観の統一感を重要視した法規制がなされているそうです。

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画像5
バルセロナ/サグラダファミリア

地域工務店のこれからの経営において、直近の業績確保はもちろん重要ですが、経営者としては目線を上げ視野を広くした上で企業経営に邁進することも重要になってくるのではないでしょうか。

(鵜飼)

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