CMS(コスト・マネジメント・システム)を活用した収益性改善
~もう差はつき始めた!CMS会員合同研修で報告された工事原価適正化のポイント~

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CMSによる原価管理とは?

住宅市場を取り巻く環境変化は工事の件数や一工事あたりの請負規模で見ても楽観できる見通しはありません。しかしそうした中で生き残り、さらに収益向上を実現するために、原価管理の重要性はますます高まります。そのためには、段階ごとの原価確認を日常業務に定着させ、繰り返し見直すという基本の着実な実施しかないと考えています。そのためには、

(1)自社の予実状況の見える化(現状の把握)

予実状況(工種ごとの見積原価、実行予算、工事原価)を見える化します。

(2)適正原価の把握(標準原価の設定)

各項目ごとに自社の適正原価を把握し標準原価として設定するとともに、環境変化を考慮し定期的に見直します。

(3)ギャップ要因の把握と解消

適正原価との実際の自社原価の差異を分析し、差の大きな項目を特定します。そして、その要因について各工事業者と話し合うことで適正化を図ります。これは単なるコストダウンではなく、適正な人工数・単価を設定し下請業者を含め業務効率化、つまり生産性向上を図るための取り組みです。

(4)発注及び原価管理の徹底

設定した標準(適正)原価を基に、着工前の見積や実行予算の作成、発注等の各段階での予実管理を適時・適正に実施できる状態を作ります。

すでに始まっている競争優位性の格差拡大
~CMS会員合同研修から~

去る9月29日、CMS会員合同研修が開催されました。11社が参加した当研修は、上記の(2)適正原価の把握(標準原価の設定)、(3)ギャップ要因の把握と解消について、実際に各社で行っている取り組みとその成果が共有されました。すでに自社の収益性を改善するための取り組みを具体的に始めている会社がある、ということです。本誌では、その発表内容の一部をご紹介します。CMS導入による競争力アップの一端をご確認ください。

事例1:関連事業者を巻き込み原価適正化と生産性向上を目指す(O社)

モニタリングにより、設定した適正原価よりも高い工事について業者とその背景確認を行い、電気工事・給排水工事で2~3%、左官工事で5%程度の単価適正化に成功しました。適正化の次段階に向け、最近は建築現場で作業員の稼働時間を計測し、各工事項目の歩掛の算出にも取り組んでいます。また、各工事業者に集まってもらう場を設け、工事原価や工数の適正化が単なる「値下げ交渉」ではなく、各社の生産性向上に繋がるということを理解してもらい、歩掛の数値等を基に協議を進めていくことも計画されています。

事例2:工程の無駄の発見、修正で収益性改善と顧客満足アップ(S社)

収益性改善への検討を始めてから、各工事業者の見積明細に無駄な項目がないか、細かく確認していきました。その結果、例えば、ある工事で資材荷上げの際のレッカー代として2.4万円が計上されていることに気付きました。他社ではユニック車を所有しているためこの代金が不要でしたので、依頼業者を変更することでこの費用は不要となりました。その他、細かな取り組みを積み上げることで、1棟当たり100万円程度の原価適正化に繋がりました。さらに、この改善により明らかになった分を部材等のグレードアップに活用することで、顧客満足と競争優位性を同時に高めた住宅を提供することができるようになりました。

事例3:発注先を1社⇒複数社に(U社)

電気工事等の項目について、これまで1社のみに工事依頼していましたが、請負先をもう1社増やし、両者から相見積を提出してもらい「指値」で発注できる状況をつくりました。

事例4:作業工程の平準化(T社)

T社では、基礎工事を昔から付き合いのある業者に発注したことで、年々上昇する工事単価に対しても特にその理由を確認していませんでした。CMS導入を機に、その要因を確認すると、実は自社が複数案件を同時期に発注していたことで、その業者はひとつの現場に十分な人員が割けず、非効率的な作業が行われていることが分かりました。その後、作業工程をできるだけ平準化して発注することで、基礎工事業者の作業も合理化され、結果として人工数の削減に繋がりました。これを契機に他にも無駄な工程の見直しを随時提案し、工事原価の適正化を実殿されました。

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(研修風景)

最後に

CMSは、原価管理を円滑に行うためのシステムと、それを活かして原価適正化ノウハウ研修などの支援体制がセットになったサービスです。今の経営資源ですぐに取り組めるこのサービスのご利用希望、又は詳細を知りたいという方は、全国各地で開催しておりますCMSセミナーにご参加頂き、その内容をご確認ください。

(俣野/矢部)

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