シリーズ調査を読む#013
住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告
~スマートウェルネス住宅等推進事業の調査の実施状況について~

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「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告会」
配布資料より

さる1月30日、「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告会」に参加してきました。当日は会場に準備された席数がほぼ全て埋まり講演後の質疑も活発に出るなど「健康に影響を与える住宅」に対する関心の高さが伺えました。

この報告会は、国土交通省が平成26年度から取り組んでいる「スマートウェルネス住宅等推進事業」により支援を受けた「住宅の断熱化が居住者の健康に与える影響を検証する調査」から得られたデータに基づく中間結果を公表する会です。同調査は2014から2017年度の3年間にわたり全国で2,000軒・4,000人を対象として、改修の前後における居住者の血圧や生活習慣、身体活動量など健康への影響を検証するもので、平成27年度までに2,759人の改修前調査、さらに165人の改修後調査がそれぞれ実施されました。

平成27年度までに得られた調査データを基に室内環境と血圧など健康関連事象の検証を行ったところ、以下のような住宅室内環境と血圧など健康関連事象との関連が確認されたそうです。

得られつつある知見

1) 冬季において起床時室温が低いほど、血圧が高くなる傾向がみられた。
2) 高齢者ほど、室温と血圧との関連が強いことが認められた。
3) 断熱改修によって室温が上昇し、それに伴い居住者の血圧も低下する傾向が
  確認された。
4) 居間または脱衣所の室温が18℃未満の住宅では、入浴事故リスクが高いと
  される熱め入浴の確率が有意に高い。

中間報告会では、まず健康・省エネ住宅を推進する国民会議の会長である村上周三東大名誉教授から健康・省エネ住宅の推進の必要性について、居住者の健康と地域、あるいは室温との関係などについて基調講演がありました。次に自治医科大学の苅尾教授が、医学の立場から見た温度と血圧・循環器系疾患の関係についてお話をされました。苅尾教授の話で印象に残ったのは「血圧モーニングサージ」という言葉です。日本人は朝の血圧上昇が起きやすい(早朝高血圧)そうですが、この血圧の高い状態に寒冷という「刺激」が加わると疾患の発生確率がかなり高まるという指摘は普段なかなか聞くことができない話でした。あらためて居住空間の温度変化を穏やかにすることの重要性を認識する機会となりました。報告会の最後には、今回の「住宅の断熱化が居住者の健康に与える影響を検証する調査」から「得られつつある知見」として、調査にかかわった慶應義塾大学の伊香賀教授、産業医科大学の藤野准教授、法政大学の川久保氏、北九州市立大学の安藤氏の4氏から、それぞれご担当された分野に関して要点が報告がされました。

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