シリーズ調査を読む#013
住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告
~スマートウェルネス住宅等推進事業の調査の実施状況について~

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ここからは今回の中間報告で配布された資料からいくつか注目した内容とそのポイントを紹介します。この紹介にあたって読む側として気をつけておきたい点を先に示します。それは、今回の報告は「得られつつある知見」として示されていることです。言い換えると、確実な証拠としているわけではないけれども、因果関係が強くありそうに見える分析結果であるということです。今回の調査は、医学的エビデンスとして室温が血圧に与える影響を検証することで、食生活と健康の関係や運動と健康の関係のように、住環境、特に「室温」が健康に関係し、疾患の要因となることが認知されることを目指しているという発表です。少し回りくどいですが、そうした点を踏まえた上でお読みいただければと思います。

図表1は、今回の調査事業に連携した全国で68事業者(2016年度の場合)、47都道府県の協議会、その他21事業者により行われた断熱改修工事(戸あたり上限120万円の補助金、工事の箇所は住宅によりバラバラ)の前後比較です。報告書では居間、寝室、脱衣所の比較が掲載されていますが、ここでは居間の前後比較を抜粋して掲載します。いずれの地域でも上昇が見られ、平均室温で2度、最低室温で4度の上昇が見られます。ちなみに、寝室や脱衣所の結果も平均で2度から3度上昇しています。

図表2は、改修前後で室温の温度の低下、上昇と収縮期血圧(最高血圧)の変化量の関係を示したもので、断熱改修後の室温変化と血圧の関係として温度上昇すれば血圧が下がるという関係が見られました。

図表3は室温と入浴時の湯温の関係です。居間・居室の平均室温と入浴時の湯温・時間の関係変化を示しています。ちなみに図表4は入浴時の湯温・浴時間が入浴事故につながる可能性を示したもので、高齢になるほどその可能性が高まることを示しています。

この二つを読み合わせると、室温を上昇させることが入浴時に発生する危険性を低下させると考えられます。







最後に

断熱改修が、血圧といった体に直接関係があるという情報だけではなく、入浴湯温・時間といった習慣・行動とも関係があるという部分を紹介しましたが、性能向上によって住環境を変えることが人の「暮らし」を変えるという大きな役割を持つ仕事であることが改めて理解できたのではないでしょうか。ハイアスでは、新築時から高性能な住空間の提供を進めるだけではなく、今ある住まいを合理的な費用で部分断熱改修するハウスINハウス事業も進めています。今回の調査中間報告のような情報を世の中に広めることで消費者意識の啓発を進めてゆきたいと考えています。その結果、ビジネスチャンスが拡大するような市場形成に貢献してまいります。

(ハイアス総研 矢部)

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