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ドイツの住宅メーカーの工場も視察しました。同社の工場も前述のウッドファイバー製造工場と同じく持続可能な生産過程が重視されていました。原木加工からプレカット、プレキャストパネル組み立てまで、一連の工程を工場内で完結する住宅生産システムを有しています。
従業員は1,350人で、その1/4は現場作業員。車両220台を有し、1日に150人×2シフトの体制で3~4棟分をつくり、年間800棟ほどの施工数を誇るメーカーです。
この会社の木造住宅の最大の特徴は、12メートルにおよぶ壁を工場でつくり、現場では大型クレーンで積み上げていくという施工方法です。構造材の組み上げから、断熱材の充填、サッシの取り付け、プラスターボードの施工、電気配線、内装まで工場で行い、現場でジョイントするための配線用の穴、作業用の穴も施してあります。屋根も工場生産で、瓦以外は全て工場内で取り付けられ、いずれも、現場で触る必要のない箇所はパテ埋めまで仕上げられます。
実際にパネルを組み立てる工程を視察しましたが、現場では本当にジョイント作業のみで進んでいきます。トラックの荷台に積まれたパネルをクレーンで1 枚ずつ運び上げ、作業員がそれを組み立てるという流れで作業が進むのですが、クレーンのオペレーター1名、トラックの荷台で作業する人が1名、パネルを受け取って施工(ジョイント)する人が3名という体制で、おおよそ2日で外装の防水周りの仕上げと内装下地までが完了するということでした。
ちなみに工場ではオプションの特別仕様希望にも別ラインで応えています。施主の工場見学を受け入れるほか、設備のショースペースもあり、施主はその場で自分の家のイメージを確認して決められるようになっていました。
この高効率住宅生産が求められる背景には、計画的な住宅の総量規制が行われていることも含め、ドイツで慢性的に住宅が不足しているという状態があります。ドイツでは新築においてもこのような生産方法が主流ということで、前述のストックを活かしたリノベーションと合わせ、国内の住宅の平均的な性能レベルが高く保たれる仕組みを直に感じることが出来ました。
パネルを積んだトラック
クレーンでパネルを吊って運ぶパネルをジョイントしてでき上がった2階部分
民泊ビジネスにおいても、高性能住宅生産においても、背景にある日本と異なる社会環境を踏まえて理解することで、それを日本の不動産業界、建築業界に置き換えて考えたときに、どのようにすればビジネスに活かすことができるかというヒントを見出せるのではないでしょうか。
地域の不動産会社、工務店のこれからの経営において、直近の業績確保はもちろん重要ですが、経営者としては目線を上げ視野を広くした上で企業経営に邁進することも重要になってくると考えます。