シリーズ眼を養う#022
R+house 住宅のデザインを探る

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長谷部 勉

有限会社 H.A.S.Market

境界を曖昧にして建築を開放する/モデルハウスの事例

敷地は山陽地方の中南部に位置し、古くから海運による物流の集散地として繁栄した地域にあります。また周辺は、海と山に囲まれ寺などの歴史的な建築物も散見する大変美しい街並を形成しています。
モデルハウスを建設し、この地で新しくR+houseの事業をスタートさせることになった加盟店からは、家族像の設定や空間を規定する様々な要望をいただきましたが、ヒヤリング時に取り分け印象深かったのが「R+houseらしく、見学者が同じ家を欲しくなるような住宅をつくって欲しい。」という一言でした。
そこで、それらを主題にして設計に取り組みましたが、同時に日頃から近代に量産化された中と外が壁一枚で仕切られた住宅に疑問を抱えていたこともあり、主題に加え上述した美しい街並と繋がる境界空間を用いるプランを提案しました。但し、日本の民家に元来存在したそれではなく、高気密高断熱の住居だからできる現代的な接続を試みています。

具体的には、外観はシンプルな箱型をベースとしながらも、元々そこにあったもののように既存の街並と調和させるために、型枠コンクリートブロックを積んだ塀やエフロレッセンス(白華)を予め故意に表した外壁材(※1)などを用い新築特有の真新しい様子を低減させています。また、建物の境界を曖昧にするために、建物と塀により囲まれた庭を設け、出入口付近にはそれに連続する土間空間を設えています。さらに、それと連続するリビングには吹抜けを設けることにより、2階の共用部とも一体化させ、家全体に拡がりを付与しています。
様々な地域で多様な要望を伺いながら設計していますが、時代は均質化された画一的なものから地域アイデンティティ(個性)をしっかり考える時期に突入して来ているように思います。また、R+houseはシステム化された合理的な事業ではありますが、建築家がデザインしていることもあり、それだけに留まらず時代を捉えた住宅をつくることができるシステムに進化して行くことになるのではないかと思っています。
この住宅を欲しがる地域住民が沢山現れることを願いつつ、引き続きR+houseとは何か、地域と呼応する住宅とは何かを考え設計活動をして行きたいと思います。

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