基礎に魅せられた男。基礎工法の合理化こそが、住宅会社と基礎工事会社に相乗効果をもたらす。

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シリーズ企画 「極める」 とは

住宅不動産、建設業界に特化した経営コンサルティング会社 ハイアス ・アンド・カンパニー株式会社(以下ハイアス)は企業理念である「個人が住宅不動産を納得し安心して取得(購入)、居住(運用)、住替(売却)できる環境をつくり」「住宅取得が個人の資産形成に直結する社会の実現」にむけ、業界の共通課題を適切に捉え、その解決策を日々模索しつづけるスペシャリストが数多く活躍しています。このシリーズでは業界の課題解決にむけたハイアスメンバーの「熱い想い」を読者の皆様にお届けします。

【 基 礎 のスペシャリスト】

ハイアス・アンド・カンパニー株式会社
粟津 索

これからの住宅供給においては住宅の耐震性などに加え、住宅躯体の断熱気密性能の高性能化とそれによる長寿命化に対応していく必要性が一層高まっている。住宅躯体の高性能・長寿命化の対応において基礎の高性能化は切り離せません。
そのような現状をどう捉え対応してゆくべきか。ハイアスで基礎業界に長く従事し今でも現場に足繁く通う粟津の話をお届けします。

View 編集部(以下 View):世の中の基礎に関する関心は?
粟津:基礎工事は住宅建築の一部です。住宅と基礎を分けて依頼することはないわけで、施主はあまり気にされていない、というより「住宅基礎の質の違いといわれても…よくわかりません」という方がほとんどでしょう。一方で、「床が温かいか」というところは気にしている方が多いです。「冷えは足もとから」と言いますので気になるところでしょう。足元の断熱には床断熱と基礎断熱があるのですが、そのどちらを採用するかは住宅会社が決めています。「基礎はあって当たり前」ですし施主も住宅会社にお任せの部分ですが、実は基礎をしっかり作らなければ断熱はもちろん耐久性や通気など、基礎の上に建つ建物とその建物に住む施主の生活のクオリティが変わってきますので本当は注目してもらいたい大事な部分です。

View:業界の現状について
粟津:住宅基礎では、現在は「ベタ基礎」が主流となっています。ベタ基礎は強度がある分、従来の「布基礎」よりコンクリート量が多いので原価にしめる材料費の割合が高くなります。また現場での重労働による職人不足の傾向も強くなってきています。一方で発注側の住宅会社からすれば基礎にかける費用はできるだけ抑えたいと考えるので職人は不足しているが発注価格はあがりません。儲からない仕事を若手に後を継がせたくないと考える基礎工事会社も多く、その結果技術の承継もままならず、住宅産業の将来にもかかわる大問題になると考えています。
また、基礎工事の工数は、一般的にはコンクリート打設後の養生期間なども含めてトータルで16 ~ 17日くらいです。もちろんただ単に早ければよいということではありません。基礎の上に建物が載るのですから精度や施工品質は大切です。施主と住宅会社から“任されている”工程だからこそ、品質とスピードを高めて良いものを生産性高く提供することで施工会社の収益性も確保できるようになってほしいところです。
こういった背景をもとに私どもは「高品質な基礎を合理的に施工できる」をテーマに、新たな基礎工法の開発と商品化にトライしてきました。

View:合理化のポイントは?
粟津:ターニングポイントになったのは構造計算に基づく基礎形状 (耐圧版、配筋)の合理化工法を20 年以上研究開発してきたJ建築システム株式会社の「耐圧版式グリッドポスト(GP)基礎」との出会いです。立ち上がりは一体打ちの外周部だけで、従来の基礎に存在する内部立ち上がり部分はプレキャストコンクリートの GPを設置、様々な実証実験を経て構造評定も取得している工法です。これは使いたい!とお願いしに伺いました。実棟での施工にて確実に工期短縮出来ることも確認でき商品化に向け一気に加速しました。

View:商品化した新工法。基礎工事会社と住宅会社のメリットは?
粟津:新工法は『HySTRONG』として5月22日にニュースリリースいたしました。型枠として補強 EPS 断熱材を使う分は若干コストアップ要素ですが、今のベタ基礎と比べた
場合「内部立ち上がりがない」ことで「鉄筋」「生コン」「人件費」「型枠損料」「ポンプ車料金」などのコストダウン要素を多く持つことが出来ています。加えて工数削減の効果で1棟の基礎を完成させる期間が短縮できているので基礎工事会社の1施工班あたりの施工可能件数を増やせます。施工生産性が高まることで基礎工事会社の収益性も高まり、住宅会社も工期短縮による収益性向上が見込めます。

当工法では建物の耐久性向上も大きなメリットです。基礎の品質を問う場合、防蟻・防水の話は必ず出てきますが、HySTRONGの基礎外周部は一体打ちとなりますので打ち継ぎがありません。よってシロアリ侵入リスクを極限まで低減することが出来ます。外周部断熱パネルも防蟻のシステムを標準装備してますので土台等躯体構造への侵入は無いことが実験で実証されています。

View:業界の今後とハイアスが目指すものは?
粟津:今回の基礎工法の合理化を通じて、住宅のクオリティを向上させます。この工法を他社との差別化要因にすることが出来た住宅会社がさらに発展する市場を作っていきたいです。
これは基礎業界に限りませんが、若者が建築業に従事したくなる業界にしたいです。HySTRONG工法は住宅会社だけではなく実際の施工をする基礎工事会社の収益性を高めます。この業界で働くすべての人材が生き生きと活躍できることは将来に渡って人材を確保できるパワーになり産業全体の未来が明るくなるのではないでしょうか。

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