経営研究会特別補講2019秋、 北米視察報告

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ポートランドの中心市街地には、長い間、衰退と斜陽により治安が悪化しゴーストタウンと化していた街が、おしゃれなレストランやカフェ、有名な企業が集まるハイクラスな街へと生まれ変わったパール地区(Pearldistrict)があります。かつての荒廃した倉庫街から都市開発によって魅力的な地区に変化したパール地区は「都市再開発の成功例」のモデル地区として、いまやアメリカ国内だけでなく世界中から注目されています。アメリカで最小と言われる一辺の長さが60メートルの街区(ブロック)は、他のアメリカの都市のおよそ半分といってよく、ポートランドの市街地の特徴のひとつで「歩きやすい街」と言われる所以です。パール地区は1980年代まではノースウェスト倉庫地区と呼ばれ、鉄道の操車場や倉庫や工場が集積していた物流・工業地区でした。

治安も悪くギャングなども出現し、ひとり歩きは出来ない街としてその名が通っていました。1972年に制定された都市再生計画ダウンタウン・プランが実施されたことにより1980年代中頃からパール地区もこれまでにない企業や学校が建つようになり、これを見越した大手の不動産会社が1800年代後半から1900年代初頭に建てられた古いレンガ造りの建物を活かしてロフト住宅へと改造した物件が人気を博し、販売価格も家賃も急激に上昇しました。この地区の街づくりの特徴は、レンガ造りの歴史的建造物の外観や雰囲気を残したままリノベーションするエコ・トラストビルを象徴とするリノベーションにあります。時間の流れを受け止め、過去を封じることなく自然に受け継いで都市再生を行っています。もともとアメリカ最小と言われる小さな街区は、歩行者を圧迫するような規模の建物を建てることが出来ないのでまち歩きを促進しています。また新築や改修時には1 階に店舗を設けるストアフロントという規定や、接道面いっぱいに店舗の建物を配置するセットフロントなど徹底した工夫で景観を維持しサスティナブルな街づくりとして各国の都市から注目を浴びています。

上記を整理しますと、ポートランドのまちづくりには、日本のまちづくりでも参考となりえる知見が数多く得られました。

●倉庫街パール地区のコンバージョン
● セットフロント(道路の有効活用)
● コンパクト化(トラムとウォーカブル)
● 街区によるまちの形成(60メートル)
● 人口密度の集積
● ストアフロント(1階に商業施設)
● 地元テナントの誘致(レストラン、小売、健康施設、医療施設)
● 歴史的建造物の再生リノベーション

これらの指標がまちの価値を測る指標となるべく、今後も調査研究を進めたいと考えています。

カリフォルニア州 サンフランシスコ

全米不動産協会総会コンベンション風景

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