シリーズ眼を養う#035
R+house 住宅のデザインを探る

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鹿田 健一朗 様

鹿田建築設計事務所

鹿田 健一朗

敷地は皿倉山を眼前に、遠くに洞海湾と北九州工業地帯を望む南下りの斜面地にあった。

南下りの斜面地は日照と眺望を同時に得られる理想的な立地である。ここは角地のため三方を道路に囲まれ北側道路は2階の床レベル程の高さにあった。また坂を登ってくる車のライトを浴びることも想定できた。この敷地は周囲からのプライバシーを考慮した上で南側を生かすように道路との関係を解くことが最も重要だと想像していた。ご主人は求める家について籠って家族を守る「縄張り」(close)のようなものと表現された。奥様はまだ幼い娘さんの子育てを意識しながら効率的な家事動線と「開放性」(open)を希望された。また南西に見える工業地帯の夜景が美しいとお聞きしたのでヒアリング終了後に敷地に戻り夜景を眺めた。その風景を思い描きながら南面の必要なところに窓を切り必要に応じて大きさを変えて眺望を取り込み、視線をかわしながら日照を得ることを提案した。1階では南西の洞海湾に開き、2階では皿倉山と青空を取り込むように大きな窓を配置し「縄張り」と「開放性」を実現することで、家族が守られて安心し楽しく暮らせる住まいにした。また玄関土間から家族収納、便所、洗面を直線に続く動線を設け家族の生活習慣を自然に行えるようにした。私は勝手に家族の生活習慣動線を「子ども動線」と呼んだりする。それは空間や動線は家族に習慣を導き、人(子ども)を育てると信じているからだ。この家で育つ子ども達は将来どんな大人になって社会にどのように関わって生きていくのだろうかと楽しみに想像しながらいつもプランを考えている。

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