シリーズ眼を養う#037
R+house 住宅のデザインを探る

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春日 琢磨 様

春日琢磨建築設計事務所

春日 琢磨

生活の背景としての遠景

敷地は郊外の密集住宅街にあり、接道側6mを上底、南側境界線16mを下底とする台形状の変形地で、接道する北面を除いた三方向から隣接建物が迫っており、広さがある割に非常に圧迫感を感じました。

その中で敷地奥に僅かではありましたが東方向にのみ遠く山並みが広がる抜けがあり、この遠景を取り込むことを計画の軸としました。

配置計画としては、変形地に対して単純なボックスと6台分の駐車スペースを前面道路から並行垂直に配置し、残りの変形余剰地を庭として整備しました。その結果、敷地東奥の遠景が望める空間を道路側からは見えないプライベートな空間として確保することができました。

内部では、その東方向の抜けに対して生活の中心を設け、遠景が生活の背景として感じられる印象的な開口を設けました。またその印象性を高めるために、住宅全体の各開口部に明確な大きさの差を持たせました。その上で内部空間の突き当たりには必ず開口部を設けるようにし、日常生活の至る所で外部空間を感じ、その小さな経験の積み重ねのクライマックスとしてリビングの遠景が意識されるよう配慮しました。

この開口からの遠景が、閉鎖的な道路側からの印象とは大きく異なる解放的で伸びやかな内部空間を創り出すと共に、ここで暮らされるお施主様家族の原風景としていつまでも寄り添うきっかけになれば良いなと思います。

外部正面はミニマムな表現とし、夜景ではスリットからの灯りが印象的な表情を作り出します。

カーポートから濡れずに入れる玄関を開くと、スリット越しに庭が自然と目に入ります。

遠景を望む開口部。吹抜けを介して自然光を家中に届けてくれます。
4.5帖の吹抜けに対し1面全てを開口部としているので、開放感とともに明確な方向性を持った空間となっています。

吹抜け上部よりリビング、キッチンへと繋がります。

2階の吹抜けに面する場所には読書スペースを設けており、家族の気配がどこにいても感じられます。廊下の突き当たりにも開口部とともにスペースを設けています。

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