空き家の有効活用と歴史的建造物の コンバージョンによる都市再⽣のあり方
〜経営研究会特別補講2015ドイツ・オランダ・イギリス〜

(ページ:1/2)

弊社が開催する経営研究会では、日頃なかなか得ることができない新たな知見や、これからの市場において自社を成長へと導くヒントを得ることを目的として、海外の現地を視察する特別補講を開催しています。

2015年7月の視察では、経営研究会修了生を中心に全国から22名が参加され、都市再生ならびに街づくりの先進事例を有するドイツ、オランダ、イギリスの4都市を訪問してまいりました。ドイツ(ベルリン、ライプツィヒ)では、貴重な地域資源としての既存ストック改修事例を、オランダ(アムステルダム)では、街並みの保存と新しい住宅地の形成を、英国では街並みの保全と資産価値の維持を視察テーマとしています。

訪問地レポート1 ライプツィヒ編
空室率50%の街におけるストックの「再生」

ライプツィヒは旧東ドイツ南部の人口52万人の都市で、古くは紡績業等が中心の工業都市でした。ベルリンの壁崩壊後、住民は移動の自由を得て、西側や住環境の良い郊外への移動が加速して市内が空洞化して、一時は空き家率が50%を超える状況となりました。近年、その状況を打開する新たな取り組みとして、市と民間の事業者が連携して空き家を活用した都市再生ビジネスが注目されており、成果を上げています。

下の写真は、今回の講師である都市再生事業者のローマン氏です。2008年にライプツィヒに来て、1棟目の物件を市内に購入しましたが、放置された空き家は住める状態ではなく、インフラ(給排水・電気設備)整備、次に風呂場とキッチンを整え、最後に冷暖房を整えることで居住可能にしてゆきました。当初はエリアの評判の悪さも相まってなかなか住む人が現れませんでした。しばらくして、家賃の安さに着目した学生やアーティストなどが住み始め、人が人を呼び住民が集まることで自発的に建物の用途を考え、倉庫やスタジオとして使用されたり、1階にテナント(時計店)を誘致したり、様々なアイデアが生まれて規模を拡大しており、現在では、隣接する2棟を市から借りて、合計3棟を運営するような地域コミュニティの拠点が育成されました。同市内では、同様の取り組みが既に60プロジェクト始まっているとのことです。

空室率50%といえば、限界集落という言葉を思いだします。限界集落と言われる場所では需要と供給のバランスは崩れ市場価値は低下するのが常です。実はローマン氏が初めて買った建物も、€12,000(約160−170万円)と破格の低価格でした。しかし、その後にセルフビルドを重ねて価値を回復させ、結果として賃貸として資金回収が出来る住宅賃貸市場の再興につながった事例と言えます。

37-2-2

page: p1 p2

ページトップに戻る