ヤマダがヒノキヤをTOB 日本の市場で起きる寡占化とは?

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
今日は、市場縮小と寡占化についてです。
これからそこかしこで資本の集約が始まるのでしょうね。
さて、個店はどうすればよいのでしょうか。

 

■住宅業界で資本集約が始まっている

私は住宅事業支援の仕事をしています。「住宅業界でこれからこういうことが起きますよ」と、よく見聞きしていた話がいよいよ現実化してきたなと感じます。
↓↓↓

<ヤマダ、ヒノキヤにTOB 最大126億円>
(2020年9月9日付 日本経済新聞)
『ヤマダ電機は8日、住宅メーカーのヒノキヤグループをTOB(株式公開買い付け)で子会社化すると発表した。発行済み株式の50.1%を取得する方針で、投資額は最大で126億円となる見通し。ヤマダは本業の家電量販に加え家具や住宅事業を収益の柱として育成する考えで、ヒノキヤグループが得意とする冷暖房システムなどを活用する。』

これは決して経営不振に陥った会社を救済するようなM&Aではありません。ヒノキヤグループの直近の業績は、売上1,240億円(前期比5.4%増)、
当期純利益35億円(同48.3%増)ということで、かなり好調です。
これはお互いの得意分野を活かして、さらに強くなっていこうとするM&Aです。

ヤマダ電機は近年、本業の家電量販事業に加えて住宅事業に本格的に取り組んできました。ヤマダグループの傘下には、ヤマダホームズとレオハウスがありますが、2社でおよそ年間4,000棟の着工があります。ヒノキヤも年間4,000棟規模ですので、今回のM&Aにより単純合計で年間8,000棟規模のグループになります。

これで新築戸建市場では、積水ハウス、大和ハウス、一条工務店、タマホームといった大手と肩を並べる規模になりますね。

また、ヤマダグループもヒノキヤグループも傘下に部材会社があります。
お互いに販路を拡大することで、生産規模も拡充し、生産効率を上げて単位コストを下げる、といういわゆる「規模の経済」を狙ったM&Aでもあります。ヤマダ、ヒノキヤ双方にとって良いM&Aだと思いますね。

 

■日本の市場で起きる「寡占化」とは?

住宅業界ではこれからもこういった話が増えていくでしょう。エリアを統合するような水平型のM&Aや、商流の川上と川下が統合するような垂直型のM&Aなど、資本集約が進んでいきます。
そのようにして、住宅市場のプレーヤーの数は集約されていき、地域ごとの各個社別の戦いからグループ間の戦いになっていくでしょう。

このように市場を構成するプレーヤー(事業者)が集約されていって、上位の主要プレーヤーによって市場が支配されていくことを「寡占化」といいます。一般的に、市場が成熟もしくは縮小を始めるくらいの段階になると寡占化が起きると言われています。

持ち家戸建住宅の新築着工棟数は、年々緩やかに減少しています。
20年ほど前は年間40万戸ほど着工がありましたが、最近は30万戸を切っています。2019年は28万8千戸でした。そして、この先、住宅購入層の人口が減少していくにつれ、減少スピードは加速していくと見られていて、2040年頃にはさらに今より4割ほど市場が縮小するという予想もあるくらいです。

市場が4割縮小すると何が起きるでしょうか?
市場を構成するプレーヤーの売上が一律に4割落ちるわけではありません。
4割のプレーヤーが市場から退場させられるのです。勝ち残った一部の業界大手や資本集約したグループ数社で市場をシェアするようになるのです。それが寡占化です。

 

■なぜ個店は大規模事業者に寡占化されてしまうのか?

この、市場の寡占化が起きているのは住宅業界だけではありません。
日本の市場そのものが成熟した市場です。人口減少を伴う少子高齢化で多くの市場は縮小していきます。

魚屋さん、肉屋さん、八百屋さん、時計屋さんとか洋品館など、個店で構成されていた街の商店街は、すでに大型スーパーやコンビニの台頭によって市場から退場させられました。
小売業界全体で見ても、アマゾンやネット通販大手などの大規模資本による寡占化が今も進行中です。

飲食業界でも同じです。チェーン居酒屋やファミレスなど、効率的に合理化された運営オペレーションを持つ店舗に、個店のレストランが対抗していくのは大変なことです。

経済を回すプレーヤーがどんどん集約されて、大規模な事業者によって生産と供給が効率的になされるようになることは消費者にとって悪いことではありません。より良いものがより安く手に入れることが出来るようになるわけですからね。

一方で、地域や街ごとの特色は失われていきます。画一的な市場になります。都市部ではすでにどの駅前も同じような大手やチェーンストアの看板ばかりです。

昔を懐かしむわけではありませんが、個人的には地域経済は地域のプレーヤーが回している方がいいと考えています。特に、外食とか小売りとかはその地域の特産を活かしたものに魅力を感じます。
日本の各地が持つ風土や文化に合ったものが、地域をよく知るプレーヤーによって供給され、それに価値を感じる人が購買する。そうして成立している地域が理想的な姿ではないかと思うのです。

そもそも、なぜ個店が大規模資本に寡占化されてしまうのかというと、まず生産性が低いからです。そして大規模資本にはない特色を出せていないからです。
大規模資本は、最新のテクノロジーを取り入れることが出来て、生産工程には無駄がなく、規模の経済性を発揮することで生産原価も低い、そしてマーケティング技術も高いので効率的に顧客を獲得していきます。

そんな大規模資本に対抗していくためには、大規模資本にはない特色を打ち出す必要があります。
体力勝負の価格競争では勝てませんので、自社にしかない強みを形にして、少し上の価格帯で勝ち残っていくべきです。そのようにして小規模なりに生産性を上げていくしかないのです。

 

■頑張れ、地元の工務店

話を住宅産業に戻します。
新築戸建て住宅市場では大手企業の市場シェアは2割ほどで、残りのおよそ8割は地域に根差して事業を行っている、「地元の工務店」と呼ばれる小規模なプレーヤーたちが担っています。

住宅事業は地域密着産業です。「地元の工務店」の中には、地域の風土、地域の文化に合ったこだわりの家づくりをしている会社が多くあります。住宅にとって大事な耐震性能や断熱性能、耐久性能でも、決して大手に見劣りしない家を丁寧に作っています。

しかし、良いものを作っているのだから高くて当たり前、というのではお客様はやってきません。品質を落とさずにコストを抑え、生産性を上げる努力を続ける必要はあるでしょう。

課題は生産性なのだから、生産性高いやり方を学び、自社内に取り込むことが出来れば必ず課題は解決できます。なにより中小工務店に足りていないのは、それを実行する「人財」です。経営者が自ら率先垂範で頑張るのはもちろん大事ですが、一人でやれることには限界があります。
有望な「人財」の採用と育成は経営者の最も重要な仕事のひとつです。意欲のある「人財」は、社会貢献度が高くて、自らも成長できる環境に身を置きたがるものです。
経営者は、社員に高い志と新しいものを取り入れる柔軟な思考を示してあげていただきたい。そして会社が成長した先にある夢を語っていただきたい。優秀な「人財」はそんな経営者の下に集まるものです。

住宅市場の8割を占め、地域の住環境を支えている地元の工務店。ここを市場の縮小とともに枯らしてしまうのではなく、成長させることが地域経済にとってとても大事なことだと思います。

地域の経済は地域のプレーヤーで回す。私たち支援事業者も微力ながらそこに少しでも貢献できればと思っています。

今回は以上です。

2020年9月15日 火曜日 17:33 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

安倍首相、辞任 評価が分かれるアベノミクスを振り返る

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
安倍首相が辞任しました。安倍政権の看板政策「アベノミクス」を振り返ってみたいと思います。

 

■安倍首相、辞任

今週のトップニュースといえば、こちらでしょう。
安倍首相、志半ばで辞任です。
↓↓↓

<安倍首相が辞任 持病再発で職務困難>
(2020年8月29日付 日本経済新聞)
『安倍晋三首相(自民党総裁)は28日夕、首相官邸で記者会見し、辞任する意向を表明した。持病の潰瘍性大腸炎が8月上旬に再発し「体力が万全でない中、政治判断を誤ることがあってはならない」と説明した。新総裁が決まり次第、内閣総辞職する。』

持病の再発ということで致し方ないことだと思います。
安倍首相にとっては、ご自身が「必ず自分の手で成し遂げる」としていた日本人拉致問題や北方領土問題を解決できなかったこと、そして政治的理念でもあった憲法改正にも手をつけられなかったことは無念であっただろうと思います。

評価する声、評価しない声、安倍首相ほど賛否が分かれる政治家もいないと思いますが、それくらい存在感があったということでしょう。
まずは7年8か月もの間、国のトップという重責を担われたことに一国民として感謝したいと思います。
お疲れ様でした。

 

■評価が分かれるアベノミクス

安倍政権の看板政策といえば、「アベノミクス」。
これも評価が分かれるところです。

「金融緩和」+「財政出動」+「成長戦略」。
これを「アベノミクス三本の矢」として政策を打ち出していきました。

金融緩和でマネーストックを増加してデフレを抑制するとともに、円高を是正する、財政出動で需要を喚起して景気回復を目指しました。
これらの政策は企業の後押しとなり、企業業績は拡大。結果、安倍首相が就任した当時1万円程度だった日経平均株価は2万3千円と2倍以上に上がりました。

日本企業の業績の回復に伴って雇用も拡大。有効求人倍率は上がり、失業率は下がりました。コロナ前の2019年後半には失業率2.2%と過去最低水準にまで下げることができました。

日本企業のキャッシュフローは増大し、内部留保も増えました。
これも「日本企業はお金をため込みすぎ」などと批判も多かったのですが、結果として日本の大手企業は新型コロナで経済活動が停滞しても持ちこたえられるだけの耐性を持つことが出来ました。これは幸いだったと思います。

「安倍首相辞任」の報を受けて市場は動揺しました。
8月28日の午後2時頃から日経平均株価は一気に600円ほど下げました。
国債が売られ、一時的に長期金利は上昇、円も急伸しました。

それが、週が明けて31日午前、株価は再び上昇し、市場は元の平穏さを取り戻しました。
これは、経済政策や新型コロナウイルス対策など安倍政権の基本路線を引き継ぐとみられる菅義偉官房長官が出馬を表明したからでしょう。

これら市場の動きは安倍政権の一連の経済政策が、株式市場の、特に影響力の大きい海外投資家などから評価されているということだと思います。

 

■アベノミクスが失速した要因

ただ、アベノミクスはスタートこそ良かったものの、明らかに後半は失速しました。
GDPの実質成長率は、就任当初こそ2%を超えていたものの、2度の消費増税のたびにマイナスに転じます。そして最後はコロナによって結局GDPは安倍政権前の水準まで落ちでしまいました。
安倍首相任期中の実質成長率の平均は1.1%だったようです。

金融緩和をどれだけ続けても、毎年膨大な財政出動をしても、需要はなかなか喚起されません。物価2%上昇のマイルドインフレの目標にも届かず、最後まで経済回復の軌道に乗せ切れませんでした。
副作用として、市場の買い支えで日銀の資産が膨張しましたし、大きな財政支出を続けたことで国の負債を増やしました。

これはアベノミクスが失敗だったというよりも、日本が抱えている人口減少と少子高齢化という経済拡大にとってはマイナスに働くパワーが強すぎたのだろうと思います。この経済的にものすごいマイナスのパワーを持つ構造的な問題に対しては、本質的な日本経済の構造改革が必要だったのでしょう。
ただ、そんなことはアベノミクスを設計した安倍政権のブレインのみなさんも当然わかっていたことで、当初から、「金融緩和」は現下のデフレを抑えるための対症療法、「財政出動」は需要喚起の呼び水、本丸は産業構造を変える「成長戦略」、としていました。

いくつか打ち出した「成長戦略」で最も上手くいったのは「観光立国」への転換でしょう。ビザ発給要件の緩和などで、訪日外国人を年間800万人程度から3,000万人超へと4倍近くに増やしました。(これもコロナで吹き飛んでしまいましたが・・・)

しかし、それ以外はいまひとつです。「デジタル社会化」への対応は他国に比べても明らかに遅れていますし、廃業率と開業率も目標の10%からかけ離れ、産業の新陳代謝も起きていません。日本経済の問題点である低生産性も大きな改善は見られていません。

『アベノミクス失速』としているどの記事や評論を読んでも、3つ目の矢である「成長戦略」の難しさに触れています。かように産業構造を変えて成長軌道に乗せるというのは難しいことなのだと感じざるを得ません。

 

■次期政権に期待するもの

さて、次の政権です。
次期政権は、「新型コロナ対策から東京オリンピックへの道すじをつける内閣」とでもなるでしょうか。
新型コロナへの対応の重要性から「政治の切れ目は作れない」ということで、スピードを重視して党大会ではなく両院議員総会で次期総裁を選ぶことになりそうです。そうなると次期総裁の任期は21年9月までの1年間です。

だから早くも「次の次」の話が出ているくらいですね。
もし、次期政権が短期政権を前提としたものになると、政策の話よりも政局の話がメインになってしまわないか、ということが心配なところです。

市場は政治的な停滞に失望します。市場が期待しているのは「これなら日本企業はより強くなっていくな」という期待が膨らむような成長戦略です。

安倍政権が7年8か月かかっても軌道に乗せることが出来なかった「成長戦略」は、長期的な視点が必要です。次期政権はコロナ対応で大変だとは思いますが、どうか短期的な対策だけでなく、長期にわたる大きな方向性も示してもらいたいものだと思います。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年9月1日 火曜日 17:06 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

バイデン氏有利で進む米大統領選

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
今回はアメリカ大統領選挙についてです。
共和党トランプ大統領の政策と民主党バイデン氏の政策、果たしてどちらが支持されるのでしょう。

 

■バイデン有利で進む米大統領選

2020年11月にアメリカ大統領選が行われます。
現職のトランプ大統領に挑むのは、民主党のジョー・バイデン氏です。
現時点では、「バイデン氏がトランプ大統領に対して優位に立っている」
というようなアメリカの世論調査を報じるニュースが目立ちますね。
日経新聞は「バイデン氏完勝か」というような記事を出しました。
↓↓↓

<「バイデン完勝」起きるか>
(2020年8月1日付 日本経済新聞)
『投票日まで3カ月というのに満場の選挙集会も支持者の熱狂も消えた米大統領選挙で、民主党の候補指名を確実にしたジョー・バイデン前副大統領の優勢が続く。(中略)
敵失に乗じたバイデン氏の圧勝か、終盤の猛烈な追い上げで大接戦をトランプ氏が制するか。荒っぽい予想だが、大統領選はこのどちらかに転ぶのではないか。』

バイデン氏の人気が高い、というよりは、トランプ大統領の人気が下がっていると言った方がいいでしょう。
トランプ大統領の最近の支持率は限りなく30%台に近づいていますが、
ここまで人気が下がった理由は、まずは新型コロナに対する対応が杜撰で、国内で感染を拡大させてしまったこと。そして黒人差別に対する抗議デモに対して手荒く対応したことが人気低下に拍車をかけているように見えます。

これが日経新聞記事のいうところの『敵失に乗じたバイデン氏の圧勝』となるわけですね。

 

■バイデン氏の基本政策は?

さて、もしバイデン氏が大統領になったらアメリカはどうなるでしょう。

まず共和党(トランプ大統領)と民主党(バイデン氏)の大きな政策の違いからいきます。
共和党が「小さな政府」を志向して、企業や富裕層を重視するのに対して、民主党は「大きな政府」を志向して、労働者や中・低所得者層を重視した政策を取ります。
なかでもバイデン氏は、「中道左派」といわれています。民主党候補で若者に人気のあったサンダース議員ほど左派的な政策は取らないものの、企業や富裕層への課税を強化して社会保障の充実や環境対策に力を入れるとしています。

バイデン氏はオバマ大統領の時の副大統領です。
ですからその政策はオバマ政権時のものに近いですね。基本的にはトランプ政権によってひっくり返されたオバマ政権時の政策に、ふたたび戻すことを基本理念にしていると言われています。

例えば税制改革です。
バイデン氏は民主党候補として「大きな政府」を志向していますので、
基本的に増税路線です。
法人税は、トランプ氏が35%だったものを21%に下げたのですが、それをまずは28%まで引き上げます。
所得税の最高税率は現在の37%から39.6%に、そして株式などのキャピタルゲイン税は現在の20%から39.6%に引き上げます。
総額で4兆ドル近い増税を行うとしています。

これは経済的にはブレーキをかけることになります。
これまで好調だったアメリカの株価も下落するのではという見る向きも多くあります。

トランプ大統領は、「バイデンが大統領になると景気は悪くなる」として、ここを攻めどころとしています。
バイデン氏とは逆にトランプ大統領は、「キャピタルゲイン税の最高税率を今の20%からさらに15%に引き下げる」として市場からの支持を得ようとしています。

 

■バイデンが大統領になると景気は悪くなるか?

トランプ大統領は、その言動やふるまいから大統領としての資質を問われることが多いのですが、経済政策に関してはまずまずの成果を上げてきたと思います。
法人減税や金融規制の緩和、「アメリカンファースト」として自国調達を徹底させるなど、アメリカ経済のためになりふりかまわず邁進してきた印象です。
結果、トランプ大統領が就任してからの4年間でアメリカの平均株価(ダウ)は10,000ドル近く上昇しました。

では、「株式市場にネガティブな影響を与えるだろう」と見られている
バイデン大統領の誕生が現実味を帯びてきた現在、株式市場は下落し始めているのか、というと・・・・、それほどでもないですよね。

これは、バイデン氏が左派といっても経済も重視する中道路線である、
という安心感があるためだと思います。

増税路線ではありますが、同時に景気刺激策も打ち出しています。
「バイアメリカン構想」といって、米企業から政府が調達をする予算として
4年間で約4,000億ドルもの巨費を投じるとしています。同時に製造業雇用の創出にも巨額の予算を充てる予定です。

また、バイデン氏が掲げる「国際協調路線」も好感されているようです。
例えば、対中政策。
バイデン氏も中国には厳しく対応するとはしていますが、その中身はだいぶ違います。
トランプ大統領が高い関税で脅したり、ハイテク企業を強制排除したりしているのに対して、バイデン氏は、不公正な取引は是正するものの基本的には協調路線です。中国との貿易戦争では、実はアメリカ経済も小さくない打撃を受けました。例えば製造業では、中国からの安価な素材や部品が入ってこなくなったことでサプライチェーンが分断されて、結果的に製造コストが上昇しました。中国製の日用品や衣料品なども値上がりしました。
これらのツケを払っていたのは実はアメリカの消費者だったりします。

「自国第一主義で強いアメリカ」から、「国際社会と協調していくアメリカ」となることで、他国との無用な摩擦が減ることが期待されているのだと思います。

さらに、新型コロナです。
これだけコロナで経済が大打撃を受けている中、もし、バイデン氏が自らが掲げる増税路線を先送りしたり、凍結させたとしても民主党支持層はそれほど失望したり反発したりしないのではないかと思います。もし、バイデンが増税政策を凍結したりしたら、「バイデン・サプライズ」として株高になるでしょうね。

 

■トランプ大統領と180度異なるバイデン氏の環境政策を評価する

日本にとっては「国際協調路線」を取るバイデン氏はやりやすいでしょう。安全保障面でも経済面でも、日本には良い影響はあってもそれほど悪い変化は起きないと思います。

私が個人的に歓迎したいのは、バイデン氏の環境対策です。
バイデン氏は、地球温暖化対策などに4年間で約2兆ドルを投じるとしています。
再生可能エネルギーへの投資を拡大する「クリーンエネルギー革命」を掲げ、2035年までに電力部門からの温暖化ガス排出量をゼロに抑えることを目標としています。
これら環境問題に対する姿勢はトランプ大統領とは180度異なりますね。
トランプ大統領は「地球温暖化はデマだ」として、パリ協定からも離脱して、自国の化石燃料関連産業界からの支持を得ていました。

もし、バイデン氏が大統領になったら、石油やガスなどの化石燃料関連銘柄は少なくない打撃を受けるでしょう。一方で、ESG投資(環境・社会・ガバナンスなどの要素を考慮した投資のこと)などは加速するかもしれません。

さて、これから大統領選は佳境を迎えます。
コロナの影響で熱狂的ではなく、静かな選挙戦になるかもしれませんが、
その分、両者の政策をじっくりと判断できるかもしれません。

トランプvsバイデン、さてどちらになるでしょうか。
しっかり見ていきたいと思います。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年8月18日 火曜日 18:09 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

セブン&アイ、米コンビニを2兆円買収、市場の評価は?

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
今回は、セブン&アイ・ホールディングスのM&Aについてです。
なんかドラマがありそうな買収ですね。

 

■セブン&アイ社、アメリカで2兆円規模の買収

コロナ禍で企業活動が縮小している中、セブン&アイ・ホールディングスの積極的な事業戦略展開が話題です。2兆円超の買収額は直近では世界最大規模です。
↓↓↓

<セブン&アイ、米コンビニを2.2兆円で買収>
(2020年8月3日付 日本経済新聞)
『セブン&アイ・ホールディングスは3日、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「スピードウェイ」を買収すると発表した。買収額は210億ドル(約2兆2000億円)。
今春の独占交渉では価格面で折り合わず断念したが、業績不振に陥ったマラソン側が実施した入札に改めて応じ競り勝った。』

セブン&アイ社は、北米市場でのコンビニエンスストア事業を『グループ全体の重要な成長ドライバー』と位置付けています。今回の買収はその一環ですね。

現在、アメリカのセブンイレブンは全米に約9,000店を展開していて、店舗数で全米1位です。今回買収する「スピードウェイ」は店舗数で3位の約4,000店。単純合計で約13,000店舗となり、2位の「アリメンテーション・カウチタード」(カナダ、約5,900店舗)を大きく引き離すことになります。

セブン&アイ社は、

『本件取引によって、7-Eleven,Inc.は米国の人口の多い50の都心部のうち47の地域に店舗網を保有し、成長ポテンシャルの大きい北米コンビニエンスストア市場において明確に業界リーダーとしての地位を確立することとなります。』(2020年8月3日付 ニュースリリースより)

としています。

 

■念願の買収成功にも関わらず市場の評価は・・・

今回のM&Aは復活案件です。2020年に入った頃に「両社が交渉に入った」という報道がありましたが、その後、どうやら買収価格で折り合わずセブン&アイ社が断念していました。

これが第一報の記事→
<セブン&アイ、米コンビニ買収へ独占交渉 1万3千店規模へ>
(2020年2月20日付 日本経済新聞)

これが破談の記事→
<セブン&アイ買収断念 店舗拡大戦略、高値が阻む>
(2020年3月6日付 日本経済新聞)

それが、新型コロナウイルスの拡大や原油安などの環境変化もあったのだろうと思いますが、最終的に当初提示額の220億ドルから210億ドルと、10億ドルも下がった額で合意できました。
まさに「念願の買収合意」だったのではないかと思います。

しかし、市場の評価はいまひとつです。
ニュースが流れた昨日(8月3日)のセブン&アイ社の株価は、前日比-4.8%も下落。年初来安値を更新しました。日経平均が2.2%も上昇する基調の日でしたので非常に目立ちましたね。

全米トップを実現する大型買収なのに、なぜ評価されないのでしょう?

 

■市場の評価は「割高」?

今回の買収案件を活かしてセブン&アイ社が描いている今後の事業戦略を市場は懐疑的に見ている、要するに、「期待するリターンに見合わない高い買い物だ」と見ている向きが多いということだと思います。

周知のとおり、日本国内のコンビニ市場がすでに飽和状態です。
これまでの出店拡大戦略では今後の成長は見込めません。
だからコンビニチェーンなどの流通大手各社は、EC(デジタル商取引)分野への対応とか、ファミリーマートのような伊藤忠商事による垂直統合とか様々な手を打ち始めています。

そんな中で、セブン&アイ社は、米国大手のライバルの買収という従来型のマーケット規模を追求する戦略に多額の投資をしました。この戦略は、自社の独自資源やノウハウを買収先につぎ込んで効率的に規模を拡大していくという、これまで大手小売事業者がM&Aでやってきたことの延長線上にあります。

既存の事業モデルはすでに終焉を迎えていて、もはや規模を追求する時代ではないと言われている小売事業界で、「日本が飽和したからアメリカ?」という感じです。

しかも、買収先の「スピードウェイ」は、「コンビニ併設型のガソリンスタンドチェーン」です。
どちらかというとガソリンスタンドが「主」でコンビニが「従」です。
これまた周知のとおり、ハイブリッド車による燃費向上やEV(電気自動車)の普及にともなって、すでにガソリンスタンドの店舗網はレガシー(過去の遺物)化すると見られています。

テスラがトヨタの時価総額を超える時代です。そんな時代に、ガソリンスタンドとコンビニ事業のチェーンで全米店舗網トップになるM&Aです、と言われても新味に乏しい、だから評価されていないのだろうと思います。

しかもその買収額が、安くなったと言っても210億ドル。
セブン&アイ社のリリースでは、節税効果や店舗の統廃合や資産の売却などで実質120億ドルくらいの買収だとして割安感を伝えていますが・・・。

さて、市場の評価とセブン&アイの目論見、どちらが正しいのでしょうね。

 

■セブン&アイという気骨ある組織に期待

M&A場合の企業価格の算定の目安のひとつに「利益年倍法」というのがあります。
例えば、「買収価格は、企業が上げている年間収益の10年分程度」といったものです。
「買収先企業の利益で投資額を何年で回収できるか」という考え方ですね。

セブン&アイ社のリリースによると、スピードウェイの2019年のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は9.6億ドル。単純計算で、投資額210億ドルとすると22年、実質の投資額だとしている120億ドルだとしても12年くらいです。「10年分」というひとつの目安に照らしてもちょっと高い印象ですね。

それでもセブン&アイ社は投資しました。世の中がデジタル化していることもガソリンスタンドが時代遅れであることも当然わかっているに決まっています。その上での投資です。

つまりこれは、「セブンイレブンならスピードウェイの拠点網などの経営資源や顧客資産を活かして、新たなリアル小売りビジネスを創造することができる」という自信の表れではないかと思うのです。

「従来型」か「新時代対応」か、という二択ではなく、
「レガシーを活かして」+「新しい社会にチャレンジする」という感じでしょうか。
例えば、ECサイトで注文したものを受け取る拠点として店舗を活用する、とかですね。

なにより、私がこの記事を見て感じたのは「セブンという組織はすごいな」ということでした。
セブン&アイ・ホールディングスは、鈴木敏文さんというカリスマ的リーダーが引っ張ってきた会社ではありますが、鈴木会長はすでにいません。今は「巨大なサラリーマン組織」です。
ソフトバンクの孫さんとか楽天の三木谷さんのような意思決定の速いカリスマオーナーがいるような会社ではありません。
社内で議論や試算を積み上げた上での意思決定だと思います。
おそらく異論もあったことでしょう。だから一度見送りにもなりました。
それでも諦めずに成約までこぎつけた。これはすごいことだと思います。
気骨のある人たちがいる組織なのだろうと感じ入りました。

そんな気骨のある日本の組織がアメリカで展開するであろう「新しいコンビニ事業」に、実は私はひそかに期待しているのです。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年8月4日 火曜日 16:33 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

銀行が事業会社を経営する効用とは?

こんにちは!ハッピーリッチ・アカデミーの川瀬です。
今回は銀行の新しい取り組みについてです。
銀行が事業会社を経営するそうです。さて、どんな取り組みなのでしょう。

 

■銀行が事業会社経営に進出

新型コロナウイルスの流行で経済全体が沈んでいます。
経営が厳しく、後継者もいない中小企業の経営者の中には廃業を決断する人も出てくるかもしれません。
「そうはさせない」と銀行が動き始めました。
↓↓↓

<銀行、事業会社経営へ 後継難の中小廃業阻止>
(2020年7月10日付 日本経済新聞)
『事業の引き受け手がいない中小企業が廃業するのを防ぐため、銀行自ら受け皿ファンドを創設し始めた。金融庁が事業承継なら事業会社への出資規制を解禁したため、買収も視野に入れる。銀行がホテルや町工場、スーパー、ガソリンスタンドなど事業を経営する時代がやってくるかもしれない。』

三井住友銀行やりそな銀行、百五銀行などが事業承継のためのファンドを設立して、後継者不在の取引先へ出資するようです。

これは「買収」というよりも「支援」という位置づけです。
経営者が70歳以上で後継者が未定の中小企業は100万社以上あると言われています。いわば「廃業予備軍」ともいえる企業が日本の企業の3割強占めていることになります。

高い技術力やブランド力があって、顧客も多くいて利益も上げているのに後継者がいない、そのために事業の継続が出来ない会社が廃業することは社会的な損失です。

そこで、その会社の経営状態をよく理解している取引銀行がその株をオーナー経営者から買い取り、3年から5年くらいかけて譲渡先を探します。
その間に事業を拡大させ、さらに企業価値を高めることが出来ればキャピタルゲイン(譲渡益)も狙えます。

まだ取り組む銀行も少ないし、目論見通りいくかどうかも不安視されていますが、私はこの動きを評価したいと思います。

 

■背景にある金融庁の方針変更とは?

銀行が、融資や一部出資ではなく、経営権を買い取ってまで支援をするような動きを始める背景には、昨秋に金融庁が行った規制緩和があります。
事業承継が目的の場合には、投資子会社を通じての最長5年の株式保有を解禁しました。

従来、銀行による事業会社への出資は原則5%までとされていました。
もともと企業に対して優越的な立場にある銀行が、その立場を利用して経営支配をすることを規制するためです。

金融庁が規制を一部緩和したのは、金融庁の方針が大きく変化したことがあります。
経営環境が厳しい金融機関の生き残りのため、金融庁は「監督庁」から「育成庁」になる、と宣言していました。今、銀行員は融資業務だけでなく、経営改善指導や事業再生、事業承継などの業務のスキルを高めて、地域経済を支える存在になることを求められています。

銀行は、後継者探しの支援やM&A仲介などの単なるマッチング業務はこれまでもやってきました。今回の取り組みでは、銀行が経営責任を負った上で、
5年以内に譲渡先を見つける責務までを負うことになります。

日経記事は、「後継者難の企業の受け皿作りは苦肉の策」としてネガティブに捉えています。
銀行員に事業が出来るのかという懐疑的な見方もあるでしょう。
確かに、「これは金融庁の意向もあるし、やらないと廃業も増えるからしかたがない」というような意識ではうまくいかないでしょう。

「後継者難の企業の経営に積極的に関与して、地域の企業の持つ技術やブランド、雇用を守る!」という強い使命感を持ってやるべき仕事です。
今回、準備を進めている銀行はそれだけの覚悟とある程度の勝算は持っているはずだと思います。

 

■銀行が事業を行うことの効用

銀行が後継者難の企業の事業を行うことにはリスクもありますが、効用もあります。

まず、M&Aが加速すると思います。
本当にすごい技術やノウハウがあって、顧客からの支持も強いような企業なら、「買いたい」という会社や投資家が現われるはずです。
しかし、それでもM&Aが難しいのは、正しい企業価値を判断するための情報が十分に流通していないことと、経営者のプライドやこだわりが邪魔をすることです。
経営者は、自分の会社が売りに出ているというような情報は隠したがります。ですから、買収に興味がある会社や投資家はなかなか良質なM&A情報にアクセスできません。
また、M&Aの交渉に入っても、話がまとまらずに破談になることも少なくありません。多いのは、経営者が自社の事業を過大に評価して、譲渡価格を妥協しなかったり、ブランドや従業員の取り扱いに関して細かい条件を付けて譲らなかったりするケースです。
これらのハードルの多くはいったん銀行が受け皿になることで解消されると思います。

また、銀行が直接事業を行うことで、間違いなく、銀行の人材が育ちます。
『りそな銀はファンドを通じ、事業承継先が見つからない取引先に原則として100%出資する。一定以上の経験のある中堅層以上の行員も派遣する。』(日経記事より)とあります。

銀行員は過去の財務諸表などを分析して融資可否を審査しますが、実業の経験がないために特に新しいビジネスや技術の評価ができません。
業界の最新の動向にも疎いところがあります。
伸び盛りの中堅行員を取引先に1~2年間ほど業務出向させて、実業経験を積ませることで成長機会とすることはどこの銀行でも取り組んでいることです。
それが経営者ともなるとまったく違う意識レベルで臨むことになるでしょう。商品開発にもマーケティングにも、顧客管理にも人事・労務にも関わることになります。そういった事業家としての経験を積んだ行員は将来必ず銀行を支える「人財」となることでしょう。

 

■黒字廃業の意思決定を促すことも大事な仕事

しかしながら、そうはいってもおそらく、実際に銀行が事業を買い取る会社は年数社に留まるでしょう。
ほとんどの企業は銀行に出資を求めても、審査の結果、投資見送りになることの方が多いと思います。
これはある意味、経営者に廃業の意思決定の背中を押すことになりかねません。しかし、それも銀行にとっては決して悪いことではないかもしれません。少なくとも、再生の見込みがないままズルズルと赤字になっても経営を続けて、最後に過剰な債務を抱えて法的整理になるよりもいいと思います。

「赤字企業が廃業するのはわかるが、黒字企業が廃業するのはもったいない」という声もあります。
しかし、本当に将来にわたって有望な事業なら、後継者は現れていたでしょうし、M&Aやこの銀行の投資も裁可されたでしょう。それらが叶わなかったということは、残念ですが将来性がない事業と見られていると判断した方がいいのかもしれません。

会社が黒字で自己資本も十分に残っているうちに廃業すれば、仕入先への支払いや、社員への退職金、そして銀行への借入金の返済もできます。
現有の資産できれいに債務を清算して誰にも迷惑をかけずに会社を畳むのは経営者としての最後の責務とも言えます。

黒字のうちに廃業するのは経営者として極めて賢明なことですが、その意思決定は決して簡単なことではありません。その決断を促すのも銀行の大事な務めです。

次代に残すべき企業の経営を立て直す、もしくは拡大・成長させ、企業価値を定めて、承継者に譲渡する。これは地域の雇用と付加価値を守る非常に社会的意義が高い仕事だと思います。
経営とファイナンスのプロでないと出来ない仕事です。
やりがいがありますね。
多くの銀行員にチャレンジしてほしいと思います。

今回は以上です。
一日も早く平穏な日々が戻りますように。

2020年7月21日 火曜日 18:38 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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