マクロ経済スライド、4年ぶり2度目の発動 これで年金制度は大丈夫?

今回は「年金」についてです。自分の老後は自分で備える時代になりましたね。

 

■マクロ経済スライド、4年ぶり2度目の発動

年金ほど高齢世代と若年世代で関心度が異なるものはないでしょう。
高齢世代にとって年金は生活の糧です。当然その動向にはとても関心が高いのですが、一方で若年世代の多くは日本の年金制度をあまり信頼していません。

さて、そんな年金に関して、高齢世代にとっても若年世代にとっても影響のある興味深い記事がありました。
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<年金抑制、4年ぶり実施 19年度0.1%増に、将来不安なお>
(2019年1月19日付 朝日新聞)
『厚生労働省は18日、2019年度の公的年金の支給額を0.1%引き上げると発表した。年金額を抑える「マクロ経済スライド」が4年ぶりに実施されるため、支給額の伸びは物価や賃金の伸びより低く抑えられる。実施は2004年に制度を導入してから2回目になる。少子高齢化の中で将来の年金水準を維持するというスライドの機能は十分働いていない。』

マクロ経済スライドが2015年以来、4年ぶりに発動されることになりました。
マクロ経済スライドとは、少子高齢化の下でも年金制度を維持するために、経済動向に合わせて実質的に年金水準を下げていく仕組みですね。
具体的には、年金支給額の上昇を物価や賃金の上昇率以下に抑えていきます。今回で言うと、平均賃金上昇率は0.6%だったのですが、年金支給額の伸びは0.1%に留めるということで、実質的に水準を下げた、ということになります。

ただ、こんなレベルの見直しで本当に年金制度が維持できるのでしょうか?

 

■高齢者への配慮で拡大する世代間格差

2004年に年金制度を維持するために「年金制度改革」が決まりました。
柱は2つ。
ひとつはこの「マクロ経済スライド」。支給水準の引き下げですね。
もうひとつは、「厚生年金保険料の引き上げ」。2004年に13.934%だった保険料率が毎年0.354%ずつ2017年までじわじわと上がっていきました。今は18.3%になっています。

現役世代が負担する厚生年金保険料の引き上げは計画通り毎年実施されてきました(あまりにも「じわじわ」なので気づいていなかった人もいたかもしれません)。
しかし、一方のマクロ経済スライドは、導入されてから15年間で発動されたのは2015年の1回だけ。今回が2回目です。

なぜかというとマクロ経済スライドには「名目下限措置」というルールがあるからです。これは、年金の名目支給額は前年度を下回らないようにするというものです。言葉通り、「マクロ経済の動向に応じてスライド」するのなら、物価や賃金が下がってしまった「デフレ」の時には支給額は減額されるべきなのですがそれはなされないのです。今回のように物価や賃金が上がった時にだけ上昇幅を抑制しているからです。
この15年間、日本はほぼデフレでしたからね。2回しか「マクロ経済スライド」しなかったわけです。
物価がずっと下がっていたのに年金額は下がらなかったわけです。つまり、「この15年間、年金受給者は年金を貰いすぎていた」と言われてもおかしくない状態だったわけです。

背景には年金受給者への配慮があるのでしょう。
この「マクロ経済スライド」は、導入当時には野党から「年金改悪法案」と言われ、「弱者切り捨て」「格差助長」「高齢者から年金を奪うひどい制度」と猛烈に批判されました。マスコミも「自動年金カット装置」などと呼んでいました。実際に年金額が減額でもされようものなら高齢世代が猛反発するだろうことは想像に難くないですね。

しかし、この配慮が結果的に年金制度の調整期間を後ろ倒しにしています。
報道によると、『2004年当時の計画ではマクロスライドによる抑制は23年で終わるはずだった。だが2014年時点では終了予定は2043年まで延びている。現役世代の負担が増えていることを意味する。』としています。

現役世代の負担だけが増しているわけなので、「世代間格差」が広がっているともいえる状態です。

 

■先細りする将来世代に財源を求める構図

「世代間格差」を縮めて年金制度を持続可能なものにするためにも、名目下限措置はやめるべきだと個人的には思いますが、今の政治体制では難しいでしょうね。消費税ですらあれだけ高齢世代に配慮するわけですから。

この「現役世代~将来世代に負担をツケ回す」のは財政と同じ構図ですね。
経済対策だ、社会保険対策だと財政を拡大し、毎年、税収をはるかに上回る歳出をしていますが、その穴を埋めているのは国債です。つまり将来世代への借金ですね。
国債を出して経済規模を拡大したり、社会基盤を整備したりするのは昔からの手法ですが、昔はよかったわけです。この先に人口が増えて、経済成長が見込まれていましたからね。
しかし、この先は違います。将来的にずっと人口が減っていくのは明らかで、経済は成熟し成長しにくくなっています。基本は先細りする社会なわけで、先細りする将来世代から財源を借りてくるというのは・・・、どうなんでしょうね。

年金も同じ文脈で語られます。年金が制度設計された頃は、高齢者1人を10人以上の現役が支えていたのが、今は高齢者1人を2人の現役が支えています。これで制度が持つわけはありません。
だから、年金制度を維持しようと思ったら、「支給額を減らす」+「受給年齢を遅くする」+「保険料を上げる」をすべてやる必要があるわけです。だから「支給額を減らす→マクロ経済スライド」なのですが、これが全然進んでいないという話なのです。

 

■年金は賦課方式。積み立て方式は自分でやるしかない

当然、私たち50代は今の受給世代がもらっている額はもらえません。そして、今の20~30代の世代は私たち50代よりも受給額はもっと少なくなるでしょう。20代以下では払った額の半分くらいしか年金はもらえないという試算もあります。

であれば、不足分は自分たちで備えるしかありません。
今の年金制度は、自分が払った年金保険料を積み立てて自分がもらう「積み立て方式」ではありません。現役世代が支払った保険料をその時の高齢世代の年金に充てる「賦課方式」です。
この賦課方式では、少子高齢化で保険料を払う現役世代が減って、年金をもらう高齢者が増え続ければ年金財政は厳しくなるのは当たり前です。
だから、個人個人が「積み立て方式」で備えるべきなのです。

積立預金や個人年金保険などもありますが、一番良いと思うのは「確定拠出年金」です。
毎月一定額を積み立てして、投資信託などで運用し、60歳以降にその運用積立金を受け取る「積立型の年金制度」です。
税制上の大きなメリットがあります。
積立拠出金は所得から控除されますし、運用益も非課税です。受け取る時にも税制優遇が受けられます。
かつては企業年金制度でしたが、今は個人でもできます。これが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」ですね。
詳しくはこちら→「厚生労働省iDeCoの概要」

デメリットは60歳まで使えないということですが、老後の備えなのだから使えないくらいの方がいいでしょう。また運用を自分で指図するのは失敗したら怖いという人もいますが、公的年金は半分くらいしかもらえないのです。どんな失敗をしても積立運用で半分になることはまずないでしょう。

税制を優遇しているということは、国としても推奨しているということです。
国も公的年金制度で国民の老後の生活を保証できなくなっている以上、国民が自分たちで老後の準備をしてもらうことを勧めているわけです。

老後の備えは老後になってからではどうしようもありません。「自分たちの生活は自分たちで何とかする」という気持ちでいた方がいいでしょうね。

今回は以上です。

2019年1月22日 火曜日 16:58 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

2019年税制改正大綱のメインは「消費増税対策」

あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い申し上げます。
今日は2019年の税制改正大綱についてです。

 

■2019年税制改正大綱は「増税対策」

昨年暮れに2019年の税制の方針を示した「2019年税制改正大綱」が発表されました。
本来、税制改正は社会経済の変化を踏まえた上で中長期的な税体系のあり方を示し、その上で「具体的に今年はこうする」という方針を出すものですが、今年は極めて短期的な視点で組み上げられた印象ですね。
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<税制大綱、10月消費増税へ対策厚く 車・住宅など減税>
(2018年12月15日付 日本経済新聞)
『自民、公明両党は14日、2019年度与党税制改正大綱を決めた。19年10月の消費税の税率10%引き上げに伴う反動減対策を重視し、車と住宅の減税措置を拡充した。消費税増税後の単年度ベースで車と住宅あわせて1670億円の減税となる。社会、経済の変化に対応した税制の抜本改革は先送りした。』

2019年の税制改正はずばり「消費増税対策」です。
前回の2014年に消費税を5%→8%に増税した際に起きた駆け込み需要とその後の反動減をかなり警戒しています。特に、景気に大きな影響を与える車と住宅に向けて手厚い対策を講じるようです。

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2019年1月8日 火曜日 13:49 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

住宅の省エネ義務化方針は撤回されたのか?

今回は、住宅性能についてです。
日本は住宅性能の基準を上げるチャンスを自ら棒に振ってしまったようです・・・。

 

■省エネ義務化、住宅への適用見送りという残念な決定

みなさんは日本の住宅の断熱性能や省エネルギー性能が先進国でも最低に近いレベルにあるということをご存じですか?

クルマや家電製品などに代表されるように、「日本製」は性能の高さの代名詞です。しかし住宅だけは例外なのです。中でも特に断熱性能が低いために、夏の暑さや冬の寒さなど、外気温の変化の影響をとても受けやすい。だから、冷暖房器具をフルに使って生活することが当たり前になっています。その冷暖房エネルギーもだだ漏れ状態なのに・・・。

そんな日本の住宅の現状を改善しようという動きがここ数年にわたって住宅業界で起きていたのですが、そんなムードに冷や水を浴びせるような残念なニュースが年末に入ってきました。
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<省エネ基準 中規模建物も 国交省、20年以降に適合義務付け>
(2018年12月24日付 日本経済新聞)
『国土交通省はオフィスビルやホテル、商業施設など住宅を除く新築の中規模建物(延べ床面積300平方メートル以上2千平方メートル未満)について、省エネ基準への適合を義務付ける方針だ。実際に義務付けるのは2020年以降となる見通しだ。住宅や小規模建物(同300平方メートル未満)は現状の基準への適合率が低いことに加え、業界の反対が根強いことから見送る。』

この記事のタイトルと「2020年以降、新築建物に省エネルギー基準の適合を義務付ける方針」という部分だけを業界動向をあまりご存じない方が見ると、「建物の省エネが義務化されるのか。徐々に省エネ化に向かって進んでいくのだから良いニュースだな。」という印象を持たれるかもしれません。しかし、そうではありません。このニュースの本質は記事引用部分の最後の『住宅は現状の基準への適合率が低いことに加え、業界の反対が根強いことから見送る。』というところです。

これが残念極まりないのです。

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2018年12月25日 火曜日 14:55 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

公共事業予算拡大、建設業が復活するための課題とは?

今回は、建設業についてです。地方にとっては基幹産業である建設業。今後はどうなるのでしょう。

 

■建設予算が拡充、公共事業増加へ

「構造不況業種」と言われ、この数十年間で最も事業構造の転換を迫られた業種のひとつが建設業でしょう。

1950年代中盤以降の高度経済成長を支え、またその主役の一角を担ったのは全国の「ゼネコン」でした。莫大な公的資金が建設業界に投入され、日本中に道路やダムが作られました。

国の公共建設事業予算は、地方への予算の分配でもありました。どこの地方でも地元の名士といえば、議員さん、役人さんの他は銀行支店長と建設業の社長でした。

しかし、それも1990年代までのこと。2000年代に入った頃から「もう道路もダムも要らないのではないか」という風潮になり始めます。国の財政が悪化したこともあって、公共事業費も削減され、全国の建設投資は減っていきました。

「脱ダム宣言」とか「コンクリートから人へ」と言ったフレーズが人口に膾炙するたびに、ゼネコンは減っていきました。

「脱公共」が地方ゼネコンの合言葉となり、公共事業頼みだった事業構造を転換させて民間工事を受注できるようになろうと全国のゼネコン経営者は躍起になりました。

しかし、建設業界で数十年続いたこのトレンドは、この先また変わっていくのかもしれません。
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<公共事業最大2割増 来年度一般会計、初の100兆円超>
(2018年12月5日付 日本経済新聞)
『政府は老朽化した重要インフラを補修するため、2018年度から20年度までの3年間で3兆円超を投じる方針を固めた。年末に決める19年度予算案では1兆円程度を計上する。当初予算ベースの公共事業関係費は前年度より最大で2割増の7兆円規模と、10年ぶりの高水準になる。縮小してきた公共事業が増加に転じ、歳出の選別が急務になる。』

公共事業の予算は1997年の9.8兆円をピークに年々下がり続け、最近では大体6兆円前後で推移してきました。しかし、2019年予算では公共事業費が大きく増加して、7兆円を超える規模になるということです。さて、建設業界は今後どのようになっていくのでしょうか。

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2018年12月11日 火曜日 16:20 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志

銀行審査はAIとって代わられる業務なのか?

今回は、銀行の取引先企業への姿勢の変化についてです。
銀行のあり方も時代とともに変わっていきますね。

 

■りそな銀行、業績改善で金利引き下げ

企業経営者にとって、経営に必要な運転資金や設備資金を機動的かつ適切な金利水準で用立ててくれる銀行の存在はとても重要です。ただ、経営者と同じ目線で事業を考えてくれる銀行はなかなかいないのが現実。銀行との付き合いを「難しい」と感じている経営者は少なくないと思います。

そういう意味では、銀行が、どこの何を、どう見て、どう判断しているのかということがはっきりしているのは経営者側にとっては安心できることです。

下記記事にある「りそな銀行」の取り組みは銀行の取引先への姿勢を明らかにするという意味で好ましいと思います。
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<りそな、業績改善なら金利下げ 中小向けローンで>
(2018年11月21日付日本経済新聞)
『りそな銀行は中小企業の業績が上向けば、契約中の貸出金利を自動的に引き下げるローン商品の取り扱いを始めた。改善する見込みのある企業にコンサルティングを実施し、解決すべき課題などを企業と共有する。一時的に業績が落ち込んだ企業はこれまで貸し付けが難しかったが、再成長を促すきっかけをつくり融資機会を広げる。』

通常、貸出金利はその企業の信用状態に応じて決まります。
決算書をもとに取引先企業の信用状態の「格付け」を行い、信用度が高い企業には優遇金利を適用します。逆に信用度が低い企業には相応に適用金利を上げていきます。

リスクに応じて適用金利を変えるのは当然だと思われますよね。
では、この取り組みの何か面白いのでしょう?

(さらに…)

2018年11月27日 火曜日 13:07 投稿者:HyAS&Co.川瀬太志
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