着工戸数減少による構造的な市場規模縮小が続く住宅業界において、今後ますます淘汰の波が激しくなることが予想されます。
重要なのは、この市場の縮小幅です。
この予測通り縮小すると、「本当に力のある会社しか存続できない」という状態になります。
今後の市場環境で存続していく工務店には、より高い営業力と商品力が必須となります。
根本的な問題として、住宅の基本性能をある程度維持しているかどうかは、顧客の満足度や将来の自社への市場評価を考慮すると、非常に重要です。
特に今後のエネルギーコストの上昇を考えると、省エネ性能の低い家は将来の家計を圧迫する恐れがあります。国が現在の最低限の基準として示しているのは「長期優良住宅」の基準ですが、2020年にはさらに二段階高い基準が義務付けられます。この基準を満たせない工務店は、新築事業から撤退せざるをえない状況となります。
「手間がかかる」「ユーザーが求めていない」等の理由で先延ばしすることなく、プロフェッショナルとして高い技術水準の仕事が既に求められています。
「うちは何でもできますよ」という従来見受けられた工務店モデルは、今後は通用しません。エンドユーザーにとっては「何でもできる工務店」=「何の特徴もない工務店」になるのです。
エンドユーザーを引き寄せる強い商品を持ち、地域で自社の特徴を打ち出していかなければ、新たな集客は見込めない環境になってきております。
特に、今後の住宅購入の主力となる若年層向けの商品は、経営改善には不可欠です。
例えば、[年収を聞き、そこから試算される最大借入総額が、あたかも住宅の総予算であるかのように伝える]というような営業スタイルが、未だに横行しています。年収が同額でも、子どもの教育費や生活水準は各家庭様々であるにも関わらず、です。
場合によっては、資金計画を立てず・あるいはいい加減なまま、建物や土地の話を進めているケースもあります。
また、地盤改良が発生した場合に、発ガン性物質のリスクをチェックすることもなく、慣習でセメント系地盤改良を選択している工務店も見受けられます。
メンテナンスのための図面管理も不十分な会社が多くあります。
正しい情報をエンドユーザーに伝え、その利益を守ることが、工務店の長期的な存続につながるのではないでしょうか。
例えば、住宅業界では建材の仕入れに数多くの中間業者を経由することが未だに一般的です。しかし、中間業者による付帯サービスを自社でカバーすることが出来れば、他業界と同じようにITを活用したメーカー直取引の流通システムの導入によるコスト削減を進められます。
このように、工務店が自社の努力で経営改善・経営革新をしていくことが、最終的にエンドユーザーの利益につながり、それが工務店の存続につながるのではないでしょうか。